50周年を迎えたSAS Institute──CEOグッドナイト博士が築き上げたSASソフトウェアの基礎と文化
SAS Innovate 2026 in Dallas 現地レポート Vol.2
データテック企業の古豪であるSAS Instituteは、2026年で創業50周年を迎えた。ソフトウェア業界全体の中でもかなりの歴史を誇る企業である。当時の共同創業者であり、今なおCEOとして同社を牽引するジム・グッドナイト博士が、年次フラッグシップイベント「SAS Innovate 2026」にて、この節目に創業時とこれまでの歩みを振り返った。1976年、SAS Instituteは米国ノースカロライナで歴史の扉を開いた。
SAS言語はどうやって誕生したのか?
ブライアン・ハリス氏(上級副社長・CTO):どんな企業でも50年続くというのは驚くべきマイルストーンですが、テクノロジー企業としては特に稀有なことだと思います。博士は、私たちが今日「SAS言語」と呼んでいるものの基礎を築きました。
ジム・グッドナイト博士(共同創業者・CEO):厳密には、SAS言語の本当の基礎を築いたのはジェームズ・バー(アンソニー・ジェームズ・バー氏)という男だったのですが、私は当時の彼の仕事に魅せられたんです。
当時のプログラム変換のルーチンというのは、インタプリター型が一般的でしたし、私もそうしていました。しかし、彼はコンパイル型を先駆けて実践していたんです。それがSAS言語のもとになりました。私はすぐにそれを気に入り、自分が取り組んできたものをどんどんSASに統合していくことにしたのです。最終的には、ジェームズ・バーがデータセット部分を、私がプロシージャ部分を担当して、SASソフトウェアを開発していきました。
ハリス氏:そうして驚くほどシンプルな言語が出来上がったわけですね。では、なぜ1976年にSAS Instituteを法人として立ち上げることになったのでしょうか。
グッドナイト博士:その前年、ジェームズ・バーが私をアボット・ラボラトリーズ(米国の大手ヘルスケア企業)との会合に連れて行ってくれたんです。そこで同社の皆さんと会い、私たちの取り組みを見せました。この出来事をきっかけに、誰にでも門戸を開いたSASのユーザーミーティングが定期的な催しとしてスタートしました。
最初のユーザーミーティングのことをよく覚えています。最初の開催地はフロリダ州のキシミーでした。開催してみると、なんと350人もの人が集まってくれました。彼ら彼女らと意見を交わし、我々の取り組みを紹介したとき、確信したのです。自分たちが持っているものの価値を……。そして、大学を離れて4人のメンバーで会社を立ち上げる決意をしました。
1980年代初頭、「色々な環境で動作するソフトウェア」が必要になった時代
ハリス氏:博士は、パンチカードの時代から今日の量子コンピューターに至るまで、本当にあらゆる進化の過程を見てこられましたよね。そこで、1980年代初頭を振り返ってみましょう。コンピューターのプラットフォームが多様化し、社会に普及し始めた時代です。
当時、SASは「SASがあらゆるコンピューター環境で動作するためには、どうすればよいか」という課題に直面しました。そこで、博士たちはマルチベンダーアーキテクチャ(MVA)と呼ばれるものを先駆けて開発しましたよね。これはソフトウェアにおける大きな転換でした。「Javaで1回書けばどの環境でも動く」という概念が登場するより10年も前のことです。このイノベーションについて、当時のことを教えていただけますか。
グッドナイト博士:メインフレームの時代ですね。私たちも、当時160万ドルもした「IBM System/370 Model 168」という巨大なコンピューターを使っていました。毎秒約300万命令(2.5~3.5MIPS)を実行できるコンピューターでした。
ハリス氏:当時としてはすごい数字ですよね。
グッドナイト氏:そうですね。そんな具合に皆がメインフレームを使う時代だったわけですが、それを「ミニコンピューターでも動かしたい」というニーズが出始めたのが、ちょうどこの頃でした。1978年にディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)が最初のVAXコンピューターを販売し、そこから80年代の初頭を迎える頃には、ミニコンピューターの需要がどんどん高まっていったんです。
さらに、1981年にはIBMがPCを発売しました。すると今度は、「PCでも動くようにしてほしい」という要望も出てきました。これはとても難しいことです。当時のマシンはまだ16bitですから、効率性を極限まで高める必要があります。しかし、新しいコンピューターが登場するたびにSASを書き直しているようでは、あまりにも効率が悪すぎますよね。
ハリス氏:どうやって解決したのですか?
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- この記事の著者
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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