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2026年冬号(EnterpriseZine Press 2026 Winter)特集「AI時代こそ『攻めの経理・攻めのCFO』に転じる」

井無田仲と探る「変革のフロントライン」

第一ライフテクノクロス 安藤伊佐武×テックタッチ 井無田仲──外注でもオフショアでもない、新たな変革

“システムのための組織”を壊す トップが挑む「組織マインド」の変革

ブリッジ機能と文化変革、1年間で見えてきた壁と突破口

井無田:内製化に向けてグローバル基準のスピードを追求するとなると、日本企業における既存の現場(レガシー)との間に、かなりのギャップや摩擦も生まれそうですね。

安藤:まさに、その通りです。実際に1年間やってみて、やはり「ブリッジ機能」の重要性を痛感しています。言語の壁、時差の壁、文化の壁……業務を理解し、テクノロジーを理解し、文化を理解して両者をつなぐ機能がなければ、GCCは本来の力を発揮できません。頭ではわかっていたつもりでしたが、1年やってみてその重要性をあらためて実感しました。

井無田:3つの壁(言語・時差・文化)を、具体的にどうやって突破しようとされているのでしょうか。

安藤:今、インド出身のバイリンガル人材を十数名、中途採用しています。彼らは言語も文化も技術もわかる。あとはDaiichi Lifeグループの業務を覚えていくだけです。一方で、日本人社員は業務も既存システムも熟知しています。この「新しく入ったブリッジ人材」と「既存の社員」の双方を組み合わせ、相互に学び合うことで、組織として永続的な“橋渡し機能”を育てていくことが重要だと考えています。

スピード・多様性・内製化──グローバル基準で組織をつくりなおす

井無田:グローバルでの変革を推進する上で、安藤さんは何が一番重要だとお考えですか。

安藤:GCCには、これまでの私たちのやり方や業務プロセスを持ち込まないことを意識しています。あえてインドに拠点を構えたのは、日本独自の商習慣に縛られない、グローバル基準の仕組みやルール、業務プロセスを逆輸入して適用していきたいからです。

井無田:日本のやり方を持ち込まない。グローバルでの基準と比較して、一番違いを感じるところはどこですか。

安藤:スピード感ですね。日本では計画立案から実行まで時間を要することがありますが、グローバルはある程度アジャイルで、走りながらPDCAを回す速度が圧倒的に早いと痛感しています。このスピードを日本側にも波及させたいと考えています。

井無田:社内のカルチャー変革という点ではどうでしょうか。御社は社名変更もこのスピードでやり遂げられ、変化を恐れない風土があると感じます。

安藤:完全に変わったというよりも、今まさに変えている最中です。第一ライフグループCEOの菊田徹也が「Think Differently」という言葉を繰り返し発信していて、「今までと違う方法、他社とは違うやり方で進めよう」という意識改革をグループ全体で進めています。

 具体的には、開発環境の抜本的な刷新やAIの活用など、エンジニアが本来の力を最大限に発揮できる環境づくりに投資しています。たとえば、Copilotの導入時には、役員自らが好事例を社内掲示板に投稿し、全社で共有しつづけました。その結果、1年で活用率が劇的に上がり、エンジニアの生産性向上につながっています。おもしろかったのは、ITと親和性の高い若い世代だけではなく、業務知識が豊富なベテラン社員が本気でデジタルツールを使いこなすようになったことです。彼らがAIを手にすると、長年の経験値と掛け合わさって、驚くほど芯を食った解決策が出せる。私にとってうれしい誤算であり、当社の変革におけるポテンシャルをあらためて感じた出来事でもありました。

井無田:ベテランの暗黙知と最先端のAIが掛け合わさる。伝統企業のDXとして、これ以上ない理想的な変化ですね。具体的なプロダクト(事業)の成果としても、実を結びつつあるのでしょうか。

安藤:2026年4月から全国稼働が始まった「デジタルバディ」プロジェクトはその象徴と言えます。第一生命の営業担当者が持つ専用端末上で動くAI営業支援ツールですが、従来の「事業会社からIT子会社への受発注」という垣根を完全に取り払いました。ビジネス機能をもつ第一生命と、ITを担う私たちがスクラッチで共同開発したものです。デジタルアバターが営業担当者の"相棒"として端末に現れ、訪問前に「このお客様にはこういう提案をしましょう」と壁打ち相手になってくれたり、商談の状況を自動で記録して最適なレコメンドを生成してくれたりします。商談中に突発的な質問が出ても、その場でバディに聞けば即座に答えが返ってくる仕組みです。

井無田:営業現場の最前線に、優秀なAIの先輩が一人ずつ付いてくれるような感覚ですね。持ち帰りの宿題がなくなるということは、営業担当者の即戦力化という意味でも大きな効果を生んでいるのではないでしょうか。

安藤:そうですね。さらに、お客様の同意が取れたら商談を録音し、AIが議事録に変換して次回の訪問に活かすといった機能もあります。数年間PoCを積み重ねてきた成果が、ようやく全国展開という形で結実しました。Daiichi Lifeグループの「デジタル推進のエンジン」として当社のあり方を示す、大きな一歩だと受け止めています。

井無田:今後、5年〜10年のスパンで、第一ライフテクノクロスとしてどのような組織を目指していますか。

安藤:「システムのためのシステム組織」ではいけないと思っています。いかにお客様やビジネスと一体となって、そこにきちんと届くIT・デジタルを引っ張っていけるか。デジタル化はIT部門だけでやるものではなく、テクノロジー・業務プロセス・人財の三位一体で変革を全社に届けることが重要です。グループ内への貢献という点では、第一フロンティア生命、第一ネオ生命、そして最近グループに加わったベネフィット・ワンなど、各社へのIT・デジタル支援をさらに拡大し、それぞれの事業価値の最大化に貢献していきます。自社で開発・活用したシステムをグループ内で横展開する「サブスクリプション事業」も立ち上げており、個社最適にとどまらないグループ全体の変革を推進していきたいです。

井無田:本日のお話を通じて、IT部門が単なる支援機能ではなく、事業成長をけん引する存在へと進化していることを強く実感しました。生成AIやデジタルツールが急速に進化する今、既存業務を効率化するだけでなく、「自社のレガシーをどう再定義するか」という視点がこれまで以上に求められているのかもしれません。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

井無田 仲(イムタ ナカ)

テックタッチ株式会社 代表取締役慶應義塾大学法学部、コロンビア大学MBA卒
2003年から2011年までドイツ証券、新生銀行にて企業の資金調達/M&A助言業務に従事後、ユナイテッド社で事業責任者、米国子会社代表などを歴任し大規模サービスの開発・グロースなどを手がける。「ITリテラシーがいらなくなる...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中釜 由起子(ナカガマ ユキコ)

テックタッチ株式会社 Head of PR中央大学法学部卒。2005年から2019年まで朝日新聞社で記者・新規事業担当、「telling,」創刊編集長などを務める。株式会社ジーニーで広報・ブランディング・マーケティング等の責任者を経て2023年にテックタッチへ。日本のDX推進をアシストするシステム利...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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https://enterprisezine.jp/article/detail/24495 2026/06/25 08:00

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