ビッグなデータからビッグなトゥモローを掘りだそう!
「おたくのビッグデータ、宝の持ち腐れになっていませんか?」
そういって会社の門を叩くのは、ビッグデータビジネスを
てがける、とある業者の社員です。
いまや、さほど大きくない企業でも、いわゆるビッグデータを
たくさん手元に眠らせています。
少しでも経営にITを導入していればたちまち集積してしまう、
顧客データや業務記録のたぐいですね。
「ぬかみそにかき混ぜる必要があるのと同様、ビッグデータも
かきまぜてやらないとその価値がありません」
そんなふうにデータマイニングの必要性を力説し、去り際に
ビジネスインテリジェントツールの試用版を置いてゆくのです。
企業のデータを分析して経営に最適なアドバイスを提供して
くれるという、おなじみの説明が添えられています。
導入も簡単なこのツールを、何人かのうかつな経営者は
何の気なしに走らせ、自社のデータを自由に嗅ぎ回らせます。
するとあろうことかこのツール、いきなり会社の寿命を
算出してしまうのです。
「あなたの会社は、もってあと2年です」
あわせて、独自のプロファイリングエンジンが
その会社の業務記録をもとに
経営者が今朝なにを食べたかをピタリと当ててみせます。
この結果に経営者がふるえあがったあたりで、業者が
ふたたび会社を訪れます。
そして、さきのツールの有料版を法外な値段で
提供することを申し出るのでした。
「技術革新によって、いまや、データマイニング技術は
企業にとって神託そのもののアドバイスを提供できるように
なったのです」
有料版を使えば、経営のゆきづまりを回避し、新たな活路を
ひらく本質的なアドバイスを得られるというわけです。
幾人かのうかつな経営者はこれにとびつき、
アドバイスに従った結果、組み込みソフトの開発会社が
とつぜん縮れ麺の製造会社に転身してそのまま大成功を
おさめたり、あるいは解散して社長だけがラーメン店を
細々と経営するに終わったりと、
たいへんな激変がおとずれることになります。
ツールがアウトプットしたものは本当に神託だったのか、
ビッグデータビジネスは本当に神託ビジネスになりうるのか、
本稿もフィクションなので定かではありませんが、
現実のビッグデータビジネスはもっとちゃんとしたもので
あること、ならびに筆者もラーメン店への転身には興味津々
であることを記し、本稿の結びとさせていただきます。