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アトラシアン、「Teamwork Graph」中心にAIと人の協働を拡張──年次カンファレンス「Team '26」で発表

Atlassian「Team '26」レポート

Atlassian Team '26会場

 アトラシアンは2026年5月5日から7日にかけて、米カリフォルニア州アナハイムのアナハイム・コンベンションセンターおよびオンラインにて、年次グローバルカンファレンス「Atlassian Team '26」を開催している。テーマは「Unlock human-AI collaboration at scale(人間とAIの協働を、組織規模で解き放つ)」。2日目のキーノートでは「AIネイティブ組織(AI-Native Organization)」の実現に向けた複数の新機能と製品戦略が発表された。

Atlassian 共同CEO マイク・キャノン・ブルックス(Mike Cannon-Brooks)氏

 同社の共同CEOであるマイク・キャノン・ブルックス氏は冒頭、「今日は単なるソフトウェアの話ではない。新しい種——AIネイティブ組織の誕生についての話だ」と述べ、AIが補助ツールから自律型エージェントへと進化する局面に組織が直面していると語った。エージェントが大規模に実行を担う一方、人間は「意図の定義・トレードオフの調整・曖昧さの解消」というフロンティア領域に集中していくと説明した。「モデルの性能が指数関数的に向上している一方で、多くの企業は試験運用を続けるか様子を見ているだけだ。これは慎重さではなく、ゆっくりとした降伏だ」と強調した。

コンテキストの価値:差別化要因はモデルではない

 同社が今回の戦略の核に据えたのが「Teamwork Graph(チームワークグラフ)」だ。Jira、Confluence、Loomといった同社製品群に加え、Salesforce、Google Drive、Microsoft Teams、GitHub、Workdayなど外部SaaSのデータを横断的に統合し、組織のすべての仕事・人・コード・意思決定をグラフ構造で結びつける仕組みで、現在1,500億以上のオブジェクトとリレーションシップを保持しているという。

コンテキストをグラフで表示

 「差別化要因はモデルではなく、コンテキストだ。ビジネスの加速はコンテキストと知性の掛け算である」とキャノン・ブルックス氏は語る。すべてのプロジェクト・目標・ワークフローに関する組織の記憶であり、それを理解しているのは自社のチームだけだという主張だ。「汎用的なAIはチケットの文字列しか見ないが、アトラシアンのAIはそのチケットの背後にいる人物、関連するコード、過去の意思決定の経緯を理解する」と述べた。

 同社の内部テストでは、Teamwork Graphへの接続によってコードの回答品質が最大44%向上し、トークン消費量が最大48%削減されたという。タマー・イェホシュア氏は「より速く、よりコスト効率良く、より信頼できる回答が得られる。これが『推測するAI』と『理解しているAI』の違いだ」と説明した。

 Teamwork Graphは仕事・人・知識のつながりを構造化するだけでなく、組織の記憶として機能することが強調された。Jiraへの作業項目の登録から担当者の割り当て、Confluenceページへのリンク・コメント・編集、Loomの録画トランスクリプトに至るまで、日常的な作業のすべてがグラフ上のコンテキストとして蓄積されていく。「すべてのチケット、すべてのコードの行、すべての意思決定が積み重なり、翌日にはシステムをより賢くする。私たちは、あなたが目指す会社の記憶を構築している」とキャノン・ブルックス氏は述べた。

Teamwork Graphの拡張:コネクタ強化とコードの統合

 Teamwork Graphのコネクタは直近数ヵ月で50以上の機能強化が加えられた。Google Driveでは画像・スライド内テキストのインデックス化と検索に対応し、Microsoft Teamsでは会議トランスクリプトのインデックス化を追加した。Salesforceではキャンペーン・ケース・連絡先をフィールドレベルで制御しながら取り込む。グラフへの変更は10分以内に反映することを目標としており、現在は週あたり数十億以上のオブジェクトを取り込んでいるとした。

 さらに今回の発表でとくに注目されるのが、「コードインテリジェンス」機能の早期アクセス開始だ。GitHubなど複数のリポジトリを横断するセマンティック検索で、単純なパターンマッチングではなくコードの意図を理解する。キーノートのデモでは、バケットデータセンター・バケットクラウド・GitHubに分散する計1,100万以上のコードファイル・15億行のコードを25ミリ秒以内に処理し、デザインシステムの移行対象コンポーネントと担当チームを瞬時に一覧化してみせた。「シニアエンジニアが数日かけて行っていた調査が、ひとつのクエリで完結する」とマンスール氏は説明した。コードがTeamwork Graphに加わることで、ビジネス側の要件とエンジニアリング側の実装状況をAIが横断的に把握できるようになるとした。

 また、人材管理の面では「タレントアプリ(Talent App)」の機能拡張も発表された。コードのコミット・Confluenceへの貢献・Jiraの割り当てなど、実際の業務行動からスキルを自動的に推論し、組織図と組み合わせた360度のタレントプロフィールを生成する。イェホシュア氏は「誰がどのスキルを持っているかを申告ベースではなく、実際の仕事から導き出す。これはAtlassianプラットフォームならではの機能だ」と語った。プロジェクトが停滞した際には、Rovoを通じてTeamwork Graphから必要なスキルを持つ人材を特定し、すぐに声をかけられる状態にできるとした。

AIアシスタント「Rovo」:記憶と推論の強化

 同社のAIアシスタント「Rovo」はここ6ヵ月で大幅な機能強化が図られた。メモリ機能が2種類に整理され、Teamwork Graphを通じて日々の行動から継続的に学習する「暗黙のメモリ(Implicit Memory)」と、ユーザーが明示的に指示を登録できる「明示的なメモリ(Explicit Memory)」が利用できるようになった。

 キーノートのライブデモでは、「明日Service Rocketとの顧客ミーティングがある」という一文を入力するだけで、Jira・Confluence・Loom・Microsoft Teams・Salesforceなど61の情報源を横断し、20年以上にわたる顧客関係の全体像——取引履歴、最近のやり取り、ステークホルダーマップ、関連ユースケース——をリアルタイムのダッシュボード形式で約3分で提示してみせた。

 Rovoの推論精度の向上も強調された。AIがほぼ五分五分の判断に直面した際、間違った方向に進み続ける前に人間に確認を求める機能を新たに搭載した。Jiraのプロジェクトから自然言語の依頼を受けると、Teamwork Graphのコンテキストを参照しながら技術的なアーキテクチャ計画を生成し、必要に応じてConfluence上の既存アーキテクチャ図を検出・更新する。計画承認後は作業を小さなタスクに分解してバックログに追加し、Claude CodeなどのコーディングエージェントがMCP経由で自動的に処理を開始する流れをデモで示した。「エージェントと人間のワークフロー両方を統合するAIコントロールプレーン」としてのJiraの位置づけが示された形だ。

ビジネスチームのためのConfluence:営業・マーケティングへの展開

 今回のキーノートでは、技術チームにとどまらず、ビジネスチームに向けた活用事例も具体的に示された。営業支援チームの例として、オフサイトで作成した大量のドキュメントを「Q3計画オフサイトの内容をConfluenceのホワイトボードに2×2マトリックスでまとめてほしい」という一文で集約するデモが公開された。Rovoは資料の場所を指定しなくても自動的に特定し、戦略的優先事項のグルーピング、意思決定のサマリー、会議録音の埋め込みを数秒以内に出力した。

 Jiraとエージェントを組み合わせたワークフロー自動化の例も紹介された。営業・マーケティングチームが利用するCanvaエージェント(クリエイティブ資産管理)、Gammaエージェント(プレゼン作成)、独自のブランドガイドラインエージェントを組み合わせ、作業項目をワークフローのステップにドラッグ&ドロップするだけでエージェントが処理を開始するデモが示された。RKO(Revenue Kickoff)向けデッキ作成では、GammaエージェントがJiraの作業項目に添付されたデザインガイドラインと画像を参照し、ブランドに沿ったプレゼンテーションを自動生成した。エージェントのセッションはRovoのモバイルアプリからも継続でき、場所を選ばずに進捗確認と作業継続が可能だという。「技術チームだけでなく、マーケティング・人事・財務などあらゆるビジネスチームが同じプラットフォームで加速できる」とイェホシュア氏は述べた。

ITOpsとプロダクトチームへの展開

 IT運用・SREチーム向けには「インシデントコマンドセンター」を導入する。インシデント発生時にTeamwork Graphを参照してGitHubの最近の変更、DatadogやNew Relicのログ・メトリクス、サービス依存関係を自動的に収集し、根本原因の候補を信頼度スコアとともに提示する。確定後は既存のプレイブックから対応手順を自動生成し、Confluenceへの事後レビューとJiraバックログへのフォローアップタスクの登録まで一貫して処理する。Forrester Consultingの調査では、同機能の利用チームで1チームあたり平均55分以上の時間削減効果が確認されているという。

 プロダクトチーム向けには新アプリ「フィードバックアプリ(Feedback App)」も発表された。Salesforce・Zendesk・Microsoft Teamsなどから顧客フィードバックを自動収集し、RovoがJiraのプロダクトディスカバリーバックログへのアイデア生成と目標との紐付けを自動で行う。

Teamwork GraphをAtlassian外へ:CLIとブラウザ統合

Atlassian Head of AI and Product Craft シェリフ・マンスール(Sherif Mansour)氏

 コンテキストをAtlassian製品の外部にも広げる施策として、2つの発表があった。ひとつは「Teamwork Graph CLI」(オープンベータ)で、300以上のコマンドを備え、Claude CodeやCursorなどのコーディングエージェントがTeamwork Graphのコンテキストをターミナルから直接利用できる。マンスール氏は「任意のエージェントやAIツールに接続すると、即座により高品質なAI結果が得られる」と述べ、前出の44%精度向上・48%トークン削減という数値はこのCLI接続によっても実現できるとした。

 もうひとつは「Rovo in Browser」で、ブラウザ上でTeamwork Graphのコンテキストにアクセスできる機能だ。FigmaでのUIデザインにJiraの作業項目コンテキストを直接参照させるデモでは、Teamwork Graph CLIのMCPサーバー経由でRovoが関連するConfluence仕様書・Googleドキュメント・デザインシステムのトークンを自動収集し、プロトタイプの初期バージョンを生成してみせた。

Atlassian マイク・キャノン・ブルックス氏(左)/同 Chief Product & AI Officer タマー・イェホシュア(Tamar Yehoshua)氏(右)

 イェホシュア氏は「Teamwork Graphに蓄積されたコンテキストは、Atlassianプラットフォームの中だけに閉じ込められるべきではない。ブラウザ・ターミナル・モバイル——チームが使うすべての場所でコンテキストにアクセスできるようにする」と方針を示した。エージェント接続については、GitHub Copilotエージェントがすぐに利用可能で、Claude Code・Cursor・OpenAI Codexとの連携も今後数週間で順次対応するとした。

 Atlassian Team '26は5月7日まで開催中。各製品の詳細は今後のソリューションキーノートや分科会セッションで順次公開される。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...

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