50周年を迎えたSAS Institute──CEOグッドナイト博士が築き上げたSASソフトウェアの基礎と文化
SAS Innovate 2026 in Dallas 現地レポート Vol.2
当時生み出したマルチベンダーアーキテクチャが、量子の時代にも活きている
グッドナイト博士:私たちは、オペレーティングシステムの上に一層のレイヤーを設け、オペレーティングシステムと直接対話する必要がない仕組みを考えました。新たに敷いた抽象化レイヤーとのみ対話すればよいわけです。いわゆる、SASソフトウェアのC言語で書かれている部分がその層ですね。
ハリス氏:そうして生まれたMVAが、今日でも大きな意味を持ち続けているわけですね。ちょうど数ヵ月前、我々はSASソフトウェアのパフォーマンスについてベンチマークを行い、競合他社の製品と比較してみました。その結果、SASのモデリングや技術の多くが、競合と比較して平均で約30倍速いことがわかりました。博士が1985年に「C言語へ移行する」という決断を下し、マルチベンダーアーキテクチャを先駆けて開発したからこそ、今日の優れた結果があります。そして、当時礎を築いたイノベーションは、今もなお進化し続けています。
グッドナイト博士:いつの時代も、SASには優秀な技術者たちがいます。20年ほど前には、マルチコアへの移行も行いました。当時、バッチ処理に18時間かかっていたシンガポールのある銀行の相談に乗ったのですが、我々はそのバッチ処理の中身を分解して8つのマシンに分散させ、処理時間をわずか15分に短縮しました。
ハリス氏:MVA戦略は、今日のSASにも活きています。SAS Viyaのために構築したマルチクラウドアーキテクチャは、その最たる例です。すべてのSAS Viyaコードは、クラウドネイティブな形式で各クラウドプロバイダーのサービスにマッピングされます。
そして量子コンピューティングにおいても、我々はすべての量子シミュレーターに対応した抽象化レイヤーを構築しており、ユーザーがSASコードやPythonを使ってCPU、GPU、あるいは将来的なQPU(量子プロセッサ)と対話できるようにしています。博士たちが1980年代に作ったアーキテクチャの設計パターンが、量子という新たな分野でも繰り返されているのです。
ジム・グッドナイト博士が築き上げたSAS Instituteの文化
ハリス氏:最後にもう一つ、お話ししたいことがあるのですがよろしいですか?
グッドナイト博士:どうぞ、なんでしょう?
ハリス氏:1985年のある日のこと、博士がSASの全社員にメモを送ったことがありましたよね。そのメモの内容を今も覚えているんです。メモには会社組織図が書かれていたのですが、一番上には「ユーザー」が配置されていました。そして、「CEO」である博士は組織図の一番下に位置づけられていて、ユーザーと博士の間に全社員が配置されていましたよね。
今年が50周年だから当時の話をするのですが、これを見たとき、私たちは深い感銘を受けました。そのメモは、「社員をサポートし、社員が活躍できる環境を整えるために自分(CEO)がいるのだ」という博士からのメッセージでした。そして、社員が最も優先し敬うべきはユーザーであり、顧客であると。
博士は深いリーダーシップを持ち、社員を大切にし、皆がベストを尽くすための力を生み出す「文化」を創りました。この文化は今もなお、SASとそのコミュニティ、社会、人々をつないでいます。この節目に、全員を代表して私から「ありがとう」と言わせてください。
グッドナイト博士:それはそれは、どういたしまして(笑)
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- この記事の著者
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名須川 楓太(編集部)(ナスカワ フウタ)
サイバーセキュリティとAI(人工知能)関連を中心に、国内外の最新技術やルールメイキング動向を取材しているほか、DX推進や、企業財務・IRなどのコーポレート領域でも情報を発信。武蔵大学 経済学部 経済学科 卒業。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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