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問い合わせ対応の沼から情シスを解放へ──ZendeskのAI統合の「自律型サポート」がEX変革を導く

国内大手企業も続々“乗り換え” 従業員サポートで日本は「世界2位」の重要市場に

担当役員に聞く「従業員サポートの未来」──労働力不足に悩む日本企業の突破口

 IT部門におけるEX変革やITSMの未来について、Zendeskの従業員サービス部門でプロダクト開発責任者(VP of Product)を務めるヴィシュヌ・パリミ(Vishnu Parimi)氏に、日本市場の現状と課題を踏まえてインタビューを行った。

──パリミさんは、Zendeskに参画される前にAWSやFreshworksで長年IT・開発者向けの製品開発を率いてこられたそうですね。現在Zendeskではどんなことに注力しているのでしょうか。

 私は長年、ITチームやデベロッパー向けツールの開発現場に身を置いてきました。そこで多くの顧客から聞いてきたのが、「既存のITSMツールはどれも機能が肥大化しており、導入に膨大な時間と莫大なコストがかかる」という不満でした。

 今、私たちが生きているのはAIファーストの時代です。もし、これらのITSMツールを現在のAI技術を前提にゼロから設計し直すとしたら、従来の複雑なプロセスや摩擦をすべて取り除くことができるはずです。Zendeskが既に確立しているプラットフォームの上で、従業員サービス領域をAIネイティブなものとして再構築していく。このエキサイティングな挑戦に、私は最も情熱を注いでいます。

──Zendeskは今回、単なる問い合わせの回避から、人間とAIがチームとして協働する自律解決への戦略的シフトを明確にしました。従業員サポートの領域において、このシフトは具体的にどのようなユーザー体験につながるのでしょうか。

 パンデミック以降、世界中でハイブリッドワークやリモートワークが定着しました。かつてのように「PCが壊れたら、オフィスのサポートデスクに持って行けば5分で直る」という物理的な対応に頼ることはできません。だからこそ、ソフトウェアを介して、世界中どこにいる従業員に対しても同等のサポートを提供する必要があります。

 私たちが目指すのは、「回避」ではなく「解決」です。たとえば、パスワードリセットの依頼があったとします。従来の回避アプローチでは、AIがパスワードリセットの手順が書かれたヘルプ記事のURLを提示し、従業員自身に操作させていました。しかし、私たちが提供する解決では違います。AIエージェントが、従業員との会話の裏側で自動的にパスワードリセットの手続きを完了させるのです。従業員もIT担当者も、手間をかける必要がありません。

 さらに複雑なプロセス、たとえば従業員の入社オンボーディングも同様です。新メンバーが加わる際、デバイスの調達、ワークスペースの確保、カレンダーへの1on1ミーティングの設定、最初の10日間のタスク提示などを、役割の異なる複数のAIエージェントが裏側で連携し、一連のワークフローとして完全に自動化。これが私たちが提示している自律型サポートの未来です。

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Zendesk, Inc. プロダクト担当バイスプレジデント(従業員サービス) ヴィシュヌ・パリミ(Vishnu Parimi)氏

──社内の情報が各種SaaSやドライブ、チャットツールに散らばっている「情報のサイロ化」は、IT部門共通の課題です。買収した「Unleash」の技術は、この課題にどうアプローチするのでしょうか。

 非常に重要なポイントです。一般的なカスタマーサポートの場合、回答の元となるデータはWebサイトのFAQなどの公開情報に集約されています。一方で、社内サポートのナレッジは、Google DriveやSharePoint、Notion、あるいはSlackやTeamsのチャットログといった、企業の内側に、しかもバラバラの「非構造化データ」として存在しています。

 Unleashは、こうした多様な社内システムを横断して検索し、従業員の質問に正確に回答する技術に長けています。さらに重要なのは、企業のデータ閲覧権限(アクセス制御)を厳格に順守する点です。

 たとえば、従業員から給与水準(給与テーブル)についての質問があった際、AIは質問者がその情報を閲覧する権限を持っているかを瞬時に判断。権限のない一般社員に対しては回答を拒否し、権限を持つ人事担当者には正確なデータを提示する。この強固なガバナンスが、社内ITに求められる信頼の担保です。

 今後はさらにこれを拡張し、「Figmaのライセンスが欲しい」とAIに頼めば、AIがその企業のライセンスポリシーや残枠を自動確認し、承認プロセスを経てわずか1分で権限を自動付与するような、ビジネスプロセスの自動化へとつなげていきます。

──ITSM市場では、大企業向けに存在感のある競合サービスが複数存在します。こうしたプロバイダーに対し、Zendeskが提供するアプローチはどのような違いがあるのでしょうか。

 実は、日本市場は従業員サービス領域において、Zendeskにとって世界で2番目に大きな重要市場です。ここで、競合からの移行を決断した直近の興味深い事例をご紹介します。

 たとえば、国内大手の精密化学メーカーでは、かつて競合である大手ITSM製品を導入されていました。しかし、自社の運用に合わせたカスタマイズがあまりにも複雑で肥大化してしまい、運用コストと工数が限界に達していたのです。同社はシステムを見直した結果、すべてのプロセスをZendeskへ移行しました。

 また、国内最大手のグローバル化粧品メーカーの事例も象徴的です。IT部門は従来の複雑なITSM製品の利用を推奨していましたが、実際に業務でシステムを日常的に使う人事部門が「この製品は自分たちには複雑すぎる」と判断されました。結果として、システムの直感的な使いやすさとAI機能を評価し、人事部門は独自にZendeskの採用を決定したのです。

 Zendeskの最大の強みは、こうしたAIエージェントの構築や自動化を、高額な追加モジュールの購入や専門エンジニアによる複雑なカスタム開発を必要とせず、「Agent Builder」などの標準機能を用いてノーコードで、導入初日からすぐに使える点にあります。競合プロバイダーが抱えるシステムの肥大化と莫大な実装コストを、私たちは排除しています。

──英国大手スーパーマーケット「Tesco」や旅行予約プラットフォーム「Agoda」といったグローバル企業では、Zendeskの導入により70%を超えるセルフサービス解決率や90%以上の満足度を達成しています。こうした成功を収める企業に共通しているのはどんなことでしょか。

 成功している企業は、AI導入の目的を人員削減に置いていません。彼らが考えているのは、「AIを活用して、既存のメンバーの生産能力を30%から50%向上させるにはどうすればよいか」という点です。なぜなら、AIの導入によって、企業全体のビジネスや製品の開発スピードそのものが加速しているからです。たとえば、開発部門がAIを使ってコードを書くようになれば、新機能や新サービスが従来よりもはるかに早くリリースされるようになります。

 これまでは10個の製品をサポートしていればよかったチームが、ビジネスの高速化によって、突然100個の製品をサポートしなければならなくなる。しかし、サポート人員を10倍に増やすことは現実的ではありません。だからこそ、AIをチームの一員として組み込み、既存メンバーの対応能力を底上げして事業成長のスピードに追いつく。このスケールモデルを理解している企業こそが、真の成果を上げています。

──最後に、労働人口減少に直面しながらも、企業の生産性向上に取り組む日本のITリーダーに向けて、メッセージをお願いします。

 日本は、人口減少という課題を抱えながら、経済を維持・成長させなければならないという、世界でも極めて先進的な挑戦を行っている国です。この状況を乗り越える唯一の道は、テクノロジーを大胆に実戦配備(デプロイ)することだと思います。

 サービスや社内サポートの領域において最も重要なのは、単に人間の業務を少しだけ手助けするアシスタントを入れるのではなく、エンドツーエンドで問題を完了させる自律解決型AIエージェントを恐れずに導入することです。

 Zendeskは、企業のセキュリティとガバナンスを担保したセキュアなプラットフォームを通じて、皆様が自信を持ってAIを大規模展開できるよう支援します。人間がAIの設計者となり、AIが実務をこなす未来のワークフォースを、ぜひ日本のリーダーの皆様と共に構築していきたいと考えています。

IT部門は“消化活動”の自動化により「サービスアーキテクト」に進化へ

 「AIの普及によって、人間のサポート担当者が考えることをやめてしまい、スキルが形骸化するのではないか」という懸念が、IT・サービス業界の一部に存在する。しかし、Zendeskの製品・エンジニアリング・AI担当プレジデントであるシャシ・ウパディヤ(Shashi Upadhyay)氏は、この懸念に対して明確な反論を示した。

 「AIが単純で定型的な問題を自動解決するようになれば、人間にはより困難で複雑な課題だけが残される。担当者はそれを解決するために必然的に新しい知識やスキルを学ぶ必要があり、結果として組織全体のスキルレベルは高められていくはずだ」(ウパディヤ氏)

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Zendesk, Inc. プロダクト担当プレジデント(製品・エンジニアリング・AI)

シャシ・ウパディヤ(Shashi Upadhyay)氏

 IT部門はこれまで、システムのトラブルシュートや問い合わせの対応という消火活動に追われがちであった。しかし、Zendeskが提示する自律型サポートワークフォースを導入することにより、定型業務から解放されたIT部門は、社内全体のAI連携や業務効率化の設計を手掛ける「サービスアーキテクト」へとその役割を進化させることができる。

 信頼とセキュリティを担保したAIネイティブなプラットフォームを活用することは、IT部門自身のEXを高め、それが会社全体の生産性と事業成長を支えるエンジンとなるはずだ。

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この記事の著者

小山 奨太(編集部)(コヤマ ショウタ)

EnterpriseZine編集部所属。製造小売業の情報システム部門で運用保守、DX推進などを経験。

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