継承者が途絶えたレガシーシステムの蘇生法━━攻め・守りの両面から技術的負債を「生きた資産」にする要点
リアーキテクト:モジュラーモノリスの選択/リバイス:モダンなフロントと堅牢なバックエンドの共存
連載「手強い“2025年の崖”を乗り越える:モダナイゼーション最前線」の第3回までは、営業や人事・総務といった業務領域に着目し、業務プロセスの再設計によって成果や生産性を高めるモダナイゼーションのアプローチを紹介しました。これらは、将来的にAIエージェントが業務を支援・実行できる環境づくりでもあります。一方で、多くの企業が直面しているのが、長年使い続けてきた独自開発システムをどう扱うかという問題です。第4回では、「リバイス」と「リアーキテクト」という2つの手法を通じて、ビジネスの俊敏性とAI活用の柔軟性を両立するためのITモダナイゼーションの考え方を解説します。
現行システムは、現場の知恵が凝縮された「生きた資産」
IT戦略において、最新技術の導入は確かに魅力的です。しかし、モダナイゼーションの本質は、システムが「新しいか古いか」ではなく、「企業価値に貢献できているか」にあります。
長年、企業の屋台骨を支えてきた現行システムは、単なる老朽化したプログラムではありません。市場変化や現場での試行錯誤を重ねる中で磨き上げられ、他社には容易に模倣できないノウハウや独自の業務ロジックが凝縮されたものです。それらはまさに、企業活動を支え続ける「生きた資産」と言えるでしょう。
一足飛びに最新のパッケージや、ゼロからの再構築(リビルド)を目指すことは、こうした貴重な資産を切り捨ててしまうリスクをともないます。何十年にもわたって蓄積された複雑な業務ルールを一度に刷新しようとすれば、業務の整合性を損なうだけでなく、現場に混乱を招きかねません。
企業が今すべきことは、現行システムを単なる技術的負債として扱うのではなく、その重荷から解き放ち、核となる価値を次世代へ引き継ぐことです。長年培われてきた業務ロジックはそのままに、インフラを現代の環境に合わせて刷新する。この資産の継承を軸にした堅実な進化こそが、低コスト・低リスクで確実な成果を出す、賢明なモダナイゼーションの第一歩です。
現行システムの価値を次世代の競争力へと転換するためには、守りの「リバイス」と攻めの「リアーキテクト」という、目的の異なる2つの手法を適切に使い分けることが極めて重要です。
「リバイス」による安定と信頼の継承
リバイスは、業務ロジックに手を加えることなく、プラットフォームをアップデート、必要に応じてアプリケーションはポーティング・リライトする手法です。その価値は、長年にわたり担保されてきた業務の正確性を維持したまま、移行を実現できる点にあります。特に、高い安定性が求められるバックエンド領域においては、既存の「枯れた(成熟した)ロジック」をそのまま活かすことが有効です。移行リスクを極小化しながら、迅速にコスト削減や保守性向上といったクラウドの恩恵を享受することが可能になります。
「リアーキテクト」による俊敏性の獲得
一方で、競争力の源泉となる領域にはリアーキテクトを適用します。これは、既存の優れた業務ロジックを抽出し、マイクロサービスなどの柔軟な構造へ再設計する手法です。単なる更新にとどまらず、「現場の知恵」を現代のスピードに即した形へと解き放つことを目的としています。これにより、蓄積された知恵を活かしながら、市場の変化に即応できるアジリティ(俊敏性)を組織にもたらします。
これら2つの手法を組み合わせることで、資産の重みを活かしつつ動きを軽くする、投資対効果を高める理想的なモダナイゼーションが実現可能となります。
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松島 大輔(マツシマ ダイスケ)
株式会社日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 ITモダナイゼーション本部 ITモダナイゼーション推進センタ センタ長。 ITモダナイゼーション事業を推進。特にレガシーシステムからのマイグレーション領域を中心に、最適な移行手法の提案と実行に従事する。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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寺西 陽平(テラニシ ヨウヘイ)
株式会社日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 ITモダナイゼーション本部 ITモダナイズソリューション部 部長。 最新のテクノロジーを活用したアプリケーションのモダナイゼーション事業をリードし、企業のDXを推進。現行の業務内容を可視化し、業務プロセスの刷新を図るDXプロジェクトにおいて...
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