経産省 河﨑幸徳氏が築く中堅・中小企業DXの“礎”──ふくおかFG時代に描いた「主治医型支援」の今
「誰に相談すべきか分からない」“潜在的”DX企業を支援者とつなげるために

大企業では、DXが経営に関わる大きな施策として推進される一方、人手不足に拍車がかかる中堅・中小企業の多くは、経営さえもままならない深刻な状況である。国内企業の99%以上が中小企業で構成される日本で、どのような対策が求められるのか。この課題に本気で向き合い、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、ふくおかFG)で支援の輪を広げてきたのが河﨑幸徳氏だ。現在は経済産業省で中堅・中小企業のDXを推進するための施策を担当する同氏は、どのような思いで経済産業省に移り、どのような支援を行っているのか。
ヤクルト情シス時代に感じた中小企業デジタル化の可能性
河﨑氏は2023年に経済産業省に入省し、現在は商務情報政策局 情報技術利用促進課 地域情報化人材育成推進室長・デジタル高度化推進室長を務めている。これまでの経歴を尋ねると、企業におけるデジタル化の最前線を走り続けてきたキャリアと同氏の想いが見えてきた。
1979年にヤクルト本社に就職し、製造管理部を経て情報システム部に異動。そこでは最初に、パートナーである販売会社が利用するシステムの標準化を担った。「ヤクルトの販売会社の多くが地域の中小企業です。システムの標準化を通して、販売会社の経営者の方たちに対して業務のデジタル化を支援するようになりました」と語る。この経験を通して、中小企業のデジタル化支援という道に興味を持ったという。
より多くの中小企業のデジタル化を支援するためにはどの組織で動くべきか。河﨑氏が出した答えは「地方銀行」だった。どの中小企業にもメインバンクが必ずあることから信頼関係が構築されている上に、金融機関は他業界と比較するとデジタル化で先行しており、一定のノウハウを持つ。また取引先である中小企業がデジタル化によって本業の業績が上がれば、銀行も恩恵が得られ、互いにメリットを生み出せるのではないかと考えたという。
こうした思いを胸に、同氏は1990年に福岡銀行(後にふくおかFGの傘下となる)のシステム部に移り、2019年からついに顧客のデジタル化を支援する「デジタル化支援コンサルティング」事業を立ち上げる。若手銀行員にサイボウズの「kintone」をはじめ各種クラウドサービス(SaaS)を学んでもらい、デジタル化支援サービスを行える人材の育成・組織づくりに励んだという。
このような取り組みを推進する中で、政府と協働する機会も増え、経済産業省から声がかかった同氏。現在は企業DXを政府の立場から推進すべく、様々な施策に取り組んでいる。
DXの正しい理解も道半ば……初めの一歩もかなわない深刻な現状
「中小企業をデジタルで支援したい」という思いからここまで走ってきた河﨑氏だが、中小企業に目を向けると、多くの場合その状況は深刻である。経済産業省が2024年に公表した資料によると、そもそもDXについて「理解している」「ある程度理解している」と回答した中堅・中小企業は約半数にとどまる状況だ。実際の取り組み状況を見てみると、「デジタル化が未着手」もしくは「デジタイゼーションの段階」である中堅・中小企業が全体の約3分の2を占める。また、DXを“業務効率化やコスト削減にとどまる動き”であると考えている中堅・中小企業が多く、DXに対する正しい理解も道半ばであることが指摘されている。
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加山 恵美(カヤマ エミ)
EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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