北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國FHD)とLiNKXとBIPROGYの3社は1月28日、次期コアバンキングシステムの提供支援体制について会見を開催。現在、2027年1月のローンチを目指して、順調に進行中であることを明かした。
北國FHDは2023年11月、次期コアバンキングシステムをMicrosoft AzureとGoogle Cloudのマルチクラウドで運用する方針であることを発表。同社傘下の北國銀行では、2021年5月に勘定系システムをAzureに移行しているが、そこにGoogle Cloudを新たに採用する形だ。金融機関におけるマルチクラウドの例はなく、注目を集めた。その狙いについて改めて同社 代表取締役社長 杖村修司氏は「シングルパブリッククラウドでいいのかという観点で、ベンダーフリーがあるべき姿であることから決断した」と説明する。
オンプレミスに比べるとコストが抑えられる点もあるが、それは本筋ではなく、勘定系システム自体をモダナイズすることが目的であることを強調した。とは言え、勘定系システムは金融機関にとっての“心臓部”である。杖村氏も「積極的に変えたいわけではなかった」と漏らす。実際、北國銀行はAzure上で従来の勘定系システムのままでも運用できることを確認したそうだが、5年後、10年後を考えると耐えきれないと判断したという。「AIの時代に、COBOLという古い言語が耐えられるのか、昔のアーキテクチャのままでいいのか、と問うた結果の答え」と杖村氏は話す。
北國FHDの次期コアバンキングシステムのコンセプトは大きく3つ。1つは「脱COBOL・クラウドネイティブモダナイゼーション」だ。これにより、運用部門は半減できるほか、戦略部門を含めたシステム部門要員も25%削減できる見込みであるという。自動コーディング・コード変換ツールで46%のコード生成が可能であることも確認されているとした。2つ目は「ベンダーフリー」であること。3つ目は「クラウドフリー」とし、AWSなどを含むすべてのクラウドで稼働可能なことを挙げる。
同社は、LiNKXとBIPROGYとともに同プロジェクトを推進中で、2027年1月のローンチを目指している。杖村氏は「順調に進んでいる」と話す。さらに、大量の開発に対してAIを活用する方針という。杖村氏は「工数や費用を大幅に減らす可能性がある」と付け加えた。
次期コアバンキングシステムのローンチ後の販売体制は未定というが、北國FHDが支援する用意はあるという。とくに、「内製化を進めたい企業や金融機関があれば、ITパートナーとコラボしてきた実績があるので支援していく」と杖村氏は話した。
2020年に設立した金融系スタートアップのLiNKXは、社員の8割がエンジニアで、そのうち半数がグローバル人材であることが特長だ。代表取締役社長 オサムニア モハメッド氏は「日本人エンジニアは日本マーケットや企業を理解しており、グローバルはグローバル標準や新たなテクノロジーを取り入れることができる」と同社の強みを話す。両者が融合することで柔軟性と安定性を兼ね備えた勘定系システムの開発に寄与できるとした。今回の北國FHDの次期コアバンキングシステム開発においては、DevOps、CI/CD、IaCなどモダンな開発手法の採用やコンテナベースのマイクロサービス化を推進していく役割を担う。
BIPROGYは、勘定系システムにおいて約60年の歴史を持つ。北國銀行ではWindowsベースの勘定系システム「BankVison」を利用しており、杖村氏からのクラウド移行要請を受け、2021年に「BankVison on Azure」を提供開始している。同社が提供する次世代勘定系システムの姿として、同社 代表取締役専務執行役員CSO 葛谷幸司氏は脱COBOLを挙げた。「日本の金融機関をはじめ、政府などいろんなところでCOBOLが使われているが、クラウドネイティブなアプリケーションにすることで得られるメリットがあるのでチャレンジしていきたい」と意気込んだ。しかし、技術的には課題もあるという。葛谷氏は「2027年1月のローンチ時点で最善策をとりたい。稼働後に新たな技術を取り入れていくことも必要だろう」と話した。
なお、北國FHDは同プロジェクトにおいて、100~150億円規模の投資になるとしてる。
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