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EnterpriseZine編集部が最旬ITトピックの深層に迫る。ここでしか読めない、エンタープライズITの最新トピックをお届けします。

『EnterpriseZine Press』

2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス

粘り強くクラウド移行を進めるSAPユーザー企業、4社のITリーダーが変革のアプローチを語り合う

Sapphire 2026ではエージェンティックAIを活用した移行ソリューションも登場

 SAPが米フロリダ州・オーランドで開催した年次イベント「SAP Sapphire 2026」。2日目の基調講演では、ロッキード・マーティン、アエロプエルトス・アルヘンティーナ、エクソンモービル、リーバイ・ストラウスの4社のITリーダーが登場し、自社の変革をテーマに近況を語り合った。各社ともに本格的なAI活用を見据えつつも、その基盤として重要となる目の前のクラウド移行に取り組んでいる。

分断・断片化の解消に挑むロッキード・マーティン

 ロッキード・マーティンは、航空機やロケットの開発製造を手がける世界最大級の防衛・航空宇宙企業である。同社は現在、「1LMX」と呼ばれるDXプログラムを展開中だ。CIOを務めるマリア・デマリー氏は、「私たちにとって変革そのものはゴールではない。『レディネス(準備ができている状態)』を獲得することがもっと重要なゴールだ」と語った。ここでのレディネスとは、「企業全体でスピード感、明確さ、確信をもって動ける能力」を意味する。

マリア・デマリー氏(SVP and Chief information Officer, Lockheed Martin)
マリア・デマリー氏(SVP and Chief information Officer, Lockheed Martin)

 しかし、同社の以前のシステムには分断が生じており、プロセスの断片化という問題も抱えていた。また、事業の特性上、厳格なセキュリティやデータ要件に対応しなくてはならない。

 それでも「どうスケールさせるか」を意識し、システム、データ、プロセスが一体となって機能する組織「Connected Enterprise」を実現しようと変革を進めている。デマリー氏は、ビジネスプロセスの再考と意思決定方法の見直しに注力していると話していた。IT部門にとってはテクノロジー起点でのアプローチのほうが容易だが、ロッキード・マーティンでは、あえて地道な努力が求められるやり方を選択したのである。これには、AIから出来るだけ早くビジネス価値を得られるようにする狙いがある。デマリー氏は「近道はない。やるべき仕事をやる」と語った。

クリーンコア原則を守りながらビジネスプロセス変革進めるアルゼンチンの巨大空港運営企業

 次に、アルゼンチンで主要空港の運営事業を手掛けるアエロプエルトス・アルヘンティーナが登壇。CIOを務めるグスタボ・サバト氏は、同社の事業運営に付きまとうリスクとして“気象条件”を挙げた。特に、冬季の悪天候時には空港を閉鎖せざるを得ず、オペレーションの復旧までに膨大な時間がかかってしまう。また、除雪のための化学薬品の利用にともなう環境負荷の増大も、昨今では問題視されるようになっていた。

グスタボ・サバト氏(Chief Information Officer, Aeropuertos Argentina)
グスタボ・サバト氏(Chief Information Officer, Aeropuertos Argentina)

 こうした問題意識から、同社は「Snow Agent」と称するものを開発した。これは、気象情報、滑走路センサーのデータ、運用手順、保守プロセスを統合し、アラートの発信から作業指示の作成、実行状況の追跡まで、リソースの稼働状況を確認しながら、管制塔と運用に従事するスタッフ同士のコミュニケーションを維持する仕組みである。サバト氏は、この仕組みが滑走路への介入を減らすプロアクティブモデルであると説明した。

 アルゼンチンの冬は6月から8月。最初のSnow Agent展開は2つの空港を対象とし、2027年冬に残りの国内空港へ展開。その後は、海外の空港への展開も計画している。Snow Agentは、2023年にERPをS/4HANAに刷新したことで実現したという。その際、留意したのは、SAP BTPを土台にクリーンコアの原則(※)を守りながら、社内のビジネスプロセスの多くを見直したことだった。「簡単ではなかった」と、サバト氏は移行プロジェクトを振り返った。

クリーンコアの原則:「クリーンコア(Clean Core)」とは、SAPが提唱する基幹システム(ERP)の運用戦略である。下記5つの基本原則を掲げている。

  1. ビジネスネスプロセス:システムの中核はできる限りカスタマイズせず、業務をシステムに合わせる“Fit-to-Standard”を徹底。不要な独自ルールや機能の作り込みを排除し、グローバル標準のプロセスを活用する
  2. 拡張性:独自の機能を追加する場合、コアシステムを直接改変(モディフィケーション)するのではなく、公開された標準APIや「SAP Business Technology Platform(BTP)」などの外部レイヤーで分離して実装する
  3. データ:クレンジングと構造化を行い、常に一貫性のある高品質なデータを維持することで、将来のAI活用や精度の高い分析基盤を構築する
  4. 統合:APIやイベント駆動型アーキテクチャを活用し、外部システムやクラウドサービスと柔軟かつ強固に連携させる
  5. 運用:手作業を排除し、システムの変更管理や自動化(継続的な更新・パッチ適用)を容易にする

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グリーンフィールドアプローチで移行進めるエクソンモービル

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冨永裕子の「エンタープライズIT」アナリシス連載記事一覧

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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