市場概況――2017年度は前年度比2.3%増、2018年度は同比2.9%増
国内民間企業のIT市場規模(ハード・ソフト・サービス含む)は、2017年度が前年度比2.3%増の12兆1,530億円と推計した。今後は、2018年度が前年度比2.9%増の12兆5,050億円、2019年度は同2.2%増の12兆7,800億円、2020年度は同1.6%増の12兆9,840億円と予測する(図)。
市場を牽引してきた金融機関を中心とした大型の基幹システム等の更新・開発案件が2016年度にピークを迎えたことで、2017年度はその反動が懸念された。しかし民間企業の収益力の高まりもあり、大規模システムの刷新や改修があったことや、ワークスタイル変革に関する取組みが堅調に推移したことなどから、2017年度に入っても大手ITベンダーによるシステムインテグレーションビジネスは堅調に推移した。
注目トピック――2019年度以降も続く、IT投資への前向きな流れ
2018年度のIT投資増加要因としては、2020年1月のWindows7のサポート終了に伴うPCの入れ替えや、会計・生産・販売といった基幹系管理システムのリプレイスを計画しているあるいは実施している企業が多いことが挙げられる。また、ワークスタイル改革を推進するためにインフラの増強を行った企業なども見受けられる。
2019年度以降もIT投資に対する前向きな流れは続くと予測する。この背景にはデジタルを活用して企業やビジネスに新しい価値をもたらせるデジタルトランスフォーメーション(DX)への取組みが進み始めていることがあると考える。
DX推進の鍵となるAIやIoTについては、今のところPoC(概念実証)の繰り返しで、一定のIT投資こそ認められるもののビジネス変革には至っていない状況が散見される。もっとも、本調査において実施したアンケート調査結果によると2018年度以降、DXに対し計画的なIT投資を行うとの回答が増加傾向にあり、これらへの投資が前進する兆しが見受けられる。
それ以外では、例えばサービス業において、東京オリンピック・パラリンピックに対応するためのITシステム投資を期待できる。
法人アンケート調査で「システム基盤全体の効率化」が第1位に
法人アンケート調査においては、毎年、今後3年間におけるIT投資の目的について尋ね、回答(最大3件まで複数選択可)を得ている。
2018年(n=508)は、「システム基盤全体の効率化」が51.2%と第1位となり、2014年以降トップを続けてきた「情報セキュリティの強化」を抑え、順位が逆転した。「システム基盤全体の効率化」がトップとなった一因には、これまで述べてきたようにデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が考えられる。
調査結果について詳しくは、矢野経済研究所が刊行した「国内企業のIT投資実態と予測2018」に掲載されている。