“触れない”基幹系データをAIへ レガシーを残しながらも「次世代データ連携基盤」を構築する術とは
複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:セゾンテクノロジーの視点
セブン銀行もiPaaSを活用 わずか1ヵ月で“生成AI”サービスを開発
岡本:金融機関では、どのようにiPaaSを活用されているのでしょうか。
福泊:弊社のユーザーであるセブン銀行様では、勘定系システムや会計システムのデータを周辺システムと連携させるためにHULFT Squareを導入いただきました。iPaaSを利用することで、さまざまなデータソースから取得したデータを他システムと容易に連携できるようになり、データやAIの活用が一気に加速しています。

岡本:iPaaSによって各システムと連携できる環境を構築後、AIをどのように活用しているのですか。
福泊:セブン銀行様の業務現場では元々、口座情報などのデータを「見たいときにスグに確認したい」という要望がありました。しかし、そのための仕組みをBIツールなどで作り込むとなると多くの手間や時間がかかってしまい、タイムリーなデータ活用になかなか踏み出せなかったといいます。そこでHULFT Squareを介して基幹系システムと生成AIサービスをつなぎ、「どのデータをどのような切り口や形式で可視化したいか」を自然言語で入力するだけで、AIが該当するデータを自動的に収集・分析し、望み通りのグラフやチャートの形にまとめてくれるような仕組みを構築しています。
岡本:まさにミッションクリティカルなデータをAIに活用できている取り組みですね。ちなみに、この仕組みの構築にはどのくらいの時間を要したのでしょうか。
福泊:開発自体は約1ヵ月で終わり、その後2ヵ月ほどかけて改善しています。
岡本:実質1ヵ月で開発されたとは、スピード感のある取り組みですね。AIの活用においては、スピードが重要だとよく言われますが、iPaaSはその点においても有用なのですね。
福泊:さまざまなデータソースと連携するためのコネクタやテンプレートを用意していることはもちろん、弊社でも数多くのナレッジを蓄積してきたこともあり、これだけのスピード感で実現できたのだと思います。
データ連携が欠かせない時代だからこそ、「安定稼働」がより重要に
岡本:金融システムは何より安定性や堅牢性が重要視されますから、iPaaSのようなデータ連携基盤はもちろん、周辺システムにも高い可用性が求められますね。
福泊:その通りです。そのため弊社では以前から、HULFTやEAI製品「DataSpider Servista」などの自社製品をサイオステクノロジー社のクラスターソフトウェア製品「LifeKeeper」で保護することで、可用性を担保してきました。特に弊社の製品は金融機関の勘定系など、ミッションクリティカルなシステムのファイル連携を担っていますから、やはりLifeKeeperのような製品を活用して可用性を確保することは欠かせません。
岡本:そのような仕組みは、今後金融機関のシステムがクラウドシフトを進めていき、iPaaSの利用が浸透していく中でも必要とされるものなのでしょうか。
福泊:いわゆるクラウドネイティブなシステムでは、クラウドベンダーが提供するマネージドサービスを用いて可用性を確保する方向性に進むと思います。その一方で、オンプレミスと同じようにプライベートクラウド上で独自にサーバーを構築し、LifeKeeperによって可用性を確保するような方法は、これからも絶対になくならないでしょう。
たしかにマネージドサービスやSaaSを組み合わせることで、迅速かつ柔軟にシステムを構築するというトレンドは今後も続くでしょうが、その企業独自の“強み”を支えているシステムを作り込んでいくニーズは今後も高いままだと思います。そのような領域ではオンプレミスやクラウドを問わず、今後もLifeKeeperなどで可用性を確保するという方法は変わらないはずです。
岡本:ありがとうございます。では、最後に今後iPaaSが普及することによって、企業はどのような恩恵を受けられるようになるのか教えてください。
福泊:iPaaSを活用することで、AIで活用したいデータをさまざまなシステムから素早く取得できるようになるため、AIによるデータ活用の仮説・検証サイクルをより早く回せるようになります。これによって企業は、データ活用やAI活用の高度化を迅速に進められるようになり、ひいては競合他社との差別化につながるでしょう。そして、こうした施策をスムーズに進めるためには、多種多様なデータソースの配置や連携をグランドデザインから考え、管理するための「データマネジメント」のような取り組みも欠かせません。その実現に向けた第一歩として、iPaaSはとても適したソリューションとなるでしょう。

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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:サイオステクノロジー株式会社
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