サントリーに根付く「やってみなはれ」精神でモダナイズ進む グループIT基盤をAWSに移行
第8回:サントリーシステムテクノロジー サービス開発部 課長 古川晴子氏

清涼飲料や酒類の製造・販売を中心にグローバル展開するサントリーグループ。その中でIT戦略の立案からシステム開発・運用、ユーザーサポートを担うサントリーシステムテクノロジーは、AWSをベースとしたクラウド開発の標準化、脱Oracleを進行中だ。さらに最近では人材育成にも力を入れている。サービス開発部 課長 古川晴子さんに話を聞いた。
「やってみなはれ」精神で、スパッとAWSに移行
酒井真弓(以下、酒井):サントリーは、2020年、グループ全体のIT基盤としてAWSを採用し、国内のサーバー1,000台以上をオンプレミスからAWSに移行しました。その狙いは何だったのでしょうか?
古川晴子(以下、古川):1つは、世界に約300社以上あるサントリーグループのシステム開発・展開のスピードアップを図ることです。同時に、コストの削減やセキュリティ運用の一元化に取り組んでいます。2022年には国内だけなくグループ全体の移行も完了しました。今後、オンプレのデータセンターは廃止していく方針です。
酒井:なぜそこまでスパッとクラウドに舵を切ることができたのでしょうか?
古川:思い切りの良さは昔からです。サントリーでは「やってみなはれ」という価値観を大切にしています。まずはやってみること。始める前から「リスクがあるからやめておこう」という判断にはならないんです。また、クラウドは技術とマインドの両面からDXを加速させるための手段でもあると思っています。

酒井:たしかに、オンプレで「やってみなはれ」は難しいかもしれませんね。古川さんは今、どんなプロジェクトを担当されているのですか?
古川:主に2つです。1つ目は、AWS上でいろいろなサービスを組み合わせ、新しい業務システムを作り上げることです。最近は、営業部門からニーズがあり、Amazon RedshiftとTableauを使ってPOSデータを分析・可視化するシステムを構築しています。
酒井:POSデータの活用は売上拡大のキーになりますね。営業部門からニーズを引き出し、システムを開発して売り上げに貢献するまで、どのような流れで進めていくのでしょうか?
古川:最初の「こんな課題を改善したい」「ITをこんなふうに活用したい」というアイデアは営業部門から出てきます。それを言われるがまま開発するだけでは意味がありません。どうすれば効果が出るシステムにできるのか、要求分析まで立ち戻って一緒に考えていきます。
私たちが想像を膨らませて作り込んでも、ユーザー部門にとっては使いにくいシステムになってしまうこともあります。まずはプロトタイプを作ってユーザー部門に使ってもらい、フィードバックをもらって改善していくなど、アジャイル的に進めるケースもあります。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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