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現代のシステム開発では、プロダクトの「アクセシビリティ」確保が“法的義務”になるかもしれない?

聴覚障害を持つ児童の「逸失利益」が問われた事件

大阪高等裁判所 令和7年1月20日判決

 令和元年、被告会社の従業員が業務中に運転していた小型特殊自動車が、歩行中の小学5年生の児童Aに衝突し、Aは死亡した。Aは先天性の両側感音難聴(身体障害者等級3級)を有していたが、補聴器の装用と手話・文字等の補助手段を組み合わせることで年齢相応の学力とコミュニケーション能力を身につけており、学習意欲も高く、学校や地域で他者と積極的に関わっていた。

 遺族(両親)は、被告会社とその従業員に対して損害賠償を求めた。争点のひとつが、Aが将来得たであろう収入(逸失利益)の算定基準であった。原審(一審)は、聴覚障害者の平均収入が全労働者平均賃金の約7割であることなどを根拠に、全労働者平均賃金の85%を基礎収入とした。これに対し、控訴人(遺族側)は100%とすべきと主張して控訴した。

事件番号 令和5年(ネ)第619号

 この裁判では、損害賠償額を決めるにあたり被害者が健聴者と同じだけの仕事量が可能だったかが争点となり、そこから発展して「雇用側には、障害者が健聴者と同じだけの仕事ができるよう配慮すべき義務があったのか」が問題となりました。

 実際、裁判ではUDトーク(音声認識アプリ)、Microsoft TeamsのAI字幕機能、チャット・メールなどといったデジタルツールの活用実態が問われました。しかし、もしこうした配慮が雇用者側の法的義務であるとしたら、すべての社内システムに障害者や高齢者などのアクセシビリティを具備することが義務になる可能性が出てきます。また、モノによっては社外向けシステムについても同様の配慮が求められるかもしれません。そうした意味で、この裁判における判断はシステム開発の要件定義に影響を与え得ると考えられるわけです。

 アクセシビリティ要件を定義し、それを満たすシステムを作ることが法的義務とまで言えるかどうか、当然ながら判決はシステム開発には触れていませんが、関係ある部分を抜粋して記します。

次のページ
「合理的配慮」は法的義務なのか?

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...

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