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ソブリンクラウドは“自社”に本当に必要か?「宝の持ち腐れ」にしない判断ポイントと情シスに課された使命

従来のクラウドよりコスト高? どこまでソブリンクラウドに乗せるべき? 専門家が解説

ソブリンAIの台頭で国産LLMに光も──「主権」を確保するための戦略

 また、近年ソブリンクラウドの枠を超えて新たに議論の的となっているのが「ソブリンAI」だ。海外の事業者が提供する最先端かつ高性能なAIモデルは、その性能を鑑みると比較的安価に利用でき、日本企業のDX推進にいまや不可欠な存在となっている。しかしその一方で、国家や企業の根幹に関わる領域をすべて海外のAIモデルに依存することには大きなリスクがともなう

 なかでも懸念されるのが、出力結果に含まれる「文化的・政治的バイアス」だと平井氏。「SNSと同様に、AIも日々社会的な影響力を増しています。特に若年層がAIの出力を過度に信頼した場合、日本の文化的・政治的価値観と根本的に異なる思想が中長期的に影響を及ぼす恐れがあります」と警鐘を鳴らす。

 国の成長・競争領域においても「主権の確保」は急務である。AI・半導体や量子、バイオなど、日本成長戦略の17戦略分野に代表されるような投資領域で海外のAIモデルに依存し続けた場合、国を挙げて蓄積してきた貴重な研究開発ノウハウが海外に流出するリスクも考えられる。また、将来的なAIサービス提供価格の大幅値上げやサービス供給停止に直面した場合、国の競争領域そのものが立ち行かなくなる恐れもあるだろう。

 こうしたリスクを回避するためにも、ソブリンAIの存在が今後ますます重要性を増してくるという。平井氏は、クラウドがあくまでも“ツール”の延長線上である一方、AIは“頭脳”の一端を担うことができる存在であることを強調し、「日本の文化や価値観を踏まえた国産LLMによるソブリンAIの必要性が急速に高まっています」と指摘した。

 ソブリンAIも今後少しずつ日本市場に浸透していくとみられるが、技術に対する課題も散見される。その1つが、グローバルのパブリッククラウド上で急速に進化する最新のAI機能に対し、ソブリン環境では技術の恩恵を受けるまでにタイムラグが生じるのではないかという懸念だ。主権を維持しつつイノベーションのスピードを落とさないための戦略について、宮村氏は次のように提言する。

 「すべての領域でソブリンAIを採用しようとすると、コストがかかりイノベーションの速度も落ちてしまいます。国家や企業の競争力に直結する機微な領域と、最新技術を積極的に取り入れる領域を明確に切り分け、複数のAIモデルを柔軟に使い分けるハイブリッドな運用体制を描くことが、今後より重要になっていくと考えられます」(宮村氏)

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この記事の著者

吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)

早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

竹村 美沙希(編集部)(タケムラ ミサキ)

株式会社翔泳社 EnterpriseZine編集部

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