セキュリティの“侵害封じ込め”プラットフォームを提供するIllumio(イルミオ)は2025年11月6日、年次フラッグシップイベントの日本版「Illumio World Tour 2025 Tokyo」の開催に合わせて記者説明会を行った。
ワールドツアーの日本開催は今年が初めてとなるIllumio。本国から創業者兼 CEOのアンドリュー・ルービン氏も来日した。ルービン氏は「2000年代は、侵入をいかに許さないかが重視される『予防の時代』だった。そして2010年代に入ってからは、EDRなどを導入して脅威をいち早く見つけ出す『検知の時代』が続いてきた」と話す。しかし、そのセキュリティモデルは今や機能しなくなっていると指摘する。
Andrew Rubin(アンドリュー・ルービン)氏
「サイバーセキュリティへの支出は世界中で年々増え続けていますが、サイバー犯罪による損失額はまったく減少していません。それどころか、むしろ年々右肩上がりで上昇しています。これは、防御側がセキュリティに多額のコストを費やしているものの、上手く機能していないことを意味します」(ルービン氏)

そこで同氏は、新たに「封じ込めの時代」へとシフトすることが必要だと訴える。コロナ禍の前後で、セキュリティの潮流は境界防御(予防の時代)からゼロトラスト(検知の時代)へと変化し、EDRやXDR、SIEMの導入が日本でも急速に進んだ。しかし攻撃者は、AIを用いて攻撃を大規模化させたり、GPTやディープフェイクなどを悪用した巧妙な手口を新たに生み出したりと、防御側の対応を上回る速度で進化を続けている。これでは、もはや侵入を完全に阻止することは不可能だ。そこで、「被害を未然に防ぐ」という考え方から、「いかに被害を阻止するか、抑えるか」という考え方に転換すべきだというのが同氏の主張だ。これが「封じ込めの時代」が意味するところである。

Illumioはこうした変化に対し、自社が提供するプラットフォームを「侵害封じ込めプラットフォーム」と称する。それを体現するのが、同社の象徴的な技術ともいえる「AI セキュリティグラフ」だ。「ワークロード、フロー、依存関係を継続的にマッピングする、あらゆるネットワークの神経系ともいえるテクノロジー」だと同社は説明する。

また、“装飾(デコレーティング)”という機能により、ネットワークを可視化するだけでなく、通信が行われた時刻や時間、通信内容などといった詳細情報をグラフ上に紐づけ、コンテキストを把握できるという。グラフは単に静的なマッピングやログの山を示すだけでなく、AIによってリアルタイムかつ動的な情報を可視化する。昨今激化するラテラルムーブメントの兆候をいち早く発見できると同社はアピールしている。
この技術を搭載した新ソリューションが、今年の7月末より提供開始されている「Illumio Insights」だ。AI セキュリティグラフを活用して脅威を検知するソリューションだが、ルービン氏は「既存のEDRやNDR、CDRとは異なる概念のソリューションだ」と話す。その特徴は、1つのソリューションでデータセンターからクライアントのPCまで、あらゆる環境とネットワークを可視化・検知できる点にある。もちろん、ハイブリッド/マルチクラウド環境にも対応している。
Illumio Insightsの提供開始により、同社はこれまでの「マイクロセグメンテーションのベンダー」という立ち位置から、セキュリティベンダーとしての存在感を強めていくだろう。
日本での事業成長も好調だ。日本法人のカントリーマネージャーを務める江尾浩昌氏は、2026年度第3四半期の業績を発表した。前年比で事業規模は100%増、新規顧客は200%増、さらには業界別で見ると、金融・保険・証券の顧客が100%増、製造業は200%増と、かなりの成長速度である。背景には、直近で頻発しているランサムウェア被害や、マスメディアでセキュリティインシデントのニュースが相次いで報道されていることもあるのではないかと述べた。
江尾浩昌氏
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティ、AI、データ関連技術や、それらに関する国内外のルールメイキング動向を発信するほか、テクノロジーを活用した業務・ビジネスモデル変革に携わる方に向けた情報も追っています。
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