静岡県磐田市とテックタッチは、2026年2月に締結したAI活用に関する連携協定に基づき、財務会計業務を対象とした生成AI活用の実証を行った。
その結果、返戻・不備伝票の発生を削減し、年間590.4時間相当(人件費換算:約177万円)の業務時間削減効果を確認したという。行政事務に生成AIを組み込み、職員の判断を支援することによる効果と、実務で活用するための知見が得られたとしている。
磐田市では、財務会計システムに「テックタッチ」を導入し、システムの操作支援による業務効率化を進めてきた。その成果をさらに発展させるため、2026年2月12日にテックタッチと、行政事務および行政運営におけるAI活用に係る連携・協力に関する協定を締結。今回の実証は、その一環として、制度や業務ルール、事務処理の前後関係といった行政特有の文脈をAIが理解したうえで判断を支援し、ヒューマンエラーや重大な事務リスクを未然に防ぐことで、事務処理の高度化と業務効率化にどの程度寄与するのかを検証したとのことだ。
実証では、日常的に利用する財務会計システムの中に生成AIを組み込み、必要な場面で職員の判断・業務を支援するアプローチを採用。「テックタッチ AI Hub」を用いて、財務会計業務のうち以下3つの業務に対応するAIを実装・検証したという。
- 源泉区分判定AI/源泉控除額自動計算AI:起票画面上のボタンをクリックすると、件名・摘要等の情報から源泉区分を判定し、控除額を自動計算。源泉徴収の漏れや計算ミスの防止を検証
- 起票日・支払日チェックAI:起票内容から支払期限に関するルールをAIが自動判定し、期限超過などの懸念がある場合にその場で警告。支払遅延に伴う返戻の防止を検証
- 廃棄物処理確認AI:廃棄物の内容に応じてAIが対話形式で確認事項を案内し、処理ルールの誤認による不備伝票の発生防止を検証
定量成果:返戻・不備伝票の削減と年間590.4時間相当の時間創出
実証期間(令和8年4月~6月に一般職員向けに試行)中、対象業務における返戻・不備伝票の発生件数を実証前後(月平均)で比較したところ、いずれも改善が見られたとのこと。
- 源泉の誤りによる返戻:4件/月 → 1.5件/月(62.5%減)
- 支払遅延に伴う返戻:21件/月 → 7件/月(66.7%減)
- 廃棄物処理に関する不備伝票の発生:2.5件/月 → 0件/月(100%減)
これらの改善を年間の業務時間削減効果に換算すると590.4時間、人件費換算で約177万円に相当するという。
定性成果:82.6%が「AIで正しい回答」、84.8%が継続利用を希望
実証後の職員アンケートでは、82.6%が「AIで正しい回答が得られた」と回答し、84.8%が継続利用を希望。また、67.4%が他業務への拡充を希望すると回答した。職員からは、「入力忘れにAIチェックで気づけた」「決裁前に誤りに気づけた」「返戻になる前に起票時に気づけるのはありがたい」といった声が寄せられたとしている。
また、会計課からも、支払遅延に伴う返戻が減少したことや、実証期間中に源泉区分に関する問い合わせや廃棄物処理に関する不備伝票が発生しなかったことなどが報告されているという。
一方で、AIのチェックを待つ時間がかえって非効率に感じられる場合があることや、機能への理解が十分でなく利用されなかったケースもあったとのこと。また、実際の運用を通じて判定ロジックの修正が必要になったケースも確認され、AIを実務に組み込むうえでは、実装の継続的な改善や利用者への周知が重要であることも明らかになったとしている。
実証から見えた、自治体における生成AI活用の3つのポイント
今回の実証では、定量的な効果に加え、自治体の実務に生成AIを取り入れるうえで重要となる3つの知見が得られたという。
1. 「業務システムに生成AIを組み込む」アプローチは行政事務でも有効
企業で活用が進む、日常の業務システムに生成AIを組み込み、必要な場面でAIが判断を支援するアプローチを行政事務にも適用。返戻・不備伝票の削減や職員からの高い継続利用意向が確認され、行政事務においても有効なアプローチとなり得ることが示された。
2. 人の判断を残したまま、AIによる「判断支援」を行政事務に組み込める
AIが職員に代わってすべての判断をするのではなく、業務ルールや入力内容に基づいて職員の判断を支援し、最終判断や例外処理は職員が担う形で運用。その結果、人の判断を残したまま、従来の業務プロセスを大きく変えることなく、AIによる判断支援を行政事務の中に組み込めることを確認した。
3. 技術だけでは定着しない、職員への周知・理解促進も重要
業務システムの中に生成AIを組み込んでも、それだけで利用が定着するわけではない。実証では、「何をしているかわからないので利用しなかった」という声もあったという。生成AIを実務で活用していくためには、操作方法だけでなく、AIがどのような場面で、何を支援するものなのかを職員が理解できるよう、周知や教育をあわせて行うことが重要であることが分かったとのことだ。
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