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左脳G吾郎(さのう・じーごろう)は、26歳のときに
一念発起して会社をやめ、一人で会社をおこしました。
つまり、ひとりの人間であると同時に法人でもあるという
当代流行のライフスタイルに見切りをつけ
(ワンクリックで簡単にやめることができます)、
かたわらに寝ていたべつの会社、こちらは生物学的には
小型の馬であるところの有限会社ですが、
これを揺さぶりおこしたのです。
「さあ、旅にでよう」
有限会社であるところの小型の馬、
ここでは仮に名前をロシナンテとしておきますが、
かれは(英語っぽくいうなら、それは)、
ひそかに脱サラを夢見ていました。
「脱サラ」といえば、一般的な意味としては
サラエボを脱出して国連軍の保護をうけることか、
脱皮してサラブレッドとしての完成を迎えることの
どちらかですが、ロシナンテの属する文化圏においては、
脱税を成功させてサラサラの血液になり、本当の自分に
出会うことを意味しています。
そんな彼にとって、旅行の申し出は願ってもないことでした。
かくして、一人と一頭の珍道中がはじまったのです。
ロシナンテとG吾郎は、地雷処理車両が通り過ぎたことを
しめす擂り鉢状の穴の連なりを縫うようにして
関東平野をゆっくりと南下してゆきました。
伊豆半島にさしかかったあたりで、
一人と一頭は、一匹のかぶ式会社に出会います。
かぶを主食とするこの多脚の生物(兼法人)は、
まさに大きなかぶを抜こうと奮闘しているところでした。
地上にでている部分でもさしわたし5メートルほど
あるそのかぶは、その生物が持てるすべての足をつかって
がんばってもなかなか抜けないようです。
「その銘柄はあぶない!」
直感的にさとったG吾郎ですが、
それはそれとして好奇心には勝てず、
ロシナンテと一緒にかぶ引きを手伝い始めます。
うんとこしょ どっこいしょ
なかなかかぶは抜けません。
それもそのはず、現在では「ストップ高」と呼ばれる
植物性の現象によって、それ以上は抜けなくなっていたのです。
そこへ、一杯の地雷処理車両が通りかかりました。
(地雷処理車両は生物学的にはモンゴウイカと近縁なので、
一杯、二杯と数えます)
「わたしにそれを処理させていただけないでしょうか」
重い甲羅の下の目を光らせて、地雷処理車両は申し出ました。
「それは大変あぶない銘柄です。いろんな国でたくさんの
子供たち(メダカの稚魚など)が犠牲になっています。
私たちの技術が世界中でお役に立っています」
うんとこしょ どっこいしょ
地雷処理車両がやったのも結局は力一杯ひっぱることだけでしたが、
いくつかの制限条項をキャンセルできる生来のアドバンテージが
ものをいい、少しずつかぶは姿をあらわしはじめてきました。
見守るG吾郎の心に、ここが自分の旅の終着点かもしれないという
予感がふと迫ってきました。
ついに抜けたかぶは人の姿をしており、全高は50メートルに達し、
宗教法人を名乗り、わきがに悩みつつ人々を悩みから救い、
光のないところでは柔軟に対応し、雨がふると腐り、ひれがあり、
税を吸うことにかけてはスポンジのようで、山火事のように足がはやく、
宴はいつまでも終わることがありませんでした。(以上、備忘録として)