NTTデータグループは、2023年11月6日に全国銀行データ通信システム(全銀システム)のシステム障害に関する説明会を開催した。この障害は、銀行間送金を担う重要なインフラである全銀システムにおいて、10月10日と11日に発生し、預金者、金融機関、関係者に影響を及ぼした。会見には、NTTデータグループ本間洋社長をはじめ、NTTデータの佐々木裕社長、鈴木正範取締役副社長執行役員が出席し、障害の詳細と対策についての情報を提供した。
本間社長は、障害によって生じた影響に対して深く謝罪。「10月10日及び11日に全銀システムに生じた不具合により、預金者の皆様、金融機関、関係者の皆様には多大なるご迷惑とご心配をお掛けしたことを、心よりお詫び申し上げます」と述べ、現在進行中の対応策について説明した。
持株会社のNTTデータグループ内に立ち上げたタスクフォースの推進体制については本間社長の直轄組織として、NTTデータグループの品質保証部を中心としたものとなり、今回の専任システム障害の本格的対処、再発防止策の検討をはじめ、同社関連の重要システムの総点検も実施していくという。
続いて、NTTデータの佐々木社長は、全銀システム障害についての経緯を説明した。10月の7日から9日にかけて、各金融機関をつなぐ「中継コンピュータRC(リレーコンピュータ)」を旧「RC17シリーズ」から新「RC23シリーズ」へ移行した。旧来の「RC17」は各加盟銀行に設置されていたが、「RC23」については全銀センターに集約している。障害は、このRCのシステム上で手数料のチェックや入力をする処理で発生した不具合が原因だという。
「銀行間で電文を送付する際に、仕向機関が被仕向機関に支払う内国為替制度運営費(銀行間手数料)が生じる。これを上り電文では入力、下り電文ではチェックをする仕様となっている。この処理の際に、RCのメモリー上に展開されたテーブルを参照するが、その参照処理においてエラーが発生し、RCが異常終了した」(佐々木社長)
さらに、佐々木社長は今後の見直しの重要ポイントについても説明した。システム総点検タスクフォースでは、当社の品質部門が中核となり、今回の全銀システム障害および全社の重要システムに関する点検を行う。開発、移行、運用の各フェーズで、システムの品質に関するプロセス全体を俯瞰し、品質がトータルで確保できているかを確認していく。
開発フェーズは、「要件定義から製造・単体試験に至るアプリケーションの開発工程」と「製造・単体試験から総合運転試験に至るテスト工程」に分けることができる。基本的に不具合は開発工程で混入し、テスト工程で摘出されるべきだが、テストが不十分な場合には、不具合が「すり抜け」という形で商用システムにまで残存することがある。今回の全銀システムの問題では、商用システムに不具合が残存したことを踏まえ、どの段階で混入し、なぜ摘出できなかったのかを検証していく。
移行フェーズでは、旧システムから新システムへのスムーズな切り替えを確実に行うためのプロセスを点検する。また、データベースの移行やネットワークの切り替え、アプリケーションのリリースなどの手順が適切に行われているかを検証する。このシステムでは、移行方式の検討が十分であったかを中心に検討を行う。
運用フェーズでは、システムに障害があった場合のBCP方針や復旧プロセスを検証する。このシステムでは、10月10日及び11日の運用状況についての妥当性や、復旧に時間がかかった原因などを再検討し、検証を進めていく。
これらの点検を踏まえ、生成プログラムに発生した不具合の原因を究明し、品質保証や再発防止の体制を確立するために、全銀ネットとの確認作業を進めていく。佐々木社長は「改めて説明の場を設ける方向で全銀ネット側と協議をしていく」と述べた。