損保社長からAIスタートアップへ転身/「Cursor」によるプロダクト開発で現場を変える
GenerativeX 執行役員 CDXO 桑原茂雄さんインタビュー
「作って、見せる」ことから始まる実践知

──この連載インタビューのテーマは「手を動かすAIリーダー」なのですが、そのために1番大事なことは何でしょうか?
桑原:私はまず「小さく作ってみせる」ことがすべての出発点だと思います。AIでちょっとしたものでもいいから、とにかく自分で作ってみて、できたらそれをアウトプットとして、誰かに見せる。お客様でもいいし、社内のメンバーでもいい。エンジニアなら自作プロダクトをGitHubや公開リポジトリに上げてみる。それが1番の成長のきっかけになります。
公開すると、やっぱりフィードバックももらえるし、評価ももらえる。GitHubでLikeがついたり、他の人からコメントが来ると、純粋にうれしいですし、「もっと良いものを作ろう」とモチベーションも上がる。私も最初は「荒木社長に見せなきゃいけない」「クライアントに早く見せなければ」という緊張感があったからこそ、何とかミーティングや納期までに間に合わせるために必死で頑張った。その分、試行錯誤もするし、時には痛い目にもあう。けれども、「誰かに見せる」という機会があるから、必ずやり抜けるし、課題もたくさん出てきて、それに答えていくうちにどんどん成長できるんです。
正直、生成AIの研修を受けるだけ、動画やテキストで学ぶだけだと、「知識」としては溜まっても「生きたアプリ」や「現場で役立つもの」には絶対なりません。「作ってみて、見せて、フィードバックをもらう」──このサイクルを何度も繰り返すことが、AI時代の実践的な学びになると実感しています。
社外でも社内でも、「こんなことができるんだ」と評価してもらえる。それが働きがいにもなるし、チームや会社の価値にもなっていく。AI時代のリーダー像とは、知識を溜め込むだけじゃなく、「手を動かして、作って、見せて、また直す」──この「行動のサイクル」を止めないことだと思います。
「自分で創るAIリーダー」の時代へ──若い世代へのエール
──こうした経験を踏まえて、若い世代やこれからAI開発に取り組む人に伝えたいことは?
桑原:若い人たちには、まず「失敗を恐れず、とにかく手を動かしてほしい」と伝えたいです。私自身がエンジニア経験ゼロからスタートして、AIコーディングでどれだけ泥沼にはまっても、「作って、壊して、やり直す」を繰り返すことでコツをつかんできました。
AI時代の現場リーダーには、「頭の中で考える」だけじゃなく、「とにかく作ってみて、何度も壊して、直していく」ことが欠かせないと思っています。知識や理屈も大事ですが、「現場でどんなものが役に立つか」「ユーザーがどこで困っているか」を、自分の手を動かしながら実感する──この“試行錯誤”こそが1番の財産です。
最初は誰でも迷います。AIと会話がかみ合わなくて、夜中に頭を抱えることもある。でも、その分だけ「コツ」が体に染み込んでくる。いざ「これだ」とつかんだとき、どんどんスピードも精度も上がるようになる。今の若い人たちは、私よりずっと柔軟にツールやAIを使いこなせるはず。ぜひ「小さく試す」「壊れたら潔くやり直す」「細かく積み上げて対話する」──これを愚直に続けてほしいですね。
AIで何ができるかは、自分で「作ってみて」「見せて」「直す」サイクルの中でどんどん広がっていくと思います。どんな分野に進んでも、この経験と姿勢が新しい現場リーダー像を生み出していく──そう信じています。
明日からできる3ステップ
- まずはAI開発ツールに触れてみる
- まず小さなAIアプリを1つ作ってみる
- 社内外で誰かにデモを見せて、フィードバックをもらう
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京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)
ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...
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