2026年5月27日、IFSジャパンは都内で有料制の年次イベント「IFS Connect」を開催した。それにあわせてメディア・アナリスト向けの事業戦略説明会も行われ、本国からCEO マーク・モファット氏をはじめ経営幹部たちが来日した。
(手前から)IFS 最高経営責任者(CEO) マーク・モファット氏、
同 最高製品責任者(CPO) ダニエル・ダットン氏、
同 最高サステナビリティ責任者(CSO) ソフィー・グラハム氏、
同 アジア中東地域担当 プレジデント ハンネス・リーベ氏、
IFSジャパン 代表取締役社長 大熊裕幸氏
同氏はまず、IFSが引き続きグローバルおよび日本市場で高い成長率を維持していることをアピール。加えて、いかに顧客がAIからリアルなインパクトを創出できるか、ビジネス成果を得られるかという観点に基づき、価格体系を変更したことに触れた。

価格体系の変更は、本年4月に発表された。具体的には、ユーザー数に応じたライセンス課金を廃止し、顧客の組織が管理する設備や資産の数(管理資産数)に応じて料金を支払う新たな価格モデルへの移行である。これにより、産業の運用投資と連動し、かつ予測可能なソフトウェア投資を実現するとのことだ。
モファット氏は、IFSがこうした様々な先駆的取り組み・技術開発に投資する根底にある精神として、常に「次のフロンティア」に焦点を当てていること、そして常に業界のマーケット・リーダーであり続けることに対する誇りを強調した。
続く話題は、直近のパートナーエコシステム拡大について。大きくは事業変革、先進AIモデル、インフラストラクチャ、さらにはフィジカルAI&ロボティクスの4つの領域における投資領域が示されたが、ここでCPO(最高製品責任者)のダニエル・ダットン氏は、同社の投資戦略の根幹となっている思想について紹介した。
IFSは、「現在の世界中の組織には①ヒューマンワーカー、②デジタルワーカー、③ロボティックワーカーの3つのワーカーが混在する姿へと徐々に進化しつつある」との見解を持っている。この考えに基づき、IFSは同社のAI機能やAIアプリケーションをこれらすべてのワーカーに実装し、産業用、さらには業界別に特化させたソリューションとして提供することを目指している。

改めてIFSについて紹介しておくと、同社は特定の業種に特化した産業用ソフトウェアを提供する企業だ。航空宇宙・防衛、エネルギー・公益・資源事業、製造業、建設・エンジニアリング、通信、交通輸送を主要顧客として定義しており、安全保障や複雑な現場業務・オペレーションの事情を抱えるこれらの業界を“知り尽くしたAI”を提供し、真に現場の業務・事業変革に貢献できるソリューションを手掛けている点を独自性とする。

続いてCSO(最高サステナビリティ責任者)のソフィー・グラハム氏からは、新製品の発表があった。自律型排出量管理システム「IFS Zero」だ。これは、アセット集約型産業(物理的な有形資産へ巨額の初期投資を行い、その資産を稼働させることで収益を生み出す産業)向けに設計されたソリューションである。まさにIFSの主要顧客であるエネルギー、インフラ、製造、輸送などといった業界を想定したものだ。

現在、世界中で上場企業に対し、GHG(温室効果ガス)排出量をはじめサステナビリティに関する自社の指標や取り組みを開示する制度が設計・施行されつつあるが、前述のような業種は特にクリティカルな産業分野として、国・投資家・社会のあらゆる方面から厳しいプレッシャーにさらされている。だが、現状の開示で手一杯というのが現実だという。
IFS Zeroはそんな顧客に対し、「①ネットゼロの気候変動目標を達成し、②アセット全体のエネルギーコスト上昇を管理し、③監査に対応したレポートによって増大する開示要請に応える」とグラハム氏。
同ソリューションは、顧客が有するアセット一つひとつのセンサーに接続すると、リアルタイムでエネルギー消費量や排出量に関するデータを収集・管理する。急に排出量が増加したり、エネルギー消費に異常が発生したりすれば、どこのプロセスの、どのアセットが原因なのかを瞬時に特定できるという。異常の発見には、同社が開発した産業用エージェント型AIが使われている。また、コストやカーボンを削減できるだけでなく、最新の監査に対応したレポートを作成し、オペレーションの回復力を高めることも可能だ。ここでもエージェント型AIがリアルタイムでデータライフサイクル全体をカバーしているため、迅速な対応を実現できるという。
同社でアジア中東地域を統括するハンネス・リーベ氏は、ここ1年での日本におけるハイライトを振り返った。2025年に話題を呼んだ日本航空(JAL)、ギガフォトンでの導入発表、日本向けの製品ローカライズ、そしてIFS日本法人(IFSジャパン)での人材への投資、さらにはユーザーコミュニティ強化への注力などが挙げられた。
日本事業の拡大も順調だ。2023年~2025年の3年間で、契約総額4倍、受注額3倍、従業員数3倍という成長をたどってきた。リーベ氏は、2027年に向けての引き続きの成長加速に期待を示した。また、新たな日本の顧客事例として、新明和工業、JVCケンウッド、ホシザキが紹介された。

最後に、IFSジャパンで代表を務める大熊裕幸氏からは、国内での主要なパートナーシップの成果について紹介があった。1件目は、2026年1月に発表があったNECとの協業強化だ。実は、NECとIFSは30年来のパートナーとして歩んできた歴史があり、この時は日本企業のソブリン(デジタル主権/データ主権)、セキュリティといった安全保障のニーズに応えるべく、データセンターをはじめとするインフラ基盤をすべて国内で完結させるモダナイゼーション支援の体制が整ったことが発表された。
2件目に紹介されたのは、ベイカレントとの協業だ。ベイカレントが従来よりIT支援で感じていた「顧客に提案するERPの選択肢が非常に少なく、なんとか複雑なカスタマイズを行って提供してきた」という課題に対し、IFSが新たな選択肢としてラインアップに選ばれたという。
続く3件目は、電通グループ(電通総研、ドリームインキュベータ)との協業。従来から販売パートナーであったドリームインキュベータを足がかりに、製造業に多くの顧客と支援実績・ノウハウを有する電通総研との協業へと拡大させたものだ。
そして最後の4件目に、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)とのタッグについて詳細が明かされた。これまでも、日本IBMは国内企業に対し「IFS Cloud」の導入を手掛けてきたが、そこで蓄積してきたノウハウやナレッジをもとに、IFS製品のポテンシャルを最大限に活かすためのAI導入基盤、AI駆動型開発基盤を構築しているところだという。これにより、IFS導入における要件定義から保守運用までの全工程において品質を維持したままコストを抑え、納期を短縮することが可能になるとしている。

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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
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