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経理部門からCFO組織へ:DNPが挑む三位一体の変革戦略と30%業務効率化

BlackLine主催「BeyondTheBlack TOKYO 2025」講演レポート

多様な人材が活躍する新たな組織文化

 BlackLine導入プロジェクトを通じて、DNPは従来の経理人材評価に対する重要な気づきを得た。従来は「会計基準、税務、社内規定に詳しく、これに沿って、ルーチン業務を正確に、早く行える人材」が高く評価されていた。専門性の高い知識を持つ人やルーチン業務を素早く対応できる人が重宝されてきた。

 しかし、従来型の経理で重視されていたスキルだけでは、なかなか対応が難しいことが判明した。今回のシステム改革プロジェクトに多くの若手を登用した結果、多様な人材が大きな力を発揮したのである。

 プロジェクトを通じて明らかになった人材に求められるスキルは5つに整理される。第一に企画力と課題発見・解決力、第二に従来の発想を超える新たな発想力、第三に多くのメンバーが参加するプロジェクトでのコミュニケーション能力・コーディネーター能力、第四にチームをまとめる力、そして第五に「パッション(情熱)」である。

 特に黒柳氏が強調したのが5つ目の要素、「パッション(情熱)」だ。プロジェクトを実現に結びつける力が非常に高く、黒柳氏にとって「一番嬉しかった」要素だという。従来、経理部門は「クールで、感情を表に出さずに黙々と業務をこなす」イメージが強かったが、今回のプロジェクトではパッションを持って取り組む姿勢が大きな成果をもたらした。

 年齢を超えた協働も特筆すべき点である。「若い方から60歳ぐらいまでの経理人材がいたが、年齢関係なく、みんなが理解し合えて、知恵を出し合って、対応できた」ことが成功の要因となった。これを支えたのが「何でも言いあえる信頼性(心理的安全性)」である。多様な人材を認め、活躍をフォローする環境づくりが、戦略的経理人材の育成には欠かせない要素となっている。

 こうした人材面での気づきを踏まえ、黒柳氏は変革の推進力として2つのキーワードを重視している。一つは「非連続性」である。単なる改善ではなく、改革・変革というのは非常に大きな変化を求めるため、「従来の過去に捉われたような思考では、なかなか先に進まないからだ」と言う。これは単なる段階的な改善ではなく、ゼロベースで物事を見直し、抜本的な変革を目指す姿勢を表している。

 もう一つのキーワードが「本気力」である。「本当に大きなプロジェクトを成功させるためには、本気力が大事」であり、そうした力を発揮できる人は「今対応していることを本当に自分事として捉えて、決して受け身ではなく対応している」と黒柳氏は分析する。この本気力は、先述した人材スキルの5つ目の要素「パッション(情熱)」とも深く結びついている。自分事として取り組む姿勢こそが、単なる業務改善を超えた組織変革を実現する原動力となっている。

CFO組織として経営の成長をリードする未来

 DNPの取り組みは、単なるシステム導入にとどまらず、経理組織全体の在り方を根本から見直すものである。BlackLineによる業務効率化で創出された時間を、より付加価値の高い業務に振り向けることで、戦略的経理人材の創出を実現している。従来の専門性に多様性を掛け合わせることで、会計の専門知識を持ちながらも、企画力や発想力、コミュニケーション能力を備えた人材が、これからの経理組織には不可欠となっている。

 最終的に目指すのは、経理部門のCFO組織への進化である。単なる会計処理や数値の集計を行う部門から、経営戦略の策定・実行に深く関与し、資本市場との対話においても中心的な役割を果たす組織への転換である。この変革は、資本市場からの要請に応えるだけでなく、企業の競争力向上と持続的成長を支える戦略的基盤としての意義を持つ。

 黒柳氏は講演の最後に「我々、経理部門が、CFO組織へ進化し、会社の成長をリードするという気概を持ち、日々、活動していきましょう」と、経理部門従事者全体への力強いメッセージで締めくくった。DNPの先進的な取り組みは、多くの企業の経理部門にとって、CFO組織への進化を考える上での重要な示唆を提供している。

 三位一体の変革アプローチ、多様な人材が活躍する組織づくり、そして非連続性とパッションをキーワードとした抜本的な変革への取り組み、これらの要素が組み合わさることで、経理のDXは単なる効率化を超えた戦略的価値を生み出していく。資本市場の要請が高まる中、経理部門の役割は確実に拡大しており、DNPの事例は経理のDXが企業変革の起点となりうることを示している。

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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

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