粘り強くクラウド移行を進めるSAPユーザー企業、4社のITリーダーが変革のアプローチを語り合う
Sapphire 2026ではエージェンティックAIを活用した移行ソリューションも登場
変革を加速するためのエージェンティックAI
ここまでの4社の話を振り返り、SAPのトーマス・ザウアーエシッヒ氏とヤン・ギルグ氏は、「移行のジャーニーはそれぞれ異なるが、将来のビジネス成長のために基幹システムのクラウド移行に挑戦中であることは共通する」と総括した。
【左】トーマス・ザウアーエシッヒ氏(Chief Customer Officer, SAP Executive Board, SAP)
【右】ヤン・ギルグ氏(Global President Customer Success & Americas, Member of the SAP Extended Board, SAP SE)
変革は簡単ではない。SAPは、変革の過程をより予測可能で混乱の少ないものにするため、ツールへの投資を続けている。その一環として今回のSapphireで発表されたのが、エージェンティックAIを活用した移行ソリューションだ。これは、RISE with SAPの一部として提供している統合ツールチェーンのソリューションを強化するもので、移行プロジェクトの全フェーズを通して以下7つのAIエージェント群(Joule Assistants)が移行を支援する。
- System Analysis Assistant:すべてのモジュールをスキャンし、データ、カスタマイズ設定、カスタムコードを精査する
- Data Management Assistant:データの不整合を特定し、適切な根本原因分析と解決策の提案を行う。データの問題を修正するスキルも備える
- Custom Code Assistant:Joule for Developersと連携し、カスタムコードをS/4HANAで実行可能な形に適応させ、クリーンコアの実現も支援する
- Configuration Assistant:SAPのベストプラクティス、プロジェクトスコープ、個別要件を材料に、S/4HANAシステムの事前設定を行う
- Test Management Assistant:ビジネスプロセス情報、個別要件、ユーザーストーリーを材料に、テストの準備からスコープの設定、テストケース作成の自動化までを支援する
- Rollout Assistant:ゴールまでの手順を計画し、地域や拠点などの展開先ごとにロールアウトを実行する
- Project Management Assistant:プロジェクトマネージャーに、適切なタイミングでのタスクの提案や潜在的リスクの特定など、インテリジェンスを提供する
プロジェクトは、会話型UIを備えたAIコパイロット Joule for Consultantへの指示から始まる。たとえば、「ECCシステムをS/4HANA Private Cloudに移行したい」と伝えると、Jouleは移行対象システムのコンテキストを参照し、プロジェクトスコープを設定しようと動き始める。その後の作業は、他のAIエージェント群と連携しながら進められる。
7つのJoule Assistantsが担当するのは、いずれも人間にとって大きな負荷となっていた作業である。個別取材に応じてくれた日本のSAPユーザーの現状をよく知るマノス・ラプトプロス氏は、「日本では様々な事情から、世界の他の地域と比べて変革に時間がかかる傾向がある。そこで、SAPはパートナーと連携しながら、変革を迅速に進めるためのツールを提供しようとしている」と話した。
移行コストを抑え、ビジネス価値をどれだけ早期に享受できるかは、クラウド移行をいかに加速させられるかにかかっている。このソリューションは日本企業の変革の加速に貢献できるのか、その真価はこれから問われることになる。
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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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