今後は人材育成にも注力 「デジタル×〇〇」両方を担える存在へ
中国銀行はデータとAIを活用し、リアルチャネル(営業店など)とデジタルチャネル(アプリ、E-mailなど)の両方で営業DXを推進する方針だ。「目指す姿は、“仕組み×デジタル×ヒト”のかけあわせにより、顧客の期待を超えるパートナーになることだ」と山縣氏は語る。それにともない、2024年6月にはリアルとデジタル両方のチャネルで顧客への価値提供の高度化を図るべく本部組織の再編が行われるなど、着実な取り組みがなされている。
なかでも、新基盤を用いたリアルチャネルでのデータ活用のユースケースとしては、若手担当者の提案力向上などが挙げられるという。
「たとえば、顧客が事業承継(経営者が事業を次世代へ引き継ぐこと)をしたいという課題を抱えていたとき、ベテラン営業マンのAさんはこれまでの勘や経験、ノウハウを生かして顧客が求めている提案ができるかもしれません。しかし若手のBさんは、その提案が思いつかない可能性もあります。
今回の基盤導入・活用により、Bさんのような社員でも顧客のニーズに気づけるようになる可能性が高まります。具体的には、営業支援システム内で『事業承継の提案はこのツールを利用する』といった具体的なメッセージや提案内容を提示することで、営業担当者の目利き力とデータに基づく顧客理解の高度化を図れます」(山縣氏)
アプリやE-mail、ビジネスポータルなどを活用するデジタルチャネルにおいては、パーソナライズ配信による顧客体験の革新を目指すという。従来、非対面で商品やサービスを勧める際は、性別や取引量などの大まかな切り口でしか顧客アプローチができていなかった。だが、今回のデータ基盤導入で顧客をより細かくセグメントすることで、顧客ごとに最適な商品やサービスを、E-mailや中国銀行が提供する「中銀アプリ」のポップアップなどから提供できるようになる。
また、「今回のSAS Viya導入は、単なる分析基盤導入の枠には収まらない」と山縣氏。この基盤導入をきっかけに、データ人材を育てることにもより注力すると語った。SAS 代表取締役社長の手島主税氏も、日本の課題として「データを扱える人材が少ない」点を挙げる。SASとしても、システム導入を越えた人的資本への支援を行う方針だという。
山縣氏は、同行のデジタル人材育成におけるゴールとして「デジタルゴリラを育てたい」と語る。ここでいうゴリラとは、「営業センスのある人間」を指す。同氏によれば、現状デジタル技術は扱えるが営業感覚が今ひとつな社員、あるいは営業に長けているがデジタルを活用する感覚がない社員、といったどちらか1つのスキルに偏った社員が多いという。「デジタルと営業、両方の感覚を持ち合わせた人材を育成したい」と同氏は意気込む。プログラムを自分で書くことはできなくとも、「デジタルを活用すれば、〇〇という新規提案が可能になる」と発想できる人材を、本部の営業企画担当者を含めて育てていきたいとした。
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