生成AIを活用した「サプライチェーンコマンドセンター」とは何か 急速に進化するデジタルオペレーション
【第4回】生成AIがサプライチェーンを変える

第三次人工知能(AI)ブームといわれる近年、機械学習やディープラーニングによりAIテクノロジーは急速に進化しています。日本企業ではビジネスへの活用が進んでいない中、欧米の先進企業では既に生成AIが活用され「サプライチェーンコントロールタワー」の次点である「サプライチェーンコマンドセンター」の構築が始まっています。近い将来、多くの日本企業でも取り組むことになる、生成AIを活用した“サプライチェーンの高度化”とはどのようなものでしょうか。
サプライチェーンにおける「生成AI」活用が始まっている
自然災害やパンデミックなどの環境リスク、テロや政治的不安などの地政学的リスク、その他にもさまざまな社会的情勢など、安定的なサプライチェーンを脅かすリスクは年々多様化しています。企業はサプライチェーンを寸断する兆候をリアルタイムでキャッチし、必要な一手を打てるように需給予測や在庫データ、生産状況、ESGへの対応度合いなど、自社と取引先におけるさまざまなデータを連携させながら、サプライチェーンDXやサプライチェーンコントロールタワーの実現を目指して準備していることでしょう。
現在は第三次人工知能(AI)ブームと言われていますが、サプライチェーン最適化において「生成AI」が活用されることはもう少し先になると考えられていました。しかし、この1年でAIは急速に進化し、状況は変化しています。
従来、予定通りにモノが届かない場合には、サプライチェーンコントロールタワーを通じて“見える化”されたさまざまな予測データに基づき、人が総合的に状況を把握して、代替プランの策定を行っていました。しかし、生成AIの急速な進化により、サプライヤー各社の在庫状況や社会的情勢などを踏まえた代替案を既にAIが提案できるようになっています。
たとえば、「2ヵ月後に必要な材料を調達できなくなる」ことが予測できる場合、担当者は、多めに事前調達したり代替可能な仕入れ先を探したりするなどの対応を行います。確実に調達できる方法を検討するためには、サプライヤー自体の生産状況はもちろん、サプライヤーの調達先である原材料メーカーや二次請け、三次請けとなる会社の生産状況や在庫状況なども把握する必要があるでしょう。
さらに調達可能な代替先が複数見つかった場合には「最も安定している会社はどこか」「財務面や信用情報に不安がないか」「ESGへの対応ができているか」「エシカルで人権に配慮した調達ができているか」「メディアによるネガティブな評価がないか」といった点も踏まえ、リスクを最小限に抑えるための最適な選択を行いたいところです。
これらの情報を総合的にインプットし、人が代替手段を検討・選択するには時間がかかります。しかし、生成AIならば多岐にわたる情報を基にデジタルツイン技術を活用して仮想空間上に様々なシナリオを再現した上で、最もリスクの低い選択肢を代替手段として提案できるのです。この取り組みは先進的な欧米企業では既に一部実用化しており、業務効率改善に活用されています。
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菅原 勇人(スガハラ ハヤト)
オープンテキスト株式会社 ソリューションコンサルティング統括本部 統括本部長
GE Information Services、GXS(日本法人立ち上げから参画)、日本HPのサービス部門にて運輸セクターの営業責任者などを経てオープンテキストに入社。ほぼ20年間一貫して日本企業のグローバル・サプライチェーンの...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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