粘り強くクラウド移行を進めるSAPユーザー企業、4社のITリーダーが変革のアプローチを語り合う
Sapphire 2026ではエージェンティックAIを活用した移行ソリューションも登場
グリーンフィールドアプローチで移行進めるエクソンモービル
3社目の事例は、国際石油メジャーとして知られるエクソンモービルだ。同社の中核は石油や天然ガス事業だが、プラスチックのような石油化学事業のほか、近年では次世代エネルギー事業にも注力している。
世界のエネルギー転換が進むとともに、エクソンモービルも新しいビジネスモデルへの転換を模索している。バイスプレジデントのビル・ケイラー氏は、「私たちには根本的な戦略的転換が必要だと気付き、組織構造を簡素化した。そして、より迅速な意思決定を実現すべく、ビジネスプロセスとデータのあり方を根本的に見直そうと、ビジネス主導の変革に着手した」と語る。
エクソンモービルとSAPの関係は長い。しかし、最初の導入は従来型エネルギーの市場環境が安定していた時代に行われたため、大規模なカスタマイズが施されており、オンプレミス環境で稼働していた。
そこで、アエロプエルトス・アルヘンティーナと同様にビジネスプロセスを見直し、クリーンコアの原則を守り、システムをクラウド環境に移行することを決断。現在は、RISE with SAPを利用し変革を進めているが、エクソンモービルの特徴はゼロから新規でシステムを導入する「グリーンフィールドアプローチ」を採用したことにある。
同社が変革の一環として注力している取り組みの1つに、データ基盤の整備がある。これまで同社では、データという資産を活用する文化はあまり根付いていなかった。そのため、「AIが盛り上がっているが、その前にデータ基盤を構築する基礎固めに時間をかけたい」と、ケイラー氏は考えを明かした。
加えて同氏は、企業が大規模な変革に取り組む上で重要なことを3つ挙げた。1つ目は、変革の戦略的意図を明確にすること。これは、その戦略的意図が企業全体のリーダーシップの方向性と一致しているかを確認する必要があるためだ。2つ目は、戦略に沿った意思決定が実行されているかをマネジメントするガバナンス体制を構築することだ。変革には何千人もの人々が関与しているため、適切なガバナンスがなければ、変革を進める際に問題に直面することになりかねない。最後の3つ目には、変革を通じてともに成長できるパートナーの選択が重要だとした。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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