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「心電図波形解析による不整脈検出」の事例

 最後3つ目の事例は、「心電図波形解析による不整脈検出」である。データサイエンス部へのユーザーからの依頼は、モルモットのRRI(R-R Interval)の変化から、不整脈を自動的に検出したいというものだった。RRIとは心電図に繰り返し現れる波形の特徴の一つであるR波とR波の間隔のことであるこの依頼へのアプローチは、モルモットの心電図波形データとはどのようなものか、心電図波形の特徴であるPQRSTとはそれぞれ何か、(波形の1つR波を扱う)RRIとは何か、どのように検出するのかを理解するところから始めた。

 新薬候補物質の安全性薬理試験では、想定量を投与した時の重要な臓器機能への副作用を評価しなければならない。この場合は、心血管への影響を評価するもので、候補物質を投与されたモルモットが不整脈を起こすかどうか、どのぐらいの量を投与したときに不整脈に達するのかなどの情報を得る。この心電図解析も、サポート提供前の解析は負担の大きい目視に依存しており、一部の人にしかできない属人化の問題を抱えていた。

 不整脈解析アルゴリズムの開発にあたり、データサイエンス部が設定した目標は大きく2つある。1つが不整脈判定の感度を100%にすることだ。それには心電図データ内の全不整脈候補を見逃さないことが求められた。そして、もう1つが不整脈判定範囲の最適化を行うことだ。どの程度の用量を投与すると不整脈が起きるのか、判定範囲を限定し、必要なデータポイントのみ評価することで、解析の効率を高めることを試みた。

図3:波形解析による不整脈検出の仕組み 出典:塩野義製薬 [画像クリックで拡大]

 また、データサイエンス部は、アルゴリズムやユーザーに提供するツールの開発、研究の効率的な進行につながる作業フローの変更を提案した。これまでは波形全体を見て不整脈を確認していたが、これをリアルタイムで波形をエクスポートした上で、随時解析アプリケーションを実行するやり方に改めた。この時、見るべき波形を抽出する。一部の波形を確認する形になるが、最終的にアルゴリズムが判定した波形の一部分のコメントを付与した箇所をリアルタイムで確認しながら、不整脈か否かの判定を行う。結果の確認と評価のみで済ませられるフローに変更した。

 開発したアルゴリズムは、RRIを計測し、10%以上の変動が検出された場合に不整脈であると判定するものになる。森本氏は、「感度100%を目的としたため、データによっては非常に多くの箇所を不整脈と判定するリスクがあり、単純な作業時間の計測は難しいものの、ユーザーの利便性向上にはつながっているのではないかと考えている」と総括した。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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