システム運用の標準化が生産性と品質向上の必要条件
2011年4月に新社名となり、新しいスタートを切ったCTCシステムサービス(CTCS)。CTCとのタッグでシステム運用をワンストップで提供し、金融系をはじめとする数多くの顧客を持つ。そんなCTCSでコンサルタントとして活躍する楠川氏はシステム運用を取り巻く環境を、「複雑化する一方で、人件費に対するプレッシャーが年々厳しくなっている」と分析する。その背景として、システムがサイロ化して対応業務が増える反面、リリースが優先され、トラブルの原因を生み出す悪循環があるという。トラブル対策として多く見られるのが、二重確認や運用手順の追加で、抜本的な改革が必要と楠川氏は指摘する。さらに運用部門と他のステークホルダーの関係性を示し、「たとえば業務部門の要望に対して、必要性の検討が曖昧なままで、運用が考慮されていなければ、管理側に負担となり、生産性と品質の低下を招くことになる」などの課題をあげた。そうした状況下で、運用部門は何をすべきなのか。楠川氏は「運用の見える化を行ない、資料整備やバラツキの抑止を含め標準化し、生産性と品質を向上させつつ運用組織を最適化する」という方向性を示し、方策の第一のステップとして「標準化」をあげた。
運用の負荷を減らす「標準化」 IT組織に余裕を生む「自働化」
標準化によってどのような効果があるのか。楠川氏は、誤りの発見が下流になるほど、修正コストが上がるという関係性を示し、「標準化のためのルールを作り、受入審査で検査することで最下流の運用コストが抑制される」と解説した。さらには、運用標準化を実現するための運用受入基準の考え方として、運用の戦略戦術の両面から総合的にチェックや判断を行ない、あらゆるステークホルダーと調整しながら進めることが理想的だという。しかしながら、現実的にはなかなか難しい。そこで「標準条件からはみ出た変更は、発注部門の責任として引き受ける」などのルールを決めるのも、現実的な1つの方法だという。
そして、運用改革の標準化と並ぶキーワードとして、楠川氏は「自働化」をあげた。自働化によって組織に余裕が生まれ、人材の有効活用へとつながるという考え方はトヨタなどの製造業で深く浸透しており、決して新しいものではない。しかしながら、ITシステムにおける”ジドウ化”は、これまでバッチ処理などの“自動化”として省力化のアプローチにとどまっていた。しかし、これからは人による手順の決められた作業を“自働化”し、最適化を図ることを考えるべきだという。楠川氏は「突発的な運用トラブルを監視するだけでなく、その後の作業も自働化すること。さらには一次切り分けなど人の判断を補助する自働化が望ましい」と語り、監視プロダクトやジョブ管理プロダクトとの違い、自動化と自働化の違いについて説明した。つまり、人手の介入機会を「減らす」ことが自働化というわけだ。楠川氏はさらにフロー、ステップ、そして実行完了を可視化した自働化の概要を紹介し、「これまで難しかった『誰がいつ何をしたか』を部門をまたいで可視化できることに大きな価値がある」と述べた。
標準化・自動化のための施策をワンストップでスピーディに提供
続いてCTCSのフレームワークとして、OpeRescueとOpeNextが紹介された。OpeRescueでは「業務の見える化」「業務のランク付け」「改善の方向性決定」により組織の力量を把握し、最適化を図ったうえで「カタログ化」「受入れ基準制定(標準化)」「組織体制の見直し」を進め、自働化を図りながら運用組織の最適化・運用品質の向上へとつなげていく。また、OpeNextは運用自働化の要件定義から自働化製品の導入、導入後の維持管理までをワンストップで提供するサービスパッケージとして紹介され、運用手順の調査・整理から実装、運用維持管理までの流れが説明された。
最後に楠川氏は、CTCSの優位性について「ワンストップ提供」や「フレームワークの提供」「ガイドラインやテンプレートが既に準備されていること」などをあげ、「CTCSで標準化に向けた第一歩を踏み出してほしい」と呼びかけた。