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北川裕康のエンタープライズIT意見帳

IT戦略とSWOT、PEST、BSCについて


 33年以上にわたりB2BのITビジネスにかかわり、現在はクラウドERPベンダーのインフォア(Infor)のマーケティング本部長の北川裕康氏が本音と洞察で業界動向を掘る連載。今回はIT業界パーソンのための戦略の考え方についてです。

 昨年、数名の大手企業のIT部門長の方とお話しする機会があり、その都度、御社のIT戦略はどのようなものかお教えくださいと質問してみました。答えは、「IT戦略ねー……」という感じでした。恐らく戦略や計画はお持ちだと思うのですが、戦略という定義があまり浸透していないのではないかと感じました。今回は、戦略については、そして、その立て方について書いてみたいと思います。古典的なフレームワークを使いますので、それほど難しいことはないです。

 まずは、戦略の意味です。そこには2つの意味があると思います。

 1つは、ある定めた期間の終わりに、自分がなっていたい姿です。外からどう見えたいのかというビジョンとは違いますので、どうなりたいかです。「こういうことを主にやって、業界最高の顧客満足企業にしたい」とか、「市場開拓して、製品ポートフォリオを拡大し、新製品を10%にしたい」とかです。実際の活動はTacticsで定義し、成功については定量的な指標であるKPI(Key Performance Indicator)を設定します。企業レベル、事業部レベル、部門レベル、色々なレベルの戦略があると思いますが、どのレベルであってもトップの戦略に連動させる必要があります。

 もう1つは、企業活動には、人、もの、カネ、データ作成と言ったリソースに限りがあるため、どの優先事項の活動にリソースをつぎ込むかを決定するのも重要な戦略の一面だと思います。営業戦略では、製品ごとテリトリーごとに、目標の売り上げ数字が落ちてくると思います。それぞれで、市場の規模、現在のシェア、もっているリソース、今からもっている機会を分析して、どのようにそれをクローズして、追加でどれだけの機会をどのように作るかを考えます。

 今回は、前者の戦略そして戦術の立て方について考えてみましょう。

 古典的なやり方ですが、SWOT分析は、戦略を立てるためのいまだに有効な手段です。SWOTは、普通にグローバル企業で使われています。SWOTは、「強み(Strength)」、「弱み(Weakness)」、「Opportunity(機会)」、「Threat(脅威)」の最初の英語の文字をとって名付けられています。内部環境として、自社の強み、弱みを自覚して、外部環境である、市場でのビジネス機会や競合の脅威やネガティブなトレンドを分析します。戦略や計画を立てるためには、内部環境と外部環境の両方を、正しく把握することが必要になります。

 内部環境は、先ほどの戦略で書きましたが、どのレベルで分析するかを、戦略の目的をベースに決定する必要があります。それレベルで、比較対象とする競合会社を特定して、その企業に対して、武器になる自社の強みは何で、改善すべき弱みは何かを列挙していきます。あくまでも内部環境なので、自社や部門の分析になります。

 そして外部環境です。私は、OTを分析する前に、別のフレームワークを使って、外部環境を分析します。それはPESTです。これもSWOTの名前と同様、「Politics:政治」、「Economy:経済」、「Society:社会」、「Technology:技術」の最初の英語の文字をとって名付けられています。これは自社のビジネスの取り巻く外部環境を、4つの視点で分析します。

 例えば、日本は今人口減少に直面していますよね。そうするとリテールでは、店舗の自動化が大事になります。政府が今、DXを推進していますので、DXにビジネスが関係する場合は、政治にそれを書きます。自動車業界は、新しいタイプの競合、Google、テスラが登場します。「Economy(経済)」にそれを記載します。イメージが湧きましたかね。

 また、競合についての分析も重要になるので、「Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)」の観点で、3Cの分析で補足します。それらの結果で、外部環境の機会と脅威の部分を完成させます。

 さらに、SWOT分析の結果を、さらにクロスSWOT分析します。これはSWOTの4つの項目をクロスにかけわせて、やるべきことを列挙していきます。

  • 自社の強みを機会にあてて、ビジネスを成長させる。
  • 機会を生かして、弱みを克服して、競合に負けないようにする。これだけではだめですが。
  • 強みを生かして、脅威を跳ね除け、逆に機会する。
  • 弱みと脅威がクロスされる分野はできるだけ避けて、悪影響をうけないようにする。

 ビジネスのゴールも中期計画から落ちてきていると思いますし、戦略として、1年後、とか3年後に、どこに行くべきかが見えてきているのならば、それを、SWOT分析の結果を見ながら調整します。私も、よく大まかな3年プランを作成して、1年ごとにラベルにつけ、どこに向かっていくべきかを考えます。

 ただ、SWOT分析は、戦略構築の最初のステップです。分析ですからね。ここから具体的な戦略、戦術に落としていく必要があります。

 戦術については、ここも古典的ですが、バランススコアカード(BSC)を使うのもいいかと思います。戦略の検証という意味もあります。

 BSCは、クロスSWOT分析の結果を、財務、顧客、業務プロセス、人材の視点で、戦略を整理していきます。BSCでは、先ほどのSWOTクロス分析ででてきた「やるべきこと」を、先ほどの財務、顧客、業務プロセス、人材の4つの視点に、分類していくのです。財務の視点が目的になり、その目標が顧客の視点になり、手段が業務プロセスの視点になり、リソースが人材の視点になります。人材は、データまで含めたリソースの視点でもよいかもしれませんね。そして、スコアカードですので、それぞれの視点で、需要成功要因とKPIを定義していきます。

 作成した戦略はある意味、机上の空論なので、定期的にKPIの実績値を目標値と比較して、うまくいっていない場合は、修正プランを作成して、継続的に改善していく必要がある。

 戦略、戦術を立て、進捗させていくことは、IT部門であれ、マーケティング部門であれ、どのような部門でも必要不可欠だと思います。

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この記事の著者

北川裕康(キタガワヒロヤス)

35年以上にわたり B2BのITビジネスにかかわり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Inforなどのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などの要職を歴任。現職は、クラウドERPベンダーのIFSでマーケティングディレクター。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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