
「AIOps」は、従来のシステム運用を大きく変革するだけのポテンシャルを有しているでしょう。事実、筆者の所属するPagerDutyのデータによると、システムによるイベントデータは毎年70%増加しており、700人のIT専門家を対象とした世界的な調査では、69%の運用チームが大規模データを理解することに苦労していることが報告されています。一方、これほどまでにデータ量が増加しても、運用に携わる人的リソースは変わらない、あるいは減少するばかりです。こうした状況下だからこそ、運用チームは人手に頼らない運用を考えることが急務であり、AIOpsを理解・実践することが欠かせません。
「AIOps」導入の課題
AIOpsを導入することで、インシデント対応におけるプロセス全体を大きく改善することができます。たとえば、システム障害対応の文脈ではノイズの減少、異常の検知、高度なパフォーマンス監視・分析、原因分析の自動化などにも取り組めるでしょう。これらにより開発者やオペレーターは単調な反復作業ではなく、意味のある仕事に集中できるようになります。
しかし、AIOpsの導入には、いくつかの乗り越えなくてはならない課題も存在していることをご存じでしょうか。下記、4つの視点で考えてみましょう。
データの品質と管理
AIOpsの成功には「高品質なデータ」が不可欠です。しかし、多くの企業はデータの品質や一貫性に問題を抱えています。データが不十分であったり、サイロ化により分断されてしまっていたりする場合、AIOpsの導入効果が減少する可能性があるでしょう。まずは、データの標準化と検証を行い、データの信頼性を高めることが重要です。
スキルギャップ
AIOpsの実装には、機械学習やデータ分析の専門知識が必要です。しかし、これらのスキルを持つ人材は市場で不足していることが多く、適切な人材を確保することに苦労することがあるでしょう。そのため、結果的にAIOpsの実装にともなうスキルギャップが発生してしまいます。
文化的な抵抗
AIOpsに限った話ではありませんが、このような新しくドラスティックな効果をもたらす技術、考え方の導入はワークフローやプロセスに大きな影響を及ぼします。全体的に見てポジティブな話であっても、個人やグループ単位では変化に対する、“文化的な抵抗”が発生するケースもしばしば見受けられます。
コストとROI
新しいものを導入する際には初期投資が必要であり、そのコストを正当化するための明確なROI(投資対効果)を示すことが求められます。つまり、(良い面だけを見るのではなく)AIOpsの導入が本当に価値を生むのかを慎重に評価する必要があるでしょう。
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- この記事の著者
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草間一人(jacopen)(クサマカズト)
PagerDuty株式会社 Product Evangelist
通信事業者でプラットフォームエンジニアを務めたのを皮切りに、いくつかの外資系企業でプロフェッショナルサービスやプリセールスエンジニアとしてクラウドネイティブやプラットフォーム製品に携わるなど、10年以上さまざまな形でプラットフォームに関与し...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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