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Legal Agent代表 朝戸統覚氏インタビュー


技術的変遷から生まれた「リーガル版Cursor」

──御社では、弁護士業務に特化したAIツールを自作していると伺いました。その開発の変遷について詳しく教えてください。

朝戸:はい、その通りです。これまでのAIツールの変遷を試した結果、たどり着いた結論です。

 まず、最初に試したのは、ChatGPTやClaudeのようなAIをブラウザで使う方法でした。しかし、弁護士業務ではWordファイルの修正作業が非常に多いのですが、AIはWordファイルを常に読んでくれるわけではありません。マークダウンではなく、法律特有の注釈などもあり、見出しの階層構造も非常に深いので毎回Wordファイルをコピペしたり、アップロードしたりする手間がかかり、非効率的でした。

 次に試したのが、Difyなどのワークフローツールです。契約書の種類ごとに複数の分岐点を持つワークフローを作り、プロンプトを大量に配置して自動レビューを試みました。しかし、法律業務の複雑性には対応できるほどの柔軟性がなく、決められたワークフローしか実行できないため、ここにも限界を感じました。

 このDifyを捨て、次に見えてきたのが、Googleの「Gemini 2.5 Pro」の登場でした。これは革命的でした。Geminiは、長いコンテキストウィンドウと、高い日本語能力、そしてエージェント的な推論能力を備えています。これにより、Difyで苦労して作った200種類ものプロンプトが全て不要になり、Gemini 2.5 Proに直接投げれば良いという世界が到来しました。Gemini 2.5 Proの登場によって、ワークフローからより柔軟なエージェントへの移行が可能になったのです。

──現在開発しているツールは、どのようなものですか?

朝戸:次に試したのは、エンジニア向けのAI開発ツール「Cursor」です。Cursorは、ソースコードをローカルで参照しながらAIと開発を進めるツールで、弁護士が法律文書を参照しながらAIに指示を出すという状況と似ています。しかし、Cursorはどちらかといえば、エンジニア向けのツールであり、弁護士業務には特化していません。また、Cursorは、設計上、コンテキストウィンドウに無駄な情報が大量に含まれてしまい、LLMの性能を最大限に引き出せていないという課題もありました。

 そこでたどり着いたのが、自前のリーガル用のツールを、自分たちで開発するという選択、すなわち、「リーガル版Cursor」を自作するという結論です。弁護士業務に特化し、WordファイルやPDF、エクセル、メール、チャット、電話、オンラインMTGなどの情報を自動的にナレッジとして取り込む社内ツールとなります。このツールは、Wordファイルの隣にAIが常にいるような体験を提供し、弁護士がAIに直接、業務に合わせた指示を出すことを可能にします。

 このツールは、Wordファイルに潜む技術的な課題も解決します。WordファイルはXMLという冗長かつ複雑な言語で書かれており、AIが読むには非常に手間がかかります。我々のツールは、このWordファイルの中の必要な部分だけを抽出してAIに渡すことで、WordファイルをAIが読みやすくし、LLMの性能を最大限に引き出す工夫をしています。

「弁護士もクライアントもハッピー」になる

──それは、あくまで社内利用のツールなのですか?

朝戸:現時点では社内利用のツールですが、将来的には、社内ツールをプロダクトとして提供することを検討しています。私のクライアントの皆様から、LegalAgentで利用している社内ツールをお見せすると、「是非使いたい」というお声をいただくことが多いためです。

 もっとも、生成AIの特性上、どうしても嘘をつく可能性をゼロにできないことから、完璧なクオリティのプロダクトを外販するのは難易度が非常に高いです。そのような点をしっかり理解していただけるのであれば、是非、LegalAgentの社内ツールをご利用いただきたいと思っています。「次世代の法務業務」が体験できることを、お約束します。

──今後の展望について教えてください。

朝戸:今後、小規模な法律事務所を、グループ事務所として迎え入れる「ロールアップ戦略」を進めていきます。優秀なアソシエイト弁護士は、4大法律事務所に流れてしまうのが現状ですが、当社のツールを使えば、中小規模の事務所でもアソシエイトなしで事業を拡大できます。

 弁護士事務所のパートナーたちは、それぞれが専門分野と豊富なクライアントを持っています。私たちは、彼らが持つ「ベテランスキル」と我々のツールを組み合わせることで、彼らの売上を10倍にすることを目指しています。AIを活用すれば、人力に頼ることなく事務所をスケールさせることができ、弁護士はより高い報酬を得られるようになります。

 また、社内ツールのプロダクト展開についても、積極的に進めていきます。LegalAgentは、法務の未来を実現するために事業を行っており、法務業務そのものを根本的に変革していきたいと考えています。そのためには、LegalAgentだけではなく、全ての法務パーソンの生産性を上げる必要があると考えており、社内ツールをプロダクトとして提供することにより、法務にかかわる方全員の力になりたいと考えています。

 これは、弁護士もクライアントも、全員がハッピーになる世界です。弁護士には適切な報酬が支払われ、クライアントは、非常に高いクオリティのサービスを、速く、適正な価格で受けられる。私たちは、こうした「弁護士もクライアントもハッピー」な世界を創るためのプロフェッショナルとして、法務サービスの革新を進めていきます。

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この記事の著者

京部康男 (編集部)(キョウベヤスオ)

ライター兼エディター。翔泳社EnterpriseZineには業務委託として関わる。翔泳社在籍時には各種イベントの立ち上げやメディア、書籍、イベントに関わってきた。現在はフリーランスとして、エンタープライズIT、行政情報IT関連、企業のWeb記事作成、企業出版支援などを行う。Mail : k...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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