「ボトムアップ型DX」で躍進する浜松倉庫 若手管理職中心で進めた“社長肝入り”の変革、その裏側を訊く
データ活用で、従来の「受け身型ビジネス」から「提案型ビジネス」に変えていく

静岡県浜松市で長らく倉庫業を営む浜松倉庫は、企業としての生き残りと地域振興への貢献を目的に大胆な企業変革に取り組んでいる。なかでも、同社のデジタル技術を活用した諸活動は「DXセレクション2024」でグランプリを受賞するなど、DXの先進事例として注目を集めている。そんな同社の取り組みの背景や意義、成果などについて、同社 代表取締役社長 中山彰人氏と、取締役 営業デジタル推進本部長 兼 経営企画室長 伊藤浩嗣氏に訊いた。
デジタルありきではない「生き残りと地域貢献」のための変革
スズキやヤマハなど、日本を代表する製造業が集積する静岡県浜松市。浜松倉庫は、この地で明治40年(1907年)から長きにわたって事業を営んできた老舗企業だ。同社は従業員125人(2025年7月時点)の中小企業でありながら、2024年3月に経済産業省が主催した「DXセレクション2024」においてグランプリを受賞したことで、DX先進企業として一躍名を知られることとなった。
倉庫業・物流業を主軸としながら、地ビールレストラン「マイン・シュロス」も運営する同社は、正社員比率85%超、平均年齢34.8歳、男女比率6:4という、物流業界では異例の従業員構成を持つ。こうした業界の常識を覆す数字の裏側には、約20年間にわたる継続的な変革の歴史があるという。同社における変革やDXのビジョンについて、同社 代表取締役社長 中山彰人氏は次のように述べる。
「弊社ではDXについて説明する際、D(デジタル)の文字を小さく、そしてX(トランスフォーメーション)の文字を大きく表記しています。このことからも分かるとおり、弊社にとって真の目的はX、つまり変革にあり、Dのデジタルは変革を実現するためのツールの1つに過ぎないのです」(中山氏)
同社の変革のスタートは、まだDXという言葉が浸透していなかった2015年にまで遡る。その目的はあくまでも「自社が持続可能な形で生き残り、地元である浜松地域の振興に貢献し続ける」ことにあった。そのために有効な手段を模索し、実行に移していく中で、たまたまデジタル技術が有効な分野に対してデジタルを積極的に導入していった結果、たまたまDX企業として脚光を浴びるようになったに過ぎないという。
なお、この「企業としての生き残り」と「地域への貢献」という目的を達成するうえで、真っ先に克服する必要があったのが、少子高齢化にともなう人材不足の問題だった。この問題に対処するために、2005年から積極的に女性社員の登用を進めて一定の成果を上げたものの、さらなる少子高齢化の加速や地方の人材不足の問題に対処するためには、やはり次の手を打つ必要があった。
「人材の採用がますます難しくなる中、事業を持続・成長させていくためには、やはり生産性を大幅に向上させるための業務改革に取り組む必要があると考えました。こうして2015年、次なる変革に着手しました」(中山氏)
白地図の上に0から線を引く、手探りな変革の裏側
この変革を推進すべく、30代の若手管理職3名を中心メンバーとした変革プロジェクトが社長である中山氏の肝入りで発足した。当時、メンバーに与えられたミッションは「10年後、20年後にこの会社が存続するために何が必要かを考えてください」というシンプルなものだけだった。この初期メンバーの1人に抜擢された取締役 営業デジタル推進本部長 兼 経営企画室長の伊藤浩嗣氏は、当時を次のように振り返る。
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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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