障害の原因を探し、次の一手をAIが示す
統合IT運用プラットフォームを提供するNinjaOneは、IT運用を支援するAI「Katana AI」と、AIエージェントの利用を統制する「NinjaOne MCPサーバー」を発表した。どちらも同社プラットフォームの権限・ガバナンス機能の上に構築しており、IT部門が定めた範囲の中で、障害の切り分けから修復までをAIに任せられるようにする。
同社は2026年10月15日、オンラインで記者発表会を開いた。両製品は米国テキサス州で10月13日(現地時間)に発表されたもので、会見には同社で戦略・オペレーションを統括するエルザン・ウイグル氏が登壇した。
Katana AIは、端末の稼働状態を示すデータ(テレメトリ)や履歴、アラート、操作の記録を分析し、考えられる根本原因を特定する。そのうえで、修復のための操作やスクリプトを含む次の対応策を、技術者がふだん使う管理画面の中で提案する。推奨の根拠には汎用的なAIモデルの知識ではなく、その組織の端末履歴やアラートの傾向、IT部門がこれまでにためてきた解決のノウハウを使う。
「何がおかしくなったのかを突き止めるのに何時間もかけていた作業を、KatanaがNinjaOneの環境を調べて推奨を出すことで、解決と原因分析を高速で進められる」とウイグル氏は説明する。早期に導入した顧客の間では、数百件のチケット(問い合わせ記録)を30秒ほどで分析し、利用者が直面している問題の候補をまとめるといった使い方が出てきているという。
背景には人材不足がある。ウイグル氏によると、経験を積んだIT技術者の不足は米国だけで約100万人にのぼる。「Katanaは、ITのプロの生産性を10倍に高め、企業が技術者をより早く受け入れ、育成できるようにする」と同氏は語った。
外部のAIエージェントも、既存の権限のもとで動かす
もう1つの新製品であるNinjaOne MCPサーバーは、Katana AIと同じ分析・状況把握の機能を、IT部門がすでに使っている外部のAIエージェントにも開放する。
外部のAIエージェントは、このサーバーを通じてNinjaOneのデータを参照し、プラットフォーム上で操作を実行できる。その際、エージェントはNinjaOneを迂回せず必ず経由して動き、IT部門が管理するロールベースの権限で統制される。Katana AIと組み合わせれば、同サーバーにつながるすべてのAIエージェントを、1つの連携窓口と共通のルールのもとで管理できる。
AIがテキストを処理する単位であるトークンの消費効率を重視した設計も特徴の1つだ。同社は、AIの利用コストを予測しやすくすることで、企業が安心して利用規模を広げられるとしている。
同社でプロダクトマネジメントを担当するシニアバイスプレジデントのマット・ヘイスティングス氏は、発表資料の中で「IT部門に不足しているのはデータではなく時間」と述べている。顧客からは、AIが参照する情報と実行する操作を正確に設定し、自ら検証できる場合に限って実環境へのアクセスを任せられるという声が寄せられてきたといい、同社はAIの動きを組織が予測・統制できる形で開発を進めているとした。
20を超える管理ツールを1つのエージェントにまとめる
NinjaOneは14年前に創業した。OSやハードウェアの種類を問わず、端末(エンドポイント)を監視・保護・管理する機能を1つのプラットフォームで提供してきた。会見でウイグル氏は「IPアドレスがあれば接続してテレメトリを取得できる。OSがあれば、ソフトウェアを導入し、ガバナンスやセキュリティを効かせることもできる」と、対応範囲の広さを説明した。
同氏によると、大企業は1台の端末で平均15〜20以上の目的別ツールやエージェントを動かしており、それぞれのテストや保守、互換性の確認に追われている。ツール同士をつなぐ連携には、製品の購入費の5倍ほどの費用をかけているという。NinjaOneは、端末管理や自律型のパッチ管理、バックアップ、リモートアクセスなどを単一のエージェントと単一のデータベースで提供し、9〜11種類のエージェントを置き換えられるとしている。
Katana AIは、このプラットフォームの上で動く。セキュリティ製品との統合範囲を問う質問に対し、ウイグル氏は、同社がCrowdStrikeの導入を担う世界有数のパートナーであることを紹介した。NinjaOne上でポリシーを設定すれば、EDR(端末上の脅威を検知・対処する製品)をすべての端末に自動で配布でき、脆弱性診断ツールと連携して修復までを自動化することもできる。「Katana AIは、こうした連携先から情報と知見を引き出し、ITの担当者に届ける」と同氏は語った。
同社の顧客は140以上の国と地域で約4万社に達し、企業評価額は123億ドルにのぼる。NinjaOneが後援したIDCの調査では、エンドポイント5,000台あたりの年間削減効果は100万ドル、3年間のROIは720%、投資回収期間は4ヵ月だった。
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZine/AIdiverには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail ...
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