2019年4月29日、Dell Technologiesの年次カンファレンスイベント「Dell Technologies World 2019」が、米国ラスベガスで開幕した。Dellは2013年に株式を非公開としてプライベート化し、短期的な業績に縛られず長期的な視点で戦略を立て投資できる体制を選択した。その体制で2016年9月にはEMCを買収し、新たにDell Technologiesを設立する。そこから2年ほどが経過した2018年12月には、再び株式を公開し上場を果たしている。再上場後の新体制で初めてとなる今回のイベントで、一段と存在感を増したのはDell Technologiesファミリーの中のVMwareだった。
Dellのマルチクラウドはエッジからコア、そして複数のクラウドサービスを包括的にサポート

「Dell Technologiesを立ち上げた時、サーバーとストレージ、そして仮想化を1つにできれば、顧客に素晴らしいソリューションが提供できると考えました」と語るのは、Dell TechnologiesのCEO マイケル・デル氏だ。これら3つが一緒になったDell Technologiesのビジネスは、その後順調に推移している。主要な製品領域では、マーケットシェアNo1を獲得するに至っているのだ。
Dell Technologiesでは、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションに貢献するため、最近5年間に約200億ドルの研究開発投資を行っている。Dell Technologiesがどの技術に投資するかは、十分に顧客の声を聴き、決めているという。創業から間もなく35周年。「この35年間に世の中ではめざましい技術の進歩があり、それが人々の進化に貢献してきました。そして今や技術は民主化し、その結果として人類の進歩も素晴らしいものがあります」とデル氏、この技術の進化を牽引する立場にあるのがDell Technologiesだ。
ところで、Dellが株式を非公開化した2013年頃のIT市場動向は、クラウドファーストで全てがパブリッククラウド化に向かい、サーバーやデータセンターのビジネスはなくなるのではとも考えられた。しかしながらこのトレンドには変化もあり、現在はクラウドだけでなくエッジコンピューティングに大きな関心が集まっている。クラウドファーストと言われ始めた頃は、パブリッククラウドとプライベートクラウドのどちらを選択するのか、あるいはそれらを共存させ利用するハイブリッドクラウドが現実的だとの話題となっていた。現状では、さらに複数のパブリッククラウドを利用するマルチラウドに注目が集まりつつある。
Dell Technologiesファミリーには、SAP ERPなどのミッションクリティカル・トランザクションに最適化したクラウドサービス「Virtustream」がある。とはいえそれ以外には、独自のデータセンターでパブリッククラウドのサービスを展開していない。基本的に自社でクラウドは持たないDell Technologiesの戦略は、さまざまなクラウドを利用するマルチクラウドだ。とはいえ、彼らの言うマルチクラウドは他とは少し異なる。
Amazon Web ServicesやIBM Cloud、Microsoft Azureなど複数のパブリッククラウドをサポートして、それらを相互に利用できるようにするだけでない。これらクラウドに加え、コア(プライベートクラウド)からエッジまでのコンピューティング・インフラを、包括的かつシームレスに運用できるようにするソリューションとしてマルチクラウドを位置づけているのだ。
「エッジからコアのコンピューティングを提供し、その上で全てのパブリッククラウドが我々のパートナーです。さらにDell Technologies Cloudは、Kubernetesのコンテナ技術にも対応しています」(デル氏)
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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