粘り強くクラウド移行を進めるSAPユーザー企業、4社のITリーダーが変革のアプローチを語り合う
Sapphire 2026ではエージェンティックAIを活用した移行ソリューションも登場
AIエージェントの展開を可能にしたリーバイスのクラウド移行
4社目は、1853年創業のリーバイ・ストラウス(以降、リーバイス)だ。同社の中核ビジネスはデニムのボトムス販売だが、ここ10年ほどは卸売業者への製品販売から、D2Cビジネスを強化する方向に戦略の軸足を移している。現在、世界100ヵ国以上に展開している店舗網は3,000店舗を超え、別途オンラインストアも展開している。
「現在の環境下で世界的なリテーラーであり続けるためには、事業運営のスピード感が重要になる」と、同社のCDO兼CTO ジェイソン・ゴーワンズ氏は語った。注力したのは、共通データ基盤の整備である。以前のリーバイスでは、グローバルで9つの異なるERPインスタンスを運用していたため、事業の現状を正確に把握することが難しかった。しかし、そこからクリーンコアの原則を守りクラウド環境へ移行する決断をした。
移行が完了した2024年からは、組織全体で1,000以上のAIエージェントを展開している。また同時に、4,000人以上の社員にトレーニングも実施したという。そして今では、当初は想定していなかった多くのユースケースが生まれ始めたとのことだ。その代表例として、ゴーワンズ氏は卸売注文の処理を挙げた。卸売業者からリーバイスへの注文内容は、サイズ、色、スタイルの組み合わせパターンが多岐にわたり、複雑になりがちという特徴がある。以前は、注文処理に2日~5日ほどかかることもあった。しかし、SAP上に構築したAIエージェントを使うことで、80%の処理自動化を達成。時間にして20分から30分で完了するようになった。
AIによって、かつては不可能だったことが次々と実現できるようになり、チームも以前とは比較にならないほどのスピードで動いている。同社は現在、2027年に予定しているS/4HANAのグローバル展開の完了に向けて変革を進めているところだ。
とはいえ、クリーンコアの原則を守る難しさを抱えている点は他の企業と共通する。ゴーワンズ氏も「標準化の重要性は他の皆さんも言及したとおりで、私たちも実感しているが、現実には多くの難しい対話が必要となる。しかし、標準化こそがビジネスアジリティを可能にする」と指摘した。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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