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金融機関は紙・Excel文化から脱却できるか? 地銀や信金も「データ活用」「内製化」に注視

複雑化する金融システムの課題と対策──4社の視点から “最適解”を探る:ウイングアーク1stの視点

 業務効率化やサービス向上に向けて「データ活用」に取り組む金融機関が増えてきた一方、業界特有の厳しいセキュリティやガバナンス要件を前に二の足を踏む金融機関もまだまだ多い。その中、金融機関に対して積極的にソリューションを展開しているのがウイングアーク1stだ。同社の金融ビジネスを率いる加茂正孝氏に、金融業界が抱えているニーズや課題について、EnterpriseZine編集長の岡本が聞いた。

厳格な要件に悩む金融機関 デジタル化で二の足を踏む状況も

岡本(EnterpriseZine編集長):現在ウイングアーク1stの金融ビジネスを率いておられますが、それまではユーザーサイドで金融業界に従事されていたのですね。

加茂正孝氏(以下、加茂):はい、新卒で信用金庫に就職すると、システム部や営業推進部で13年間ほど働きました。その後、地方銀行に転職してからは、投資信託モデル店舗や生命保険モデル店舗など、いくつかの“モデル店舗”を立ち上げて支店長を務め、本部ではFintech(フィンテック)の企画業務を担当した経験もあります。その後、縁あってウイングアーク1stに移り、現在6年目を迎えます。

ウイングアーク1st株式会社 事業戦略本部・金融DX企画部 部長 加茂正孝氏
ウイングアーク1st株式会社 事業戦略本部・金融DX企画部 部長 加茂正孝氏

 今は、金融DX企画部という部署にいるのですが、メンバーは全員が金融機関の出身者です。主に金融機関のお客様に対して、当社のさまざまな製品・ソリューションを提案しています。

岡本:これまで一貫して、金融関連のお仕事に深く携わってこられたのですね。そんなご経験から、金融業界におけるITの動向や変遷をどのように見ていますか。

加茂:大小さまざまな規模の金融機関とお付き合いがあるのですが、総じてレガシーシステムが多く残っている印象は強いですね。紙や手書き、ハンコの文化も根強く残っています。以前よりもペーパーレス化はある程度進みましたが、法規制の影響もあってデジタル化が進まず、結果的に業務効率も思うように上がらないという課題を抱える金融機関は多いでしょう。

岡本:DXの大号令がかかっても、なかなかデジタル化が進みづらい業種ですね。一方で、最近はメガバンクをはじめ、クラウド環境やSaaSを積極的に利用する金融機関も増えているように感じます。

加茂:たしかに一部の業務ではクラウドの導入などが進んでいます。しかし、監督官庁からセキュリティ対策や個人情報保護に関する厳格なルールが課せられていることもあり、メリットは理解されつつも、一気に導入が進まないのが実情です。たとえば、当社の製品にはオンプレミス版とクラウド版の両方を用意しているのですが、金融機関の導入においては約9割がオンプレミス版です。

 万が一、個人情報流出事故を起こしてしまった際のダメージやペナルティを考慮すると、どうしても先進テクノロジーの導入には及び腰になってしまいます。当社では、データをマスキング処理するようなソリューションも提案しますが、根本的な不安を払拭するには国による規制緩和などが必要だと思います。

データ活用は「脱Excel」から 経営層の期待にも応えるために

岡本:現在、どのくらいの金融機関がウイングアーク1stの製品を導入されているのでしょうか。

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部 編集長 岡本拓也
株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部 編集長 岡本拓也

加茂:元々、都市銀行のお客様は多かったのですが、現在は地方銀行への提案に力を入れており、既に全国46.4%の地方銀行にBIダッシュボード「MotionBoard」を導入いただいています。最近では、信用金庫からの引き合いも増えています。

岡本:大規模な金融機関から導入が進んでいき、現在では地方銀行や信用金庫にまで「データ活用」のニーズが広がっている状況なのですね。貴社には、どのような相談が寄せられているのでしょうか。

加茂:最も多いのが「業績向上のためのデータ活用」と「脱Excel」の2つです。前者については、CRMやSFAなどのシステムに蓄積されたデータを有効活用し、収益を上げたいという経営層からも声が寄せられています。こうしたニーズに対しては、MotionBoardにデータを集約させ、ダッシュボード画面で分かりやすく可視化することでお応えできます。

 また現在多くの金融機関では、経営層に上げる報告書を作成するため、本部がExcelのフォーマットを作り、それを支店に配って記入してもらい、返却されたものを集計して報告書を作成する……という手順を踏んでいます。この一連のExcelを用いた作業には膨大な時間と手間がかかるのですが、これをMotionBoardに直接入力できるようにすれば、リアルタイムなデータを短時間で集められるだけでなく、レポートの作成も自動化されるため、業務効率化とデータ利活用促進の両面で大きな効果が見込めます。

岡本:多くの人が納得できる成果を上げられそうですね。MotionBoard以外では、どのような製品が導入されているのでしょうか。

加茂:電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」をMotionBoardと組み合わせてお使いいただくケースも非常に多いですね。たとえば紙の帳票をinvoiceAgentで電子化し、その内容をMotionBoardで集計・可視化するような事例が数多くあります。両製品ともローコードツールとしての機能を備えているため、システムの構築を外部に依頼することなく内製化できます。こうした“データ活用を内製化”するためのツールとしても、製品を導入いただくケースが多くなりました。

妥協できない可用性は「LifeKeeper」で担保

岡本:金融機関においても「システム内製化」の機運が高まっているのですね。

加茂:たとえば、とある金融機関では、投資信託の紙の帳票をinvoiceAgentが提供する「AI OCR」機能で電子化し、それをinvoiceAgentでチェック・修正を施した上でMotionBoardでモニタリングし、システムに同期する仕組みを内製開発されています。同様のシステム開発を外部委託すると多額のコストが必要ですが、すべて内製化することで大幅にコストを削減できました。

岡本:電子帳票システムやBIなどが連携して業務プロセスを担うようになると、高い可用性を担保する必要がありますよね。金融機関の業務ともなれば、なおさらです。

加茂:前述の例では、invoiceAgentとMotionBoardが停止してしまうと、お客様からの買い付け依頼を当日中に処理できなくなってしまいます。これはいわゆる「証券事故」に該当し、金融機関として重いペナルティを課せられる重大インシデントです。単に行内でデータを分析・可視化するだけならまだしも、お客様の取引に影響を及ぼすような業務にまで活用するとなれば、やはり可用性の担保は欠かせません。

岡本:そうしたニーズに応えるため、サイオステクノロジーのHAクラスターソフトウェア「LifeKeeper」がinvoiceAgentをサポートしていますね。

加茂:2024年10月より、invoiceAgentとLifeKeeperを組み合わせた構成をサイオステクノロジーと正式にサポートしています。これにより万が一、invoiceAgentで構築した電子帳票システムがダウンしてしまったとしても、LifeKeeperによって素早く待機系にフェイルオーバーさせることができ、システムダウンの影響を最小限に留めることができます。帳票基盤ソリューション「SVF」も、2023年7月からLifeKeeperによってサポートされており、多くの金融機関で利用されています。

岡本:LifeKeeperによる冗長構成は、金融機関のユーザーからどのように評価されていますか。

加茂:機能や実績はもちろんのこと、多くのお客様がベンダー同士の連携の有無を非常に気にされています。その点、当社製品とLifeKeeperの組み合わせは、サイオステクノロジーと事前検証して正式にサポートしていますし、連携を実装するために必要な技術情報も公式ドキュメントとして公開しているため、安心してご利用いただいています。

AIを取り込み、さらなる現場ニーズに応えていく

岡本:現在、生成AIをはじめとしたAIが急速に浸透していますね。金融業界における関心も高いと感じますが、この潮流をどのように捉えていますか。

加茂:今後、より深刻化する“人手不足”に対処するためにも、多くの金融機関がAIに大きな期待をかけていますし、既に一部では導入が始まっています。一方でクラウドと同じく、セキュリティやガバナンスの厳しい要件を前に、二の足を踏む金融機関が多いのも事実です。しかし、AIは確実に業務効率化の効果が見込めるだけでなく、データから新たな知見を引き出せるなど、データ活用の可能性も大きく広がりますから、積極的に取り組んでいただきたいですね。

岡本:御社の製品でも、AIを活用されているのでしょうか。

加茂:次期バージョンのMotionBoardでは生成AIを大々的に取り込み、自然言語による指示で画面を開発できる機能を実装予定です。実は、既にいくつかの銀行にはプロトタイプ版を試していただいており、好評を博しています。

岡本:先ほどお話しいただいた内製化のニーズに応えていく上でも、大変有用な機能になりそうですね。

加茂:はい、AIで強化された製品を導入・活用していく上でも、われわれのチームには実際に金融機関の現場で働いていたメンバーが揃っていますから、現場の課題や困りごとを深く理解できます。どうしてもベンダーはシステムの観点からモノを作ってしまうため、現場のニーズと齟齬が生じてしまいます。だからこそ私たちは、金融機関での現場経験を活かしながら、現場のニーズに即したシステムを実現していきたいですね。

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