サッポロHDは大規模データ基盤システム構築で“縦割り・内向き体制”の打破へ DX企画部長らに訊く戦略
「作って終わり」ではない、活用され続けるデータ基盤を構築するための道筋とは

サッポロホールディングスは、「持続可能性」を重視した技術選定を経て構築した、グループ共通のデータ基盤「SAPPORO DATA FACTORY」を2025年1月から本格稼働させている。同社が一貫して追求するのは、データレイクを単なるデータの器とせず、「何のために使うのか」「いかに効果を出すか」まで考え抜く目的志向だ。DXによるビジネスの進化を続ける同社の取り組みについて、話を訊いた。
サッポロHDを支える新データ基盤システム「SAPPORO DATA FACTORY」
ビールメーカーのサッポロビール、清涼飲料水メーカーのポッカサッポロフード&ビバレッジなどを傘下に持つサッポロホールディングス。1876年に北海道・札幌で「開拓使麦酒醸造所」を創業し、現在はビールをはじめとする酒類事業、飲料事業、食品事業、外食事業、不動産事業などを多角的に展開している。
そんな同社では、2018年頃から事業を変革するBPR(Business Process Re-engineering)に取り組み始めた。さらに、業務の効率化だけでなく継続的にビジネスを成長させるために、2020年頃からDXにも着手。「社会環境の変化などに対応しながら事業を継続的に成長させるためには、データやデジタル技術をしっかりと活用しなければいけない」と、サッポロホールディングス DX企画部 部長の桑原敏輝氏は語る。

2022年1月には社長から「全社DX宣言」も出され、同年春には外部の協力も得ながらホールディングスのDX部、IT統括部門を中心にDXの方針が策定された。
2023年からの中期経営計画には、中核の1つとして「DXビジョン」が含まれている。そして2023年3月にグループ全体のDX、IT各機能の充実および事業会社との連携強化、ひいては戦略推進力強化を狙い「DX・IT統括本部」とその傘下に「DX企画部」を新設。2025年3月には本部を発展的に解消し、経営直下にDX企画部が設置された。
また、以前から各グループ会社にはデータを活用する仕組みはあったが、DXを本格化させていくためには「データレイクが必要」と判断。そして整備されたのが、グループ共通のデータ基盤システム「SAPPORO DATA FACTORY」だった。
同システムは3年ほどの期間をかけて構築され、2025年1月から本格運用を開始。「作ってからどう使うかを後から考えるのではなく、何のために使うのかをはっきりさせ、どういう効果が期待できるかを明らかにする。そこに時間をかけた」と、桑原氏は述べる。
グループの売上や利益を向上させて、収益力を上げる。そのためにデータ活用基盤をどのように用いるべきか──データレイク構築前に、データを活用して効果を上げるための仮説を立てることには、かなりの時間をかけたとのことだ。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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