第一ライフグループCIO兼CDOはなぜインドに注目したのか?登用と育成の両輪で動かす“人のIT戦略”
「距離があっても機能する」グローバルIT組織のつくり方とは
第一ライフグループは2025年5月、同グループのIT・デジタル戦略のさらなる推進を目的に、高度な専門人材を育成・活用する拠点として「グローバル・ケイパビリティ・センター(Global Capability Center:GCC)」をインドに設立した。日本の伝統的な生命保険大手が、なぜインドに直営の戦略拠点としてGCCを設けたのか。この設立に携わった第一ライフグループ・Group Chief Information Officer 兼 Group Chief Digital OfficerのStephen Barnham(スティーブン・バーナム)氏が、国内最大級のインシュアテック(保険×テクノロジー)カンファレンス「ITC Japan」にてその詳細を語った。その後の個別インタビューでは、同氏が見据えるAI時代の生存戦略が見えてきた。
グローバル出身だから見えた日系企業の2大課題
バーナム氏は防衛産業で誘導技術に関わるソフトウェア開発エンジニアとしてキャリアをスタートさせた後、1980年代に訪れた金融とテクノロジーの融合、すなわちフィンテックの黎明期から金融業界に携わっている。そこで世界初のフィンテックプロジェクトともいえるロンドン証券取引所の自動化プロジェクトに関わった。この「極限の信頼性が求められる防衛システム」と「刻一刻と変化する金融のスピード感」の双方を経験したことが、現在の第一ライフグループにおけるIT戦略の背骨になっているという。
そんな同氏がなぜ第一ライフグループに参画したのか。その理由について同氏は「異なる考え方を奨励する文化と強固な顧客本位の価値観に集約される」と述べ、特に社内ミュージアムに展示されている1945年の広島支店からの書簡を同グループの価値観を象徴するものとして挙げた。広島に原爆が投下された直後の混乱期、書類も記録もすべて失われた中で、当時の広島支店のトップはわずか10日以内にすべての保険金支払いを完遂したのだという。「顧客の課題に応えたい」という同社の価値観をテクノロジーでどう体現するかが、同氏の掲げるミッションの根幹にある。
バーナム氏は2023年4月から第一ライフグループにジョインしている。当時直面した課題をたずねると「高度な専門技術をもつ社内IT人材の不足」と「巨大なレガシープラットフォーム」を挙げた。日本企業に共通する根深い課題である“ベンダー依存体質”が同社でも顕在化しており「要件定義はできるものの、技術の深部を理解して自らコードを書き、アーキテクチャを設計できるエンジニアが育ちにくい土壌が事業会社側に形成されてしまっていた」と振り返る。加えて、メインフレーム上で稼働する数十年前の複雑なプログラムがブラックボックス化し、企業としての俊敏性を奪っている現状があった。
そこで、まずは社内の技術能力を高めることから始めていった。日本のIT組織は往々にして「阿吽の呼吸」や「暗黙知」に頼るような文化があり、それがグローバルなスピード感においてはボトルネックとなる。AIの恩恵を最大化するためには、ITの運営そのものを構造化・標準化し、誰でもアクセス可能な状態にする「ITの産業化(Industrialization)」が不可欠であった。この課題を突破するための施策としてバーナム氏が主導したのがインドにおけるグローバル・ケイパビリティ・センター(以下、GCC)設立だ。
この記事は参考になりましたか?
- EnterpriseZine Press連載記事一覧
-
- 第一ライフグループCIO兼CDOはなぜインドに注目したのか?登用と育成の両輪で動かす“人の...
- Copilot全社導入に向け800台のAI PCを導入 安定運用を目指すトヨタ・コニック・...
- IVI、日本発の製造業PLM標準「Lean PLM」技術仕様を公開──23社が7,000件...
- この記事の著者
-
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
