全社プロジェクトを成功に導く「巻き込み術」と「声の掛け方」
サステナビリティ情報の開示に対応する場合、3ステップのうち1stステップ「グループ会社システム対応」は今年中に完了しなければなりません。そう考えると、残された時間はわずかです。2027年3月期のデータ開示に間に合わせる場合、2026年からサステナビリティ情報の回収体制を構築する必要があります。翌年度の予算どりが、前年度の10月〜2月にかけておこなわれることを考えると、まさに今が、体制づくりに着手するタイミングとしてギリギリなのです。
いざIT部門主導での体制構築を開始しても、次に出てくる課題として、経営層やサステナビリティ部門との連携に頭を悩ませる担当者が多くいらっしゃいます。そういった方におすすめしているのが、プロジェクトを始める際にまず、CFO(Chief Financial Officer)をプロジェクトに巻き込むということです。CFOであれば、グループ連結での会計業務を担っているからこそ、制度開示の難しさや厳しさを理解しています。加えて、基幹システムをグローバルで導入した経験をもっていることも多く、新システム導入について的確な支援を期待できます。
その上で、サステナビリティ部門にも積極的に声をかけましょう。IT部門とサステナビリティ部門が気持ちからお見合いになっているケースをよく見かけます。IT部門から声をかけ、サステナビリティ担当者の社内におけるプレゼンスを高め、一緒にプロジェクトを推進する体制がつくれるとよいと思います。
また、プロジェクトメンバーには経営企画部門を巻き込むケースも多くあります。財務側と経営側をつなぐ、重要な役割を果たす存在です。特に製造業の会社の場合、経営企画部門の下にサステナビリティ部門を配置するところもあり、経営・財務・サステナビリティの一体化を強める動きも出てきています。
キーパーソンの巻き込みが完了すると、いよいよ全社へのコミュニケーションが始まりますが、ここで重要なのは、開示義務化への対応を目的に「しないこと」です。多くの会社を見てきた中で、情報開示をかろうじてクリアする体制作りをする企業でうまくいっているケースを見たことがありません。成功した会社はどこも、経営トップが経営そのものをサステナビリティにし、社会的、経済的な責任を果たすにはどうすればいいのか、という視点で語っています。