第一ライフテクノクロス 安藤伊佐武×テックタッチ 井無田仲──外注でもオフショアでもない、新たな変革
“システムのための組織”を壊す トップが挑む「組織マインド」の変革
社会インフラである生命保険を支えるため、IT環境の高い信頼性と安定性を追求する保険業界。かつては「安く、安定して、ミスなく」が至上命題だったと、第一ライフテクノクロスの安藤伊佐武氏は振り返る。そんな同社は今、インドに構築した拠点「グローバル・ケイパビリティ・センター(GCC)」を核とした、大胆な組織変革へ舵を切っている。単なるコスト削減を目指した外部委託ではない、自社の強みをグローバル基準に塗り替える挑戦の舞台裏と組織の現在地に、テックタッチの井無田仲氏が迫った。
変革の転機は「グローバルCIOとの出会い」 マインドと視座に変化
井無田仲氏(以下、井無田):安藤さんはこれまでのキャリアの延長線上にはない、非常に大胆な“グローバルDX”に挑まれています。まずは、その背景にあるミッションからお聞かせいただけますか。
安藤伊佐武氏(以下、安藤):当社は、2026年に「第一ライフテクノクロス」へと社名を変更し、今大きな変革期にあります。私は長年、保険業界でITの世界に身を置いてきましたが、「安く・安定して・ミスのないシステムを作る」ことが使命でした。生命保険という社会インフラを支える上で、この使命を約30年にわたり誠実に果たしてきた自負はあります。しかし、テクノロジーが急速に進歩し、AIをはじめとするデジタル領域こそがグループ収益力と資本効率向上に直結する形で、企業価値の源泉となる時代を迎えました。
1996年、東京大学工学部卒業後、第一生命保険入社。第一生命保険でのIT企画、第一フロンティア生命保険の執行役員IT統括部長などDaiichi Lifeグループ各社のIT・DX戦略を歴任。2024年4月より現職
従来型のシステム開発・運用を着実に遂行するだけでは、グループの成長を十分に支えきれません。私たち自身が守りの組織から脱却し、グループ全体のデジタル推進の“エンジン”となること。その大きな役割を期待され、私は社長に就任しました。
井無田:守りから「攻めのエンジン」という役割の変化は、いつ頃から意識されはじめたのでしょうか。
安藤:ChatGPTが登場した頃から急激に変わったと思いますが、決定的だったのは2023年4月にスティーブン・バーナムさんがグループのグローバルCIO兼CDOに着任したタイミングです。私は直属の部下として彼のもとで仕事をするようになったのですが、そこから私自身の、そして組織の変革が始まりました。
井無田:バーナムさんとの出会いは、安藤さんご自身にとっても大きな転換期となったのですね。
安藤:まさに、その通りです。正直に言うと、私は新卒で入社して以来、二十数年間、英語から逃げていました(笑)。グローバルへの憧れがなかったわけではありません。ただ、確実性や安全性を最優先する金融系システムの運用を担う立場に長くいると、どうしてもリスクを避けるマインドが染みついてしまい、新しい挑戦にはどこか消極的な部分があったのだと思います。
井無田:伝統的な日本企業でITを支えてこられたからこそのマインドですね。
安藤:そんな私が変わるきっかけとなったのが、バーナムさんの存在です。彼は日本語が堪能なのですが、メールはいつも英語でした。ある朝、通勤途中にバーナムさんからの英文メールをスマートフォンで確認していたら、私のスマートウォッチが突然「心拍数が異常ですが大丈夫ですか」とアラームを鳴らしたという笑い話もあります(笑)。でも、グローバルで活躍してきたリーダーと間近に接するようになって、視野は一気に広がっていきました。変革は知識だけで起こるものではなく、誰と向き合い、どんなものに触れるかで大きく変わるのだと実感しています。
井無田:変革が求められる時代には、やはり外からの新しいDNAが必要ですよね。とはいえ、そこに適応していくことは相当大変だったのではないでしょうか。
安藤:最初は大変でしたね。でも、ここ数年でデジタルツールが劇的に進化しました。英語ができるに越したことはないですが、できなくともデジタルツールがサポートしてくれるため、それ以上に重要なのは、グローバルな議論の場に入っていこうとする意志だと思います。グローバルな仕事の進め方と、日本の金融機関ならではの丁寧さの良いところ取りをしながら今はDXを推進しています。それが、Daiichi Lifeグループや当社らしい競争力につながると考えています。
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井無田 仲(イムタ ナカ)
テックタッチ株式会社 代表取締役慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒
2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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中釜 由起子(ナカガマ ユキコ)
テックタッチ株式会社 Head of PR中央大学法学部卒。2005年から2019年まで朝日新聞社で記者・新規事業担当、「telling,」創刊編集長などを務める。株式会社ジーニーで広報・ブランディング・マーケティング等の責任者を経て2023年にテックタッチへ。日本のDX推進をアシストするシステム利...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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