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ITの“自前運用”を守ってきた福岡ひびき信用金庫、直面した脆弱性リスクとセキュリティ強化の道程を語る

リソース限られる中小規模組織ながらも、常に“最新”への挑戦を支えてきた想いとは?

セキュリティ人材の素質は意外なところから、全社的なリテラシー底上げも推進中

 セキュリティ人材の採用については、特に専門の採用ルートがあるわけではないため、まずは総合職で入庫して営業を経験するところから始まる。一般的に、信用金庫でITの専門人材を募集しているケースはあまりない。入庫後に、適性や本人の希望を踏まえてシステムやセキュリティの分野へと配属される流れのようだ。一見すると非効率に思えるかもしれないが、これは重要な意味を持つ。

 「ITの専門人材を採用するとなれば、IT業界の水準を意識した環境で継続的に雇用する必要が出てきます。しかし、地方の小さな組織にそれは難しいですよね。また、金融機関のシステムというのは要件や仕組みが独特で、業務の内容や意味がわからなければ扱うのが難しいという側面もあります」(吉田氏)

 現在、同庫のセキュリティ関連業務は、吉田氏と宮地氏を中心とした少数精鋭のチームで運営されており、新メンバー数名を現在進行中で育成中だという。人材育成においては実務を通じた適性判断を重視しており、インフラ管理や開発業務などをひと通り経験させたうえで、適性を見ながらアサインを行っている。

 吉田氏は、育成の中で発見した興味深い点として、パソコンへの親しみやすさと実際の適性が必ずしも一致しないということを話す。元々パソコンが好きな人の適性が案外低かったり、逆に自分のパソコンを持ったことがない人のほうが適性があったり……。つまり、セキュリティ人材というのはどこに潜んでいるかわからないもので、先入観にとらわれない人材評価が重要だということに気付いたのだという。

 全社的なセキュリティリテラシーの向上にも取り組んでいる。2026年4月からはITパスポートの資格取得を昇格要件に組み込み、経営陣にも情報セキュリティマネジメント試験の取得を促している。役員の中にはすでに合格者がいるようだ。

 また、地域金融機関ということもあり、地域への貢献意識も強い。吉田氏は、「『九州はセキュリティに関して遅れている』と言われることがある」と自身の経験を踏まえつつも、レベルの底上げに向け2023年から北部九州エリアの13信用金庫と連携したサイバー訓練を実施していると話した。

 「我々が地域のお客様に対して十分にセキュリティのアドバイスや支援ができるかというと、まだそこまでのレベルには達していないと思っています。ただ、やはり地域金融機関としては責任があります。ですから、他の金融機関の皆さんと協力したり、ベンダーの皆さんの力もお借りしたりしながら底上げを図っていこうという想いです」(吉田氏)

 同庫の取り組みは、地域金融機関におけるセキュリティ強化の一つのモデルケースとも言える。新しい情報に常に敏感でありながら、得た知識や技術を自前運用に活かしていくバランス感覚、そしてビジネス部門の人材をIT人材に育成するアプローチを組織内で作り上げている点は参考になる。

 宮地氏は、「セキュリティを取り巻く動向は日々変わるため、情報収集や勉強は常に必要だ。モチベーションを保ちながらこれからも継続していかなければならない」と語る。

 吉田氏は「常に最新を目指したい」としたうえで、「新しい情報をいかにして入手するかも大切。だからこそ、技術やソリューションの提案をいつでも歓迎している。今後もこの姿勢は続けていきたいし、福岡ひびき信用金庫の想いや取り組みが世間にもっと認知されることで、情報収集の機会がさらに増えると嬉しい」とコメントした。

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森 英信(モリ ヒデノブ)

就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務とWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業した。編集プロダクション業務では、日本語と英語でのテック関連事例や海外スタートアップのインタビュー、イベントレポートなどの企画・取材・執筆・...

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