存続危機から一転、後藤組は中堅企業の“星”に──楽することが当たり前になる「自走型全員DX」の火付け役
「会社を潰したくない」その一心で全員を巻き込んできた“力業”の正体に迫る

経済産業省が選定する「DXセレクション2025」のグランプリをはじめ、数々のDXアワードを席巻する山形県米沢市の総合建設会社「後藤組」。社内にエンジニアは一人もいないが、150名「全員DX」を掲げ、現場から3,000件を超えるアプリが誕生し、生成AI活用も本格化しつつある。その背景には、4代目社長 後藤茂之氏の強い決意と“力業”があった。
たった3年で赤字に急落された過去……「俺一人でもできる」
──後藤組は1926年創業で、来年で100周年を迎えます。
私は24歳のときに社長になりました。親父が社長になって2年で亡くなって、当時学生だったので「社長は無理です」と言ったのですが、他に誰もいないからと跡を継ぐことに。それがもう33年前のことです。
今思えば、建設業界は当時が最盛期で、そこからずっと右肩下がり。10年で、マーケット規模が6割も縮小したほどです。地域ナンバーワンの売上だった当社も例外ではなく、140億円が60億円まで下がってしまった。悩みましたね。
外部の力を借りようと、大手ゼネコンから副社長を招聘したこともあります。そしたら、豪快な経費利用で会社をボロボロにされて、3億円の赤字に……。たった3年で「会社ってこうやって潰れていくんだな」というのをまざまざと見せつけられた。でも、「たった一人の人間でこんなに会社がボロボロになるのなら、俺一人でもなんとかなるな」と覚悟が決まった瞬間でもあります。
──DXに取り組んだきっかけは何だったのでしょうか?
2019年に、ある尊敬する社長が「これからはデータドリブン経営だ」と周囲に大号令をかけたんです。それまでDXのDの字も知らなくて、「データドリブンって何だ?」と思ったんですが、やってみようかと。崇高なことは考えていません。「会社を潰したくない」それだけです。
ただ、やり始めてしばらくして、うちがすべきことは「データドリブンじゃない」と気づいたのです。データドリブンは、データを蓄積して分析して、それをもとに経営判断するということですよね。我々のビジネスはデータを集めて経営判断に使おうなんて高度なことはやっていない。それより業務を効率化したほうが手っ取り早いし、効果が大きいと思ったのです。
突然アプリ開発を命じられた社員の“重い腰”を「力業」で上げる
──「全員DX」を始めた経緯を教えてください。
もともとシステムに関することはすべて外注していました。1000万かけたシステムがまったくもって使えないなど、これまで痛い目に何度も遭ってきた。なぜそんなことが起きるかというと、ベンダーはうちの業務が分からないから、彼らの想像で作るのです。社員は社員でわがままだから「使いにくい」と言って使わなくなる。そういう失敗を何度も繰り返してきました。
そこにタイミングよく、ノーコード開発ツール「kintone」が現れて、「各部門・各課につき、何でもいいからまず1個アプリを作れ」と号令を出したのです。
──社員にアプリを作ってもらうために、最初にどんなことをしたのですか。
そもそも、社内にIT部門はおろかIT人材が一人もいなかったんです。けれども推進する人は必要だった。そこで、もともと社内で実施していた「エナジャイザー」という適性診断と、「エマジェネティックス」という最新脳科学に基づいた思考と行動特性の診断データを活用し、ポテンシャルの高い人材を抽出しました。
その結果、最もポテンシャルが高かったのが、現在DXをリードしている笹原尚貴です。当時は積算担当でしたが、彼はムダが嫌いで理詰めで物事を考え、新しい発想が次々と湧いてくるタイプ。最初は「DXなんて知りませんけど……」と言っていたけど、「大丈夫。なんとかなる」と後押ししました。
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今回の特集テーマは「“老舗”の中小企業がDX推進できたワケ──有識者・実践者から学ぶトップリーダーの覚悟」。本記事の他にも「経産省 河﨑幸徳氏が築く中堅・中小企業DXの“礎”──ふくおかFG時代に描いた「主治医型支援」の今」「「ボトムアップ型DX」で躍進する浜松倉庫 若手管理職中心で進めた“社長肝入り”の変革、その裏側を訊く」が含まれます。
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酒井 真弓(サカイ マユミ)
ノンフィクションライター。アイティメディア(株)で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle C...
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