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早川社長に訊く、進化するオープンテキスト―コンテンツ管理からエンタープライズ情報管理へ

 カナダのオンタリオ州にはブラックベリーとオープンテキストという2つの有名なIT企業がある。しかしブラックベリーはスマートフォン市場の競争激化の下、厳しい状況にある。というわけで「現在オンタリオ州でNo1のIT企業はオープンテキストです」と語るのは、オープンテキスト株式会社 代表取締役社長の早川典之氏だ。

オープンテキストにはBPMもCEMもIXもDiscoveryも揃っている

早川典之氏
早川典之氏

 オープンテキストは、ECM(エンタープライズコンテンツ管理)を中心に、EIM(エンタープライズ情報管理)分野のビジネスを展開するリーダー企業。もともとはカナダWaterloo大学の研究プロジェクトの成果であるSGMLに対応したサーチエンジンの開発者たちが、その技術を持って1991年にスピンアウトし生まれた企業だ。初期の頃に同社の技術がYahoo!で採用されるなどで評価を上げてきた。

 オープンテキストには全世界で年間約13億ドルの売り上げがある。これは2013年にGXS社を買収し統合する前の数字。統合後は20億ドルを超えるくらいの規模となる。拠点は世界に140箇所、従業員は8,200人以上、顧客数も10万を超える。

 「いまや同社の製品はフォーチュン500にランキングされるさまざまな業種の大手企業に採用されており、自動車や製薬業、さらには石油やガスなどのエネルギー、インフラなどの公益的な分野で強いのが特長です」

 ECMが中心だったオープンテキストのビジネスは、買収などで製品ポートフォリオを次々と増やしている。とくに2012年にオラクルやCA、SGIでキャリアを積んだマーク・バレンシア氏がCEOに就任して以降、その動きは活発化している印象がある。象徴的なのがBPM(ビジネスプロセス管理)のマーケットリーダーであるコーディスを買収したことだ。それまでに買収していたBPM、BPA(ビジネスプロセス分析)、エンタープライズ・アーキテクチャーのプロバイダMetastome社、プロセスおよびケース管理のGlobal 360 Holding社のソリューションとも合わせ、コーディス製品を中核に「Process Suite」として提供を開始した。

 これ以外にもセキュアメールやクラウド型FAXサービスなどを手がけるEasyLink社、B2BインテグレーションサービスおよびEDIを展開していた前出のGXS社を次々に買収し、ビジネス領域をさらに拡大しているのが現在のオープンテキストの姿だ。このように拡大した製品、サービスはエンタープライズコンテンツ管理(ECM)、ビジネスプロセス管理(BPM)、カスタマーエクスペリエンス管理(CEM)、インフォメーションエクスチェンジ(IX)、ディスカバリー(Discovery)の5つのカテゴリーに分類される。

 国や地域によってはこの5つを個々に展開するところもあるが「日本はそれぞれのカテゴリーを縦割りではなく、会社の総合力でアップセル、クロスセルする地域として指定されています」と早川氏。本社からも、日本は世界の中でももっとも成長の早い地域と認識されているとのこと。すでに国内体制が200人を超えるところまで拡大しているのも、成長を期待される日本の状況を表している。

ECMとBPMを組み合わせERPのアプリケーションと適切にコミュニケーションする

 ECMから始まりBPMやCEMなどへと広がりをみせているオープンテキストだが、この拡大は必然だと早川氏は言う。いわゆる構造化されたデータを使った業務プロセスの管理、効率化はERPが担う世界だ。ERPの世界はできるだけシンプルなアプリケーションを使うほうがいい。

 とはいえ、シンプルなERPの仕組み以外にもビジネスを効率的かつ適切に管理するのに必要なことはある。その部分は、これまではERPにカスタマイズとして載せることが多かった。カスタマイズするのではなく、そういった部分は外に出すほうが柔軟性も高くなりビジネスの変化にも追随できる。このERPの外に出すべき部分を担うのが、オープンテキストが揃えた5つのカテゴリーと言うわけだ。

 「ECMとBPMの組み合わせで、ERPのアプリケーションと適切にコミュニケーションできるようにします」(早川氏)

 これは言い換えれば「ERPから出てくる意味あるコンテンツ」を適切に管理することでもある。たとえば、見積書や請求書のようなものは、もととなるデータはERPなどのアプリケーションのデータベースにある。必要なデータをそこから持ってきて見積書なりのドキュメントの形に出力され、最終的な承認を得て顧客に送付され保管される。保管されたものは、後から検索したくなることもあるだろう。これはたんにワープロで作成されたようなドキュメントのファイルを、コンテンツ管理と称して電子的にアーカイブしておくようなものではない。

 「ERPなどで利用しているデータベースから構造化されたデータをとってきて、それが見積書や請求書なりの形になると非構造化データのコンテンツになります。これはたんなるドキュメントのファイルではなく、意味のあるコンテンツになるのです」(早川氏)

 請求書のデータがいつどこからきて、誰が請求書の形にしたのか。そしてその請求書をいつ誰にメールで、あるいはFAXで送ったのか。こういった一連の現場業務のプロセスは、ERPアプリケーションの外でコンテンツと共に管理することとなる。

 「クラウドでもデータベースでもいいのですが、なぜここにこのコンテンツが入っているのか。何らかのプロセスを経てそのコンテンツは存在します。それがすぐに分からないとダメなのです。分からないと企業が利用するコンテンツ管理にはなりません」(早川氏)

 EIMという企業が利用する真のコンテンツ管理のためには、オープンテキストが取り揃えたECMに加えて、BPM、IX、Discoveryも必要と言うわけだ。

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EIMの分野では競合はいない

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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