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西尾素己氏が語る、最大10兆円規模の“RaaS”市場の実態──サイバー攻撃対象は大企業から中小企業へ

 ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとする国際的緊張の高まりにともない、懸念されているのがサイバー攻撃である。今や軍事侵攻の手段としてサイバー攻撃が国際的に行われる時代になっている。また昨今のAIの急速な普及により、サイバー攻撃においてもAIが活用された事例が発表されており、さらなる攻撃の高度化が懸念される。2023年9月15日に開催されたイベント「Zenith Live '23 Tokyo」では、東京大学先端科学技術研究センターの客員研究員でありサイバーセキュリティ専門家である西尾素己氏が、国際的緊張の裏で高まる最新のサイバー攻撃動向や、AI時代の先進的な攻撃から企業を防御するための戦略やアプローチについて解説した。

ウクライナ侵攻では「サイバー空間」も戦場に

 西尾氏はまず、2022年2月24日から起きたロシアによるウクライナ侵攻を振り返り、そこで展開されたサイバー攻撃について触れた。現在の戦場は陸・海・空、宇宙だけでなく、サイバー空間にも及んでいるとし、ロシア・ウクライナ有事は「人類が経験する初の全面的なハイブリッド戦争である」と説く。

 この戦争の舞台裏ではロシアのサイバーオペレーションが進行しており、これを主導しているのは旧KGB系の組織、FSBであると指摘されている。同組織は、社会インフラに対するサイバー攻撃を行う能力を有していると見なされており、軍事侵攻が発生する前の段階で外交交渉の一環としてサイバー攻撃が利用されているというのだ。

東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員 西尾素己氏

 ロシアがウクライナに侵攻する前から、FSBによる様々なサイバー攻撃が疑われている。その対象となったのは、国の機関ではなく、民間のISP(Internet Service Provider)であった。この事実からも、「私たちは民間企業が攻撃の対象となる新しい時代に入りつつある」と西尾氏は指摘した。

 西尾氏はロシア軍がウクライナの原発を攻撃し、その機能を停止させた事件について言及。この攻撃による被害は、大規模な核廃棄物の漏れなどの大災害には至らず、機能停止にとどまる結果となった。西尾氏ら安全保障の専門家たちは、このオペレーションを見て「驚愕した」という。その理由は、ロシアが単に原発を攻撃したという事実ではなく、ダメージを最小限に抑え、機能のみをピンポイントで停止させたからである。実は、この攻撃の数日前にウクライナの原発メーカーに対するサイバー攻撃があり、設計図や緊急時の手順などの重要情報が漏洩した可能性があると西尾氏は指摘。民間企業が次々と攻撃されているのだ。

 また、ロシアによるサイバー攻撃は、ウクライナ侵攻の1年前から既に行われていたと考えられるという。西尾氏は、日本近隣においても2024年から2025年にかけて有事が発生するといった報道がある中、日本の民間企業への攻撃が現在進行中である可能性も考慮に入れなければならないと警鐘を鳴らした。

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ビジネス化したRaaSの標的は中小企業

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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