回るよりサステナブルな寿司でありたい(擬人化された魚のセリフ)
「サステナビリティってのは、結局、無駄を出さないって
ことにつきると思うんですよ」
最近話題のサステナブル寿司を握ってくれながら、
おやじさんは言いました。
サステナブル寿司というのは、言葉だけ聞くとなんだか
サブリミナル寿司の親戚のようですが、まったく違います。
(サブリミナル寿司をご存じない方に説明しますと、
これは寿司を食べたかのような満足感が得られるように識域下に
働きかける機能をもつ特殊なmp3ファイルのことで、
これを大音量で聞いた人はかならず昏倒し、なにかおいしい
ものを食べたような表情で意識をとりもどすとされています)
「となりの食堂がサステナブル定食ってのを始めた
らしいんですよ。でも、けっこうむずかしいんですよね。
ほら、肉はまずぜんぶアウトですからね、育てるのに
山ほど草を食わせないといかんでしょ。無駄なんですよ。
そうやって食材のサステナビリティをいちいち検証しないと
いけないってんで、全然割に合わんらしいですよ。
その点、寿司はもっぱら魚に気をつけときゃいいんで楽ですよ」
(ちなみに、サステナブル寿司はほんとうに存在します。
興味をもたれた方はぜひ検索してみてください。
また、この文章には人類というものが登場していますが、
こちらも実在の生物であり、いろんな方法でその存在を
確認することができます)
目の前に置かれたのは、イカのにぎりでした。
イカは成長が早く、環境負荷の低い形で養殖できる
サステナブルな食材なのです。
「出す寿司だけサステナブルでもしょうがないんでね、
やっぱり経営全体のサステナビリティを考えないと
いかんといつも思ってるんですよ。
うちはオール電化で、なおかつ電力はぜんぶ太陽光
発電ですから、コストも低いし、環境にもやさしいんですよ」
そういえば、おやじさんの頭のてっぺんにも、
太陽電池のようなものがくっついています。
おやじさん自身も太陽エネルギーで動くのでしょうか。
「いや、これは孫のニンテンドーの充電用で…
あたしゃふつうにブドウ糖で動いてます」
照れくさそうにそういうと、おやじさんは白い粉末を鼻の穴から
吸いこんでみせました。
その笑顔に、こちらまで幸せな気持ちになってしまい、
筆者もまたなにかおいしいものを食べたような
顔で店をあとにしたのです。