継承者が途絶えたレガシーシステムの蘇生法━━攻め・守りの両面から技術的負債を「生きた資産」にする要点
リアーキテクト:モジュラーモノリスの選択/リバイス:モダンなフロントと堅牢なバックエンドの共存
リアーキテクト:マイクロサービスの複雑化を解決する「モジュラーモノリス」の実装
リアーキテクトは、一言で言えば「攻めのモダナイゼーション」です。アプリケーションの構造を根底から再設計し、クラウドがもつポテンシャルを最大限に引き出すことをめざすアプローチです。
(1)三位一体で捉える「ビジネス変革」
真の変革を成し遂げるには、「アプリケーション」「プラットフォーム」「運用」という3つの要素を統合的に捉える視点が欠かせません。どれかひとつだけをモダナイズしても、ビジネスのアジリティ(俊敏性)を十分に引き出すことは困難です。
- アプリケーションの進化:巨大で硬直化した「モノリス」から、機能ごとに独立したマイクロサービスへと構造を変革。これにより、新機能の開発やリリースのサイクルを短縮し、変化への対応力を高めることが可能になる
- プラットフォームの抽象化:コンテナ技術やサーバーレスを活用し、インフラの抽象化を進める。開発者はサーバー調達や環境構築といった作業から解放され、コードによる価値提供により集中できる環境を整えることが重要。こうしたセルフサービス化は、開発スピードと品質の両立に寄与する
- 運用の自動化と可観測性:Infrastructure as Code(IaC)やCI/CDパイプラインによる自動化に加え、オブザーバビリティ(可観測性)の考えを取り入れることが重要になる。システムの状態や変化を迅速に把握できる環境があることで、エンジニアは安心してリリース頻度を高め、継続的な改善を回し続けることが可能になる
(2)マイクロサービス化の罠と「モジュラーモノリス」という選択肢
アジリティ向上のための手段として語られることの多いマイクロサービスですが、その導入には慎重な判断が求められます。状況を見極めないまま採用すると、かえって複雑性が増し、プロジェクトの負担となるケースも少なくありません。
ここで有力な選択肢となるのが、「モジュラーモノリス」というアプローチです。これは、システムの内部構造を論理的に分離(モジュール化)しつつ、実行単位はあえてひとつのモノリスとして維持する手法です。分散システム特有の運用負荷やオーバーヘッドを抑えながら、コードの独立性と保守性を高めることができます。まずはモジュラーモノリスとして構築し、ビジネスの成長や要求の変化に応じて、必要な部分から段階的にサービスを切り出していく。この進め方は、プロジェクトリスクを抑えながら変革を進める現実的な手法と言えるでしょう。
(3)自律的に成長し続ける組織づくり
いかに高度な技術を導入しても、それを扱う現場のスキルや体制がともなっていなければ、システムは十分に活用されず、新たな技術的負債を生み出す要因になりかねません。
モダナイゼーションにおける重要な成功指標のひとつは、外部ベンダーに依存しつづけることではなく、自社のチームがシステムを理解し、自律的にアップデートしていける状態を構築できるかどうかにあります。リリース後も自社が主体となってシステムを自律的に成長させていけること、それこそがモダナイゼーションの真の成果です。
その実現には、単なる外部委託にとどまらず、チームビルディングやプロセス整備まで深く踏み込む「伴走型支援」を通じた内製化が欠かせません。技術、プロセス、そして人のスキルを同時に引き上げることで、変化に適応し続ける強い組織への変革が可能になります。
この記事は参考になりましたか?
- 手強い“2025年の崖”を乗り越える:モダナイゼーション最前線連載記事一覧
-
- 継承者が途絶えたレガシーシステムの蘇生法━━攻め・守りの両面から技術的負債を「生きた資産」...
- 毎日来る社内依頼や問い合わせを一元化するには?M365/ServiceNowを用いた具体的...
- SFA導入後も効果ナシ……IT部門が陥りがちな「3つの誤解」 コア業務のプロセス変革で注力...
- この記事の著者
-
松島 大輔(マツシマ ダイスケ)
株式会社日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 ITモダナイゼーション本部 ITモダナイゼーション推進センタ センタ長。 ITモダナイゼーション事業を推進。特にレガシーシステムからのマイグレーション領域を中心に、最適な移行手法の提案と実行に従事する。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
寺西 陽平(テラニシ ヨウヘイ)
株式会社日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 ITモダナイゼーション本部 ITモダナイズソリューション部 部長。 最新のテクノロジーを活用したアプリケーションのモダナイゼーション事業をリードし、企業のDXを推進。現行の業務内容を可視化し、業務プロセスの刷新を図るDXプロジェクトにおいて...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
