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タニウム、米年次カンファレンスで「自律型IT」と「止めないビジネス」を掲げる新戦略を発表

 フロリダ州オーランドで2025年11月18日に開幕したTaniumの年次カンファレンス「Converge」は、第10回の節目を迎えた。今回のテーマは「Autonomous IT(自律型IT)」と「Unstoppable Business(止めないビジネス)」。AIが企業活動の細部に浸透する中、IT運用とセキュリティを同じスピードで維持する仕組みをどう構築するか──同社はこの課題に対する独自の解を示した。

米フロリダ州 オーランドで開催された「Converge」

「止めない」運用を支える考え方

 基調講演のステージに立ったグローバル代表CEO、ダン・ストリートマン氏は、は、現代のセキュリティチームが置かれる過酷な現実から話を切り出した。病院のシステム、物流を支えるサプライチェーン。これらは一瞬たりとも停止することが許されず、一つのミスが致命的な結果を招く。「私たちの顧客の信頼は、止まらないことに成り立っている」と同氏は語る。

 ストリートマン氏が提示したビジョンは「誰も止めることができない組織」の実現である。同氏はその鍵となる「Autonomous IT(自律型IT)」を、自身も参加する「アイアンマンレース」での視覚障がい者を支える「ガイド(伴走者)」になぞらえた。ガイドがパートナーの「目」となりゴールへ導くように、自律型ITは組織の「目」として機能し、ビジネスを「止めない」存在にするというわけだ。

 無差別かつテロのようなサイバー攻撃が日常化する中、人間だけの力で対抗することはもはや不可能に近い。だからこそ、光のスピードで問題を解決し、数秒で修復を完了させるリアルタイムのインテリジェンスが必要不可欠なのだと説いた。

 その具体例として紹介されたのが、全米で急成長を遂げているアリゾナ州フェニックス市の事例だ。彼らはTaniumのレジリエントなシステムを活用し、人命救助サービスという究極のミッションを、サイバーリスクの脅威から守り抜いている。自律型ITは単なる効率化ツールではなく、文字通り人命と社会インフラを守る盾となっているのである。

ダン・ストリートマン氏(Dan Streetman),Tanium inc.CEO

 ストリートマン氏が掲げたビジョンを技術的な側面から掘り下げたのは、プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのアンディ・レオン氏である。同氏は、自律型ITを実現するための不可欠な要素として「規模」「速さ」、そして「データの複雑性と多様性」への対応を挙げた。

 レオン氏が強調したのは、Tanium独自の「リニアチェーンアーキテクチャ」が生み出すリアルタイムインテリジェンスの独自性だ。数百万ものエンドポイントから吸い上げられたデータは、単に収集されるだけではない。それらは執行状況、コンプライアンス、脆弱性データと瞬時に結合され、詳細な分析にかけられる。そこから導き出される「コンフィデンス(自信)スコア」とリスクスコアこそが、変更を加えた際の影響範囲を正確に予測し、迷いのない自動化を可能にする根拠となる。この高度な演算がリアルタイムで行われる点に、Taniumのプラットフォームとしての真価があるのだ。

AIは「会話」から「実行」へ

ハーマン・カウア氏(Harman Kaur) Tanium inc. Senior Vice President, Strategy, & AI/ザック・キャス氏(Zack Kass)元Open AI Global AI Advisor & the former Head of Go-to-Market

 続いて登壇した戦略・AI担当シニアバイスプレジデントのハーマン・カウア氏は、このリアルタイムインテリジェンスがAIによってどのようにユーザー体験を変えるのかを披露した。彼女が紹介したのは、Tanium初の会話型AI体験「Tanium Ask」である。これは従来の検索窓とは一線を画す。自然言語で問いかけるだけで、AIがエンドポイントの状態をリアルタイムで検知し、調査からトラブルシューティング、そして解決までをシームレスに実行する。管理者は複雑なコンソール操作から解放され、直感的な対話を通じて高度なセキュリティ運用が可能になる。

 さらにカウア氏は、ServiceNowとの統合についても触れた。インシデントが発生すると、TaniumのAIエージェントがユーザーのアクティビティやデバイスの状態といった極めて重要なコンテキストを自動的にワークフローに取り込む。管理者はチャットインターフェースから推奨されるアクション──例えば再起動やソフトウェアのアンインストール──を即座に実行できる。これは、調査に費やされていた膨大な時間を「ゼロ」に近づける試みと言える。

 このAIの進化について、元OpenAIのグローバルAIアドバイザー、ザック・キャス氏は哲学的な視点から示唆に富む対話を行った。彼はChatGPTの成功を振り返り、「世界を変えるにはサイエンスだけでは不十分だ」と語った。技術がいかに高度でも、使い方がシンプルでなければ普及しない。そして、これからのAIエージェントに求められるのは「Specificity(個別性)」であると指摘する。

 キャス氏は身近な例として、フードデリバリーや休暇の計画を挙げた。「人々には自動化してほしいことと、自分で選びたいことの好みがある」。すべての決定をAI任せにするのではなく、個人の「こだわり」や「文脈」を理解し、適切な距離感でサポートするAIこそが、真のパートナーになり得るというわけだ。Taniumのアプローチは、まさにこの「必要な時に、必要な分だけ」という人間の意思決定を尊重しつつ、煩雑な作業を自律化する点において、キャスの予見する未来と合致している。

テクノロジー戦略の核心:「後手」から「自律」への完全移行

マット・クイン氏(Matt Quinn) Tanium inc. Chief Technology Officer

 カンファレンスのハイライトとも言えるテクノロジー戦略の発表において、最高技術責任者(CTO)のマット・クイン氏は、Taniumが目指す技術的到達点を力強く宣言した。「私たちは、問題が起きてから対応する後手な対応から、自律的な運用へと組織が進化できるよう、可能性の限界に挑み続けている」。同氏の言葉は、これまでのIT運用の常識を覆す決意表明であった。

 クイン氏は、この変革を支える基盤として、アンディ・レオン氏も触れたTanium独自の「リニアチェーンアーキテクチャ」の重要性を改めて強調した。このアーキテクチャがあるからこそ、単一のプラットフォーム上で、スピードとスケールを損なうことなくエンドツーエンドの成果を提供できる。これが他社には真似できないTaniumのコアコンピタンスである。

 そしてクイン氏は、この強固な基盤の上に築かれた、プラットフォームの拡張計画を明らかにした。

 一つ目は、管理対象の物理的な拡大だ。これまでのIT資産に加え、OT(Operational Technology)環境とモバイルデバイスがTaniumの管理下に統合される。工場やプラントで稼働するHMI(ヒューマンマシンインターフェース)やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)、そしてiPhoneやiPadといったモバイル端末。これらがITデバイスと同じプラットフォームで可視化されることで、従来サイロ化していた産業領域とIT領域の壁が取り払われる。クインは「この統合的な可視性こそが、運用上のレジリエンスとセキュリティのギャップを解消する唯一の方法だ」と断言した。

 二つ目は、セキュリティ運用の深化である。ここで発表された新機能「Tanium Jump Gate」は、ゼロトラストの原則を極限まで徹底させるものだ。恒常的なアクセス権限を排除し、必要な時に必要な分だけアクセスを提供するこの機能は、リアルタイム監視と相まってセキュリティレベルを飛躍的に高める。さらに、Taniumのエキスパートが顧客環境に入り込んで脅威ハンティングを行う「Tanium HuntIQ」サービスの提供も開始される。ツールだけでなく人的な専門性も融合させることで、ステルス性の高い脅威さえも逃さない体制を構築する。

 「IT、OT、モバイルを横断して管理とセキュリティを統合し、インテリジェントな自動化を提供することで、可視性の死角はなくなり、意思決定は加速する」。クイン氏はそう締め括った。

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