
需要予測に基づいた調達・生産・販売を計画的に行い、在庫や欠品といったリスクを最小限に留めるために有効とされる「サプライチェーンコントロールタワー」。本稿では、日本企業の“サプライチェーン高度化”を阻む理由、その実現に向けた4つのステップを紹介します。
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「サプライチェーンコントロールタワー」の必要性
サプライチェーンを寸断させる理由はさまざまです。記憶に新しいものだけでも、新型コロナウイルス感染症の拡大による工場のロックアウト、それにともなうサプライヤーからの部品供給の停止、大規模なコンテナ船座礁事故、サプライヤーを経由した大企業へのサイバー攻撃をはじめ、エシカルな観点に基づく不買運動などもありました。
このように変化が激しい社会情勢において、より効率的でトラブルに強いサプライチェーンを構築するための仕組み・考え方として「サプライチェーンコントロールタワー」への注目度が高まっています。
サプライチェーンコントロールタワーとは、その名の通り、空港などに設置される管制塔のようにサプライチェーン全体のプロセスを見渡し、適切に管理するための機能のこと。サプライチェーンにかかわる、あらゆるデータを可視化し、それらに基づいて意思決定をすることでコストの最小化、売り上げ・利益の最大化を目指します。
たとえば、国をまたいで配送するグローバル物流では、トラックや船舶、鉄道とさまざまな輸送手段があり、中には配送期間が数週間、数ヵ月にわたるものもあります。それぞれが予定通りに進捗しているのか、“配送ステータス”を確認するためには輸送手段ごとに介在する、異なる物流キャリアへ問い合わせなければいけません。これまでメールや電話、FAXといった手段で問い合わせをしてきましたが、すべての物流をそれらの手段で確認することは不可能でしょう。
そこで活用すべきなのは物流キャリアが提供している「情報連携システム」。荷物の配送ステータスを企業間で自動連携でき、「到着予定日に対して予定通り進捗しているか」「破損や水濡れなどの損傷が発生していないか」といった情報をリアルタイムに把握できます。
そして、担当者はこれらの配送情報と社内の生産情報、在庫情報など、さまざまなデータを組み合わせることで「このままでは納品遅れになり、スケジュール通りの製造ができない」といった兆しを読み取れるようになります。そのため適切なタイミングでピンポイントに在庫を保有する他のサプライヤーを即時に探し出し、他の手段で在庫を確保するといった判断や対応が可能です。
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菅原 勇人(スガハラ ハヤト)
オープンテキスト株式会社 ソリューションコンサルティング統括本部 統括本部長
GE Information Services、GXS(日本法人立ち上げから参画)、日本HPのサービス部門にて運輸セクターの営業責任者などを経てオープンテキストに入社。ほぼ20年間一貫して日本企業のグローバル・サプライチェーンの...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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