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ソブリンに特化したコラボレーションツール「Mattermost」が満を持して日本市場展開を本格化

 SlackやMicrosoft Teamsなどと並ぶコラボレーションツールの一角として知られるMattermost(マターモスト)が、日本法人を設立した。

 基本的なUIはSlackなどと似ているMattermostだが、オンプレミス環境向けのツールとしてスタートした点に特徴がある。クラウド一辺倒の潮流が落ち着き、ミッションクリティカルやオンプレ回帰、クローズド環境といったニーズが高まっている今、ソブランティやセキュリティを担保したコラボレーション環境を提供できる点から多くの引き合いが来ているという。

 同社は、2015年にイアン・ティエン氏(現 CEO)らによって創業された。最初はゲーム会社を立ち上げた彼らだが、オンラインゲームのためのコミュニケーションツールとしてMattermostをオープンソースで自作したところ、それが政府系などの「事情があってクラウドが使えない人々」の目に留まり、厳格なセキュリティ要件などに応えるうちに、いつしかこちらが本業になってしまったというユニークな過去がある。

CEO and Co-Founder, Mattermost, Inc. イアン・ティエン(Ian Tien)氏
CEO and Co-Founder, Mattermost, Inc. イアン・ティエン(Ian Tien)氏

 ティエン氏は、Mattermostが必要とされる背景として①地政学的な不確実性、②エージェンティック・ワールド(AIによる自律的な世界)への移行、③データ主権(ソブランティ)の必要性の3つを挙げる。

 3つ目のソブランティは、Mattermostの特徴そのものといえる。「Microsoft 365やZoomなどグローバルで誰もが使うインフラサービスは溢れているが、それとは別に何事にも主権が必要だ。オンプレミスやプライベートクラウドといった、自分たちが完全にコントロールを握れる『ソブリン・コア』を持たなければならない」とイアン氏は指摘する。

 Mattermostは、自らを「セルフホスト型インテリジェント・コラボレーションツール」と称する。チャット型のコミュニケーション、プロジェクト管理機能、ワークフロー自動化、さらにはAIエージェントをツール上で呼び出し協働することが可能な体験(UX)を、Web、デスクトップ、モバイルで提供する。Teamsとの連携や、レガシーなオンプレミス・アプリケーションとのブリッジも可能だという。ユーザー独自のサーバー上に構築するため、外部ベンダーへ依存せずにデータ主権を確保できる。

 世界を3つ(レッド・ブルー・ブラック)のネットワーク領域に分けて考えたとき(次図)、Mattermostが活きるのはブルーとブラックの領域だ。

 「我々はSaaS企業の資本が入っているわけでも、クラウド第一主義でもない」とティエン氏。「世界が頼りにしている人々を、より強力にすること」をミッションに、ブルーとブラックの領域に完全にフォーカスしていると強調した。

 「国家安全保障や軍事、重要インフラに携わる人々は、インターネットに接続できない厳格なセキュリティ環境にいるため、『最悪なツール』を使わされています。しかしMattermostは、最も要求の厳しいセキュリティ環境へ最先端のテクノロジーを届けられます」(ティエン氏)

 実際、同ツールは米国や欧州の軍・政府機関、NATOなどで採用されてきた。日本市場でも、これまで野村総合研究所(NRI)や富士通を通じて展開されてきたが、2026年からは本格的に市場にコミットしていく構えだ。

 日本における目標として以下4つを掲げている。

  1. 政府との強固な関係構築:日本の政府機関、防衛組織、重要インフラ事業者との信頼あるパートナーシップの確立
  2. 同盟防衛オペレーションの支援:インド太平洋の安全保障における日本の役割を、米国・連合同盟国とのシームレスな相互運用性で支援
  3. 重要インフラへの貢献:日本のエネルギー、製造業、交通、通信セクターにソブリンなコラボレーションとAIを提供
  4. 日本市場への投資:専任のローカルチームを構築し、戦略的パートナーシップを形成。日本のデジタル主権の目標に貢献

 日本法人(Mattermost Japan株式会社)でカントリーマネージャーを務める原沢滋氏は、Mattermostのユニークな機能の数々を紹介した。たとえばプレイブック機能。これはセキュリティインシデントなどが発生した際、いつ何時、専門家がその場にいなくても「誰を呼ぶべきか」「何をすべきか」をチェックリスト化し、誰でも適切な対応と行動ができるようプロセスを示す機能だという。

 主権を確保しながらAIと連携できる機能も特徴だ。独自のAI(ユーザー組織の環境内だけでトレーニングされたソブリンAI)をMattermost上で呼び出して使役できる。たとえば、自分が不在の間に溜まった未読チャットをまとめて要約し、何が起こっていたかを教えてくれるAIなど、原沢氏自身が普段使っているカスタムAIが例として紹介された。

 もう一つユニークな機能として紹介されたのが、“Burn-on-read(読んだら燃える)”機能だ。『ミッション:インポッシブル』に出てくる“消える指令メッセージ”のように、機密性の高いチャットを既読後に削除できるというものである。消えたチャットは、送信者の画面には表面的なログとして残るが、他のチームメイトの画面やデータベースには一切残らない。チャットが既読の何分後に“燃える”かは、ユーザー自身が設定できる。

 他には、日本語で送信したチャットを自動で翻訳し、各々の画面ではそのユーザー自身の言語で表示するという、グローバル組織において便利な自動翻訳も搭載されている。元々は、西側の同盟軍同士がスムーズに連携できるように開発された機能のようだ。

 こうした防衛と主権のために設計された機能を、パブリックなサービスにも劣らない最新のテクノロジー環境で、クローズドにストレスなく利用できるのがMattermostのアピールポイントだ。日本市場での重要ターゲット分野として、原沢氏は以下(次図)を挙げた。

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この記事の著者

名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)

サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/news/detail/23931 2026/03/13 19:28

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