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週刊DBオンライン 谷川耕一

あたりまえだけど、OracleとSalesforce.comではクラウドに対するアプローチがかなり違うなという話


秋は、IT業界はイベントがとても多い。なので取材する側は、忙しい毎日を送ることに。取材だけで済むならいいのだが、取材すれば記事にしなければならない。でもイベントが続くと、原稿を書く時間がない。なので、書くべき原稿が山積みに。今の自分は、まさにそんな状況だ。そんな中、なかなか書くタイミングがつかめなかった話題を1つ。10月の初頭に米国サンフランシスコで開催されたOracle OpenWorldに参加。このとき発表されたのが、クラウドのサービスラインナップにIaaSを追加するというもの。これでOracleは、SaaS、PaaS、IaaSというフルラインナップが揃うことに。これができるベンダーは、いまのところOracleくらいか。

PaaSならSI企業も活躍する場ができるはず

遠藤社長に率直なところをきいてみた

 イベント期間中に、日本オラクルの遠藤社長に話を聞く機会があった。この3つのラインナップのどれに期待しているかを訊ねたところ、答えはPaaS。その理由の1つが、日本特有のビジネスモデル、直販ではなくパートナー販売のビジネス割合が大きいこと。つまり、SaaSやIaaSよりも、PaaSのほうがパートナーが関与しやすいはずだということ。

 SaaSだけで、ERP的なアプリケーションの世界すべてを実現するのは現実的ではない。なので、SaaSとカスタマイズしたアプリケーションなりを組み合わせることになる。その際には、既存のオンプレミスとの組み合わせもあれば、クラウド上でERPのアドオン・カスタマイズ的な機能追加をすることも。当然このあたりは、日本ではSI企業などが担当することになる。クラウド上でアドオン開発するのなら、PaaSのほうがプラットフォームとして向いているということだ。また、日本固有のISVのパッケージソフトを、クラウドに持っていく際にもPaaSが利用しやすいのではというのもあるようだ。

 遠藤氏がこういった判断をしている理由には、日本でSalesforce.comのPaaS「force.com」が「うまくいっている」印象をあるからとのこと。この遠藤氏の見解については、ほとんど同意できる。けれども、ISVがOracleのクラウドを使って、積極的にパッケージ製品をクラウド化してビジネス展開するかというと、そこはちょっと私は懐疑的。本来ならforce.comと違い、Javaなどでアプリケーションを構築していれば、OracleのPaaSに移植するのはそれほど難しくないはず。技術的な参入敷居は低いが、じつはOracleのパートナー制度的にはちょっと敷居が高いのではと思うのだ。

 というのも、force.comのビジネスが活性化しているのは、大手ISVの参入ももちろんあるが、むしろ数多ある小さなISVの「小さなビジネス」が支えているから。少なくとも日本では、社員数が数10名程度の企業が、こぞってforce.comビジネスに参入している。必ずしも参入企業がビジネス的に成功してはいないかもしれない。しかしながらその裾野はかなり広いので、結果的にforce.comのビジネスが活性化しているのだ。

次のページ
OracleとSalesforce.comのクラウドアプローチの違い

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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